ブラジルにおける森林伐採と社会課題と先住民運動

MapBiomasは8月27日、過去36年間におけるブラジルの森林伐採に関する報告を提出した。これによると1985年から2020年の間に約82万平方キロメートルもの土地の木々が失われた。この数値は世界で5番目に大きい国の国土の約9.64%に相当し、パラグアイの2倍、エクアドルの3倍の面積である。

森林伐採が進むのは地球の肺ともいわれる熱帯雨林で53万平方キロメートル、21万キロメートルはサバンナの植生、その他の自然が8万平方キロメートルとなっている。これらの結果は衛星画像と人工知能を用いて導き出された。

ブラジルはもともと森林が豊かで、国土の半分以上がそれだった。具体的に言うと1985年にはその国の52.8%が熱帯雨林であったのに対し。2020年には46.5%にまで減少している。サバンナにおける木々の面積も15.4%から13.0%となり、ものすごい勢いで豊かな自然が失われていることがわかる。主に農地開拓が理由だ。

1985年から2020年にかけ家畜の放牧面積が43万平方キロメートルも広がり、今や154万4900平方キロメートルもある。これはモンゴルの面積に匹敵する。農業用地はケニアの面積に相当する55万7200平方キロメートルあり190%も増加している。なお、世界最大の大豆生産・輸出国であるブラジルはそれを栽培するための面積だけでも355,500平方キロメートルあり、これはドイツの大きさと同等だ。なおブラジル国土の4.18%に相当する。

こうして森林減少と反比例するかの如くブラジルは肉や穀物を中心とした食料の世界最大の生産国となっていった。

2021年5月、ブラジルにおける農業製品の輸出額は139億米ドルに達した。前年同月と比較すると53.8%の伸びである。上述の通り最も多く輸出しているのは全体の52.7%を占める大豆で73億米ドル相当となる。2番目は生のサトウキビで7億8千万米ドルとなっている。なお、この一年で最も大きく売上を伸ばしたのは合板で前年同月と比べると211.6%増の133.2百万米ドルとなった。大豆原油も注目すべき輸出品目となっており2020年5月の670億米ドルから今年は1,910億米ドルに増加している(+185%)。

2021年5月の主な輸出先は中国で、そのシェアは45.8%。次いで欧州連合(12.6%)、米国(6.0%)となっている。その他の輸出国はトルコ(3.1%)、タイ(2.7%)、ベトナム(1.9%)、韓国(1.7%)、日本(1.7%)、パキスタン(1.4%)、サウジアラビア(1.4%)だ。

 

このような状態にあるから、政府は森林地帯を領土として保有する先住民から経済活動という名の下で土地を奪取しようと考えている。そして違法伐採をもまた合法化しようと法の改正に努めている。その一方的な姿勢と、すでに彼らの土地であったものの定義を変えようとする政府に対し先住民は過去何度も立ち向かっていった。

6月のデモでは少なくとも先住民2名が重傷を負い、12人の子供、高齢者、女性が軽症を負っている(詳細はこちら)。8月9日になると先住民たちはボルソナロ大統領をジェノサイドとエコサイドの罪でハーグにある国際刑事裁判所に提訴した(詳細はこちら)。ソクレン(xokleng)族、カイガン(kaingang)族、グアラニ(guaraní)族によってなされた自らの土地の拡張に関する控訴(※)をきっかけに呼び掛けられた先住民の新たな動員もその数を数千人規模に増やし、8月25日には最高裁(Supremo Tribunal Federal:STF)へ向かう大規模パレードとなった。彼らが求めるのは一方的に審議が進められている彼らの土地に関する権利を変更するための法案の解消である。

1988年のブラジル憲法では先住民が先祖伝来の土地を占有し維持することを保障している。一方政府や農業用地としてそれらの土地を占有したいと考えるものたちは、先住民の土地をこの憲法が制定されたときに、先住民によって占有されていた土地のみを彼らの領土として認めるよう推進している。そしてその領土の確定には「エビデンス」が必要としている。「もし最高裁が時間枠を受け入れれば、それは先住民への暴力を正当化し、アマゾンの熱帯雨林などの地域で起きている紛争を激化させることになるだろう」、そう語るのは国連先住民族の権利に関する特別弁務官フランシスコ・カリ・ツアイ(Francisco Cali Tzay)だ。ブラジル先住民族連盟(Articulación de Pueblos Indígenas de Brasil :Apib)のエグゼクティブ・コーディネーターであるディナマム・トゥクサ(Dinamam Tuxá)もまた本裁判の結果次第で「ブラジルでは、森林伐採の増加、紛争の増加、指導者の死、ジェノサイドを引き起こすだろう」と述べている。

FUNAI(National Indian Foundation)によると、この国では245件の土地区画整理が未完了となっていて、これらのケースの多くで、1988年以前先住民は迫害などによってこの土地を追放された、しかし元来よりこれらの土地は先住民に帰属していると主張していることによる。

チェコの民族学者アルベルト・ヴォイテック・フリッチ(Albert Vojtech Fric)は「植民地化は、バグレイロスに無慈悲に殺された何百人ものインディアンの屍の上で行われ、植民地化会社、土地商人、政府の利益に貢献した」と述べる。バグレイロ(bugreiro)とはブラジル南部で先住民を殺戮するために雇われた民兵のことだ。当時、この地域では使われていた人種差別用語「バグレス(bugres)」を先住民に付していた。

 

「生命のための闘争」というスローガンの下行われているこの動員はブラジルの歴史上、最大のものであり170の民族6,000人以上にも及ぶ。抗議活動に参加するバイア(Bahia)の先住民パタソ(Pataxo)の指導者シラタ・パタソ(Syrata Pataxo)は「今日全人類はアマゾンを守るために叫ぶ。この政府は、私たちの肺であるジャングルを、大豆と鉱山に置き換えようとしたいのだ」語った。

 

ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領は25日、裁判所がイビラマ・ラ・クラニョに関する裁判で時間的枠組みの主張を却下した場合、この国に「カオス」が発生する可能性があると警告。2020年5月にも全国農畜産連合(CNA)の弁護士はSTFに対し、時間的枠組みの原則を拒否することは「国内で大火事が起きる可能性が非常に大きく、2009年(※)以前ブラジルで存在したような非常に深刻な状況に戻る」ことになると述べた。

この国のトップは現行法や先住民による要求を無視するのみならず、先住民の土地での鉱業や農業ビジネスを合法化する法律を推進している。

 

国連も報告しているように地球温暖化は我々が過去考えていたものよりも、早く進行している。それは人間の各種活動の結果であり、その一つの要因には疑いようもなく森林の伐採がある。温暖化とは温室効果ガスが必要以上に増加し、地球を適切な温度に保てなくなることによって生じる。つまり、保温が機能が働かないから地球に熱がこもり、気温が上がってしまうのだ。

世界では、今までは異常気象と呼ばれていた現象も恒常化しているのは周知の事実で、超大型の台風やゲリラ豪雨、干ばつなどの気候変動をもたらしているのも、森林伐採がその理由ともなっている。6月29日には観測史上最高となる気温49.6度をカナダ南西部リットンで記録し、6~7月の熱波は数百人の熱中症による死者を出している。

温室効果ガスの7割は二酸化炭素であり、そレガ排出される最大の理由は、我々人間による活動や産業活動のために利用される化石燃料、二酸化炭素を吸収する森林の減少、さらには天然ガス生産、炭鉱、埋立地から排出された炭素、そして家畜や糞尿からの漏れよる。

カナダの熱波は1000年に1度の例外的なものだったと言われているが、上述のような人為的な活動がなければ、その発生確率は1/150だという。

月曜日に発表された国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書に記載されている内容によると2030年までに世界の平均気温は産業革命前に比べて1.5℃または1.6℃高くなることが予想されている。これは、IPCCが3年前に予測していた結果よりも10年早くことが進んでいることを示している。

ブラジル・アマゾン人間環境研究所(Instituto do Homem e Meio Ambiente da Amazônia:Imazon)が8月19日に発表した報告書では、熱帯雨林の森林伐採は過去10年間で最高レベルに達し、7月だけでサンパウロ市よりも広い面積が破壊された。2020年8月から2021年7月の1年間にもこの国の生態群系では10,476平方キロメートルもの森林が破壊されており、これはリオデジャネイロ市の2倍の面積に相当する。

先住民たちは語る。最高裁と公的機関は「先住民の権利に関する国連宣言」と「原住民及び種族民条約(第169号) 」を尊重する義務がある。

 

最高連邦裁判所9月1日、先住民領土の境界の将来を定義する判決を再開する。先住民領土の未来は社会課題をも左右する。

※この裁判はソクレン(xokleng)族とカイガン(kaingang)族、グアラニ(guaraní)族が昔から住み彼らの領土となっているイビラマ・ラ・クラニョ(Ibirama La-Klãnõ)にサンタ・カタリーナ州政府や農村部の土地の居住者が主張する地域を取り込むべきかどうかを審議している。この先住民族の領土は1996年に区画され、2003年には15,000ヘクタールから37,000ヘクタールへとその大きさが3倍以上になっている。なお、州政府は今回主張されている地域は公有地であり、19世紀末に農村部の土地所有者に売却されたものだと主張している。
※2009年はラポサ・セラ・ド・ソル(Raposa Serra do Sol)事件のSTF決定の年。

 

参考資料:

1. BRAZIL REACHES FOURTH CONSECUTIVE GROWTH IN AGRICULTURAL EXPORTS
2. Brasil deforestó en 36 años un área equivalente al doble de Paraguay
3. MAPBIOMAS
4. Calentamiento global avanza más rápido de lo que se pensaba: ONU
5. Miles de indígenas protestan en Brasilia a la espera de un fallo clave sobre sus tierras
6. Xokleng: povo indígena quase dizimado protagoniza caso histórico no STF
7. Indigenous Peoples Set Up Protest Camp in Brasilia
8. Desde agosto de 2020 hasta julio de 2021, período conocido en Brasil como “calendario de deforestación”, el área destruida en la selva tropical llegó a 10.476 km²

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