先住民がボルソナロをジェノサイドとエコサイドの罪でICCに提訴

ネイティブピープルとその文化を守ることは、すべての社会が実践すべき基本的な行動だ。多くの国で今まで無視してきた、虐げてきた彼らの人権をどのように守っていくのかを検討、実行しようとしている中、ブラジルはその潮流に逆行しているように思える。

すでに保証されていたと思われていた権利は政府の一方的な考えによって変更されようとしており、それは先住民の人々の生活にこれまで以上の脅威を与える可能性がある。

1988年に制定された憲法では、土地に対する本来の権利を公式に認め、先住民が占有していた領土の永続的な所有を保証している。国もこれらの地域の区画整理と保護の実施を義務化している。ボルソナロ(Jair Messias Bolsonaro)は経済、農業の活性化という言葉を武器に法案490を提出し、1988年10月5日の憲法公布日にすでに領土内にいたことを「証明できる民族にのみ」土地の所有権を保証しようとしている。つまりテンポラリー・ランドマークに基づき土地の再定義をしようとしているのだ。それが提示でき領土においては現在は違法とされる他社の侵入と利用が合法化される。また、この法案で提案されている先住民による土地の独占的使用を廃止する措置や、それらの領土での試掘・採掘の許可は、環境や天然資源、住民の持続可能な生活様式に直接影響を与える。そもそもブラジルの先住民は自らの土地に対する絶え間ない侵入を受け、暴力の危機に晒されている。

 

ジャイル・ボルソナロは4月8日のナタルのラジオ96FMのインタビューで「先住民の大部分はお金が何であるかさえ知らない」し「ヤノマミ族のように、1万人のインディアンがリオデジャネイロ州の2倍に相当する面積を持つことができるのは、どうしてなのか不思議だ。それはもう、ブラジルで農業が成り立たなくなり、紛争になることが意図されているからだ」と発言し自らの主張の正当性を持論を用いて展開した。

 

ブラジルの先住民リーダーたちは、8月9日ジャイル・ボルソナロ大統領を人道に対する罪、ジェノサイド(大量虐殺)とエコサイドに関する罪で国際刑事裁判所(ICC)に提訴した。これはボルソナロに国際司法の場で責任を負わせようとするものである。過去にもブラジル先住民連合(Articulação dos Povos Indigenas do Brasil :APIB)はボルソナロの告発を同法廷に対し行っているが、今までと違うのは今回が初めて弁護士を引き連れて出廷したと言うことだ。告発が進められれば、ハーグで被告となる初のブラジル大統領となる可能性がある。

 

ハーグまで先住民が行かなければならなかったのには理由がある。弁護士の1人はその理由を「ブラジルの現在の司法制度は、こうした行為を調査し、起訴し、裁くことができないからだ」とした。また、APIBは国際先住民デーを告訴の日に選んだのは、ハーグ法廷の検察官が、大統領が就任以来行なってきた犯罪を、COVID-19のパンデミックの期間に注意して検証して欲しかったからだと説明している。

APIBの依頼で出来上がった訴状は女性2名、白人2名を含む7名の弁護団によって1年をかけて作成された。弁護士を率いるのは33年前にパラグアイとの国境近くにあるイペグエというテレナ族の村で生まれたルイス・エンリケ・エロイ・アマド(Luiz Henrique Eloy Amado)、またの名をエロイ・テレナ(Eloy Terena)だ。エロイ・テレナは、自分の民族の権利を守るためにすべてのキャリアを捧げてきた。

政府の奨学金を得てパリに留学したり、カナダに滞在しては先住民の領土問題を研究してきた。またこれまでのキャリアを背景に、国連の人権委員会やブラジリアの議会でも発言してきた。彼には弁護士の妹、活動家の妹、そして村に戻ってきた主婦の妹がいる。「約90万人のブラジル原住民を代表してハーグ(オランダ)に行くのは非常に大きな責任を追っていることを意味する。」「しかし、村を出て勉強しに行ったのは偶然ではな」かったと語った。そしてこれは「先住民運動の長期的な戦略の一環であり、闘争は弓矢だけではなく、ペンを使って行うべきであることを意識してのことだ。法律やローブを身にまとい、自分が生まれた1988年に承認された憲法に謳われている権利を、ブラジルが厳格に遵守することを求めている」とエロイ・テレナはカンポ・グランデは付け加えた。テレナは11歳になるとイペグエに残り先祖伝来のサトウキビ刈りの仕事を続けるか、勉強を続けるためにカンポ・グランデの町に移り住むかの選択で後者を選んでいた。

 

148ページに及ぶ訴状作成にあたって彼は、大統領就任初日の2019年1月1日以降、大統領が主導してきた明示的、組織的、意図的な反先住民政策、先住民の保護を目的としていた公的機関や政策を少数民族を迫害するための道具に変えたこと、さらに先住民のいない国を作ることに従事してきたという事実を元にしたと語った。記載内容は多岐に渡る。

例えばボルソナロが社会環境保護の仕組みを解体したことで発生した先住民族の土地への不法侵入、そこでの森林伐採、バイオマスをきっかけとした火災、違法採掘の増加の事実が記載されている。ブラジル国立空間研究所(INPE)の記録では2009年から2018年の間に、年間約65万ヘクタールの森林が伐採されていた。一方で極右指導者の下では106万850ヘクタールとそれが急増した。パンデミックと行政を巻き込んだ「汚職スキャンダル」による社会混乱を利用し提出されたPL 2633/20は野党や環境保護団体からの激しい批判にもかかわらず、ブラジル下院によって強行的に承認された。

このPL 2633/20は、居住者が環境法を遵守していることを表明し、書類を提出するだけで国立植民地・農地改革研究所(INCRA)による調査、事前の検査なしに不法に占拠された公有地を正規化できるとするものである。先住民代表によるとこの法案は「侵略行為を合法化」するものであり、「法案、政令、条例自体が紛争を誘発する」ものだ。なお、法案改定は上述の通り農業や鉱物による利益獲得を求めてのことだ。この法案は、昨年大統領が署名したものの成立しなかった「grilagem法」と呼ばれる同様の提案を単純に再構築したもので、ボルソナロは執拗に先住民の権利を脅かそうとしている。今週の火曜日、PL2633/20は賛成296票、反対136票で承認され、今後は上院審議にかけられる。PL 2633/20は他の法案とともに、イギリスをはじめとするヨーロッパの大手スーパーや食品メーカーから批判されており、これらの法的イニシアチブが進めばブラジル製品をボイコットするという意思表明をそれららの企業は今年5月にもしていた。また先住民でもデモを通じ反対の意を表明しているが、6月22日それに対して警官が近代的な武器を使って交戦、怪我人を出すなど問題も多い。(詳細はこちら

 

今回の告発前にもボルソナロはハーグで糾弾されている。2020年4月、ブラジル民主主義法律家協会(ABJD)はコロナウイルス危機におけるボルソナロの態度は「ウイルスの伝染と拡散を助長する行動であり、ブラジル市民の生活をおびやかしている」とし、COVID-19パンデミック時の政府の医療政策を対象とした訴状を提出している。その前年の2019年にも、Human Rights Advocacy Collective(CADU)とArns Commissionは、ボルソナロの政策が先住民族のジェノサイドを扇動するものであり、人道に関する罪を伴っていると主張している。

国連によると、90カ国に4億7,600万人以上の先住民が住んでおり、世界人口の6.2%を占めている。これらの人々の意思決定プロセスへの「包含、参加、承認」を促進することは、不平等を減らし、権利を保証するために不可欠だ。

そのためにも2021年の国際先住民デーのテーマを「誰も置き去りにしない:先住民と新しい社会契約の呼びかけ」と国連は制定した。この意図は、先住民が意思決定プロセスで声を上げ、相応の重要性を持って社会契約に含まれることを呼びかけることにある。

社会契約とは、社会が協力して社会的・経済的利益を得るために交わす不文律の契約のことだ。そもそも先住民が自分たちの土地から追い出され、文化や言語を蔑ろにされ、政治や経済活動から疎外されてきた多くの国では、彼らは社会契約に含まれていなかった。なぜなら社会契約は、支配的な階級層との間で結ばれるものだったからだ。

 

参考資料:

1. Bolsonaro sobre indígenas: “Grande parte não sabe nem o que é dinheiro”
2. El abogado indígena que lidera la denuncia contra Bolsonaro por genocidio en La Haya
3. Brasil: Cámara de Diputados aprueba proyecto de ley para regular tierras ocupadas ilegalmente
4. Los indígenas brasileños denuncian ante La Haya a Bolsonaro por “genocidio y ecocidio”
5. Indígenas denunciam Bolsonaro por ‘crime contra a humanidade e genocídio’ no Tribunal Penal Internacional de Haia
6. Pueblos indígenas presentan denuncia contra Bolsonaro ante la CPI por genocidio y ecocidio
7. Dia Internacional dos Povos Indígenas: retrocessos e projetos de lei como o PL490 nos deixam na contramão do mundo?
8. Grilagem(WWF)
9. UNPRECEDENTED: APIB denounces Bolsonaro before the ICC, in The Hague, for indigenous genocide

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