ハイチ元検察官クラウディ・ガッサンの死亡

ドミニカ共和国の司法当局は、ハイチの元検察官だったクラウディ・ガッサン(Claudy Gassant)が同国で死亡していることを確認した。サント・ドミンゴの自宅で首に刺し傷があった。発見されたのは、ガッサンがハイチの治安悪化に関する会議のために南フロリダに出発する予定の土曜日のことだった。

弁護士が殺害されたのか、自殺したのかわかっていない。現在は検死の結果を待っているところだ。

56歳の彼はルネ・プレバル(René Garcia Préval)第2代政権下のポルトープランス政府の元コミッショナーで、検察庁を鉄壁の体制で運営していた。2019年、当時のボチット・エドモンド外務・礼拝大臣(現ハイチの駐米大使)を、ドミニカ共和国にある同国大使館の外交・領事スタッフに関わる汚職調査における司法妨害で糾弾するなど、手腕を見せていた。エドモンドは当時のガッサンの告発を否定していた。

暗殺された元大統領ジョブネル・モイーズ(Jovenel Moïse)政権下で反汚職ユニット(ULCC)の局長も務めたが、2019年11月29日にモイーズによって任命され、12月3日に就任し、それから50日後に解雇された。ソーシャルメディアを通じて発表された解雇の事由は分かっていない。

2000年4月3日に農学者からジャーナリストに転身したジャン・レオポルド・ドミニク(Jean Léopold Dominique)と警備員を殺害した犯人を突き止める任務を負った捜査判事としてガッサンは一躍有名になった。殺害された2人は、ポルトープランスにあるドミニクのラジオ・ハイチ・インター局の中庭で銃撃され死んだ。ドミニクは当時の大統領ジャン・ベルトラン・アリスティド(Jean-Bertrand Aristide)と彼の政党ラヴァラスファミリー(Fanmi Lavalas)を支持していたものの、ラジオ等を通じ率直な政権批判を展開していた。暗殺事件から21年が経過した今も、この事件は未解決のままだが、捜査にあたっていたガッサンは時にマイアミに逃れざるを得ない状況に置かれたこともあった。同大統領は元サレジオ会司祭で、解放の神学の熱心な実践者。退会後、政治活動に身を投じ期待されて民主的な選挙で選ばれた初の大統領となった人物だ。

この事件を担当し出してからというもの、ガッサンはしばしば命の危険を訴えていたという。身辺にも重装備の警備員を伴わずにはいられない状態になったり、司法省内も彼らとともに歩き回っていたりした。マイアミ・ヘラルドのインタビューでも「アリスティド政権の有力者が殺人に関与しているのではないかと思い、命の危険を感じてい」て、怖くて仕方ないが、一方で「誰を怖がっていいのかわからない」とすら2001年に語っていたという。上述の通りアリスティド大統領時代のことだ。

フロリダからハイチに戻った後、ルネ・プレバル政権下で働き、汚職撲滅運動の先頭に立っていた。警察などとの衝突で仕事がおろそかになることも多く、彼の手法に疑問や不安を抱く人も出てくるような事象もあり、モイーズの時と同様に解雇されていた。

 

国家捜査局は今回の事件を自殺とも他殺とも判断していない。当初はコロナウイルスの陽性反応が出た後に衰弱し鬱状態となった彼が自殺したというガッサンの妻の供述もあり自殺が有力とされていた。ただ専門家やドミニカ共和国のハイチ人仲間から疑問視されていたこともあり、現在引き続き捜査を行っているという。専門家によると、ナイフによる自殺は銃器による自殺のケースに比べて非常に稀だし、夫婦の関係が難しく、離婚を考えていたという報道もある。ドミニカ共和国大統領府の元スポークスマン、ラファエル・ヌニェス(Rafael Núñez)などは、ガッサンがモイーズの個人的な友人であったことを考慮すると、ドミニカの別の観点からも捜査すべきだと述べている。また、警察はガッサンの妻が主張していた自殺説を否定するに足る証拠を見つけたという報道もある。

 

ガッサンの死後、その様子を撮影した画像がSNSで広く拡散されている。死体が発見されたアロヨ・ホンド(Arroyo Hondo)のアパートには、血のついたシャツがあり、いくつかの窓は壊されており、血だまりとサンダルで作られた足跡がそこには見て取れる。

ガッサンの妻であるサラジーン・ガッサン(Saradgine Gassant)ほか3名は土曜日の午後に警察によって逮捕され、ドミニカ当局から事情聴取を受けてているという。逮捕理由は発表されていない。

 

ちなみにモイーズ大統領暗殺後の選挙だが、当初予定していた9月26日開催は難しそうだという話が出てきている。想定振替日は大統領および国会議員の選挙は今年末、地方選挙は来年1月となっている。なお、大統領候補には元大統領の妻マルティーヌ・モイーズ(Martine Moïse)が夫の意思を引き継ぐと意欲を示しているのとともに、中道左翼系の政治家ジャン・シャルル・モイーズ(Jean-Charles Moïse)の名前が挙がっている。 

 

参考資料:

1. Décès de Me Claudy Gassant en République dominicaine
2. Investigan muerte de exfiscal haitiano cercano a Moise
3. Ex-Haiti prosecutor once tasked with finding out who killed famous journalist is dead
4. New Haitian prime minister pledges to hold assassins accountable, schedule elections
5. Investigan la muerte en República Dominicana de exfiscal haitiano Claudy Gassant

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