ハイチ大統領暗殺事件:コロンビア人傭兵、陰謀のすべてを語る

カラコル・ノティシアスは、7月7日のジョベネル・モイーズ(Jovenel Moïse)暗殺前後数時間に起きた出来事について、容疑者4名が語る15時間の音声記録を入手した。その中で暗殺の首謀者とされる数人の指導者や政治家の名を当局に挙げている。その背後には、ハイチの権力を握ろうとしていた人たちがいる。その内容をまとめていこう。

 

「誰が大統領の殺害を指示したのか」

ハイチ法務省の元官僚ジョセフ・フェリックス・バディオ(Joseph Félix Badio)が指示者だ。別名ジョセフ・スリーと呼ばれるこの逃走者は、自らをギャングであると述べていた。チームのリーダー的存在であったヘルマン・リベラ(Germán Rivera、別名マイク(Mike))は傭兵たちに「突入し全員を殺さなければならない」「警察官も全員殺さなければならない」「ペットがいたらペットも殺せ」「目撃者がいてはいけないから」と伝達した。

もともと逮捕状に基づいた拘束と言う名目で傭兵たちは雇われた。それはリベラもアルカンゲル・プレテル(Arcángel Pretel)から何度も言われたと証言している。 しかしマイクは突然大統領を殺す時が来たと言ったと言う。元軍人が持っていた違法な逮捕状は、モイーズに打撃を与えて作戦を正当化するために使われるものだった。

アルカンゲル・プレテルについては今まで言及して来なかったが、実は暗殺事件において重要な役割を担っていた。本名はガブリエル・ペレス(Gabriel Pérez)、通称ガブリエル(Gabriel)は、マイアミから陰謀の糸を引いていた。彼は大統領の失脚に参加するだけではなく、裏では新政府の政治権力を操り、何百万ドルもの利益を得ようと画策していたのだ。リベラの証言によると政府転覆に関するシナリオはサノンではなくこのガブリエルが作ったようだ。また、ハイチに当初から滞在していた元軍人グループも、アルカンヘルが傭兵の募集をかけたことがわかってきている。「アルカンヘルは、私に3,000ドルを支払うと言っていた」と、語るのは安全上の理由から身元を伏せたコロンビア人だ。

プレテルとリベラ大尉、デュベルニー・カパドール軍曹のつながりは、10年前のカリで始まった。安全保障の専門家であるプレテルは、当時、麻薬密売人に対抗する特殊部隊に所属していた兵士たちを訓練した。それ以来、二人は連絡を取り合っていた。

 

「誰がモイーズを殺したのか」

ビクトル・ピネダ・カルドナ(Víctor Pineda Cardona)が大統領を暗殺した。フランコ・カスタニェーダ(Franco Castañeda)はそれを目撃している。涙ながらに語った内容によると、ピネダはM4ライフルを持って部屋に入り、大統領を12回撃たった。夫人は腹部と腕を数発撃たれたが、彼女は奇跡的に助かった。

 

コロンビア人の任務

コロンビア人傭兵に提示された任務は以下3つだった。リベラ大尉がその説明をした1つ目は大統領を捉えること、2つ目は監視カメラシステムの撤去、3つ目はお金の入ったスーツケース数個の回収だ。

襲撃当日について見て行こう。コロンビア人傭兵は、ポルトープランスのマフィアの一員であるジャール・ロドルフヘ(Jaar Rodolfhe 通称ドドフDodof)の家に集まった。そこには16個程の武器があったが、傭兵の数は22名だった。つまりは、事件当日すべての男性が武器を手にできていなかったことを示す。

 

計画を実行に

コロンビア人は5人ずつの4チームに分かれた。デュベルニー・カパドール(Duberney Capador)軍曹は、入口で待機していたへルマン・リベラ大尉と常に連絡を取りながら、大統領官邸内での作戦を監督した。

深夜1時頃、一行は6台の車で作戦を実行に移した。ハイチ人のジョセフ・バディオ、ジェームス・ソラージュ(James Solages)には地元の警察官4名が同行した。アンヘル・ヤルセ・シエラ(Ángel Yarce Sierra)軍曹は「最初の車両は、3人の警察官と、コロンビアから来た20人のうちの2人が乗っていた。官邸の警察がいる地点に到着すると、そこにいた警察官を静止し無力化した」と語った。

リベラは警察官とともに第2警備隊の所にいた時に最初の銃声を聞いたと告げた。家の中から銃撃があったので、男たちは予定していた車でではなく、約80メートルの非常に狭くてまっすぐな道を歩いて進んだという。3つの検問所を通過すと大統領官邸の玄関にたどり着いた。その後も発砲音が聞こえたので、殺されないようにと身を隠し様子を伺った。ゲートをこじ開けようと工具を持って行こうと思うも、誰かが扉を開けてくれたから、そこから入った。そう語るのはヘイナー・カルモナ・フロレス(Jheyner Carmona Flórez)少尉だ。カルモナをはじめとする第一陣は、1階の確保を担当した。1階を占拠していたコロンビア人傭兵は4〜5名の隠れていた警官を見つけた。彼らは「やめてくれ、お願いだ、やめてくれ」と懇願したから彼らを縛ったり手錠をかけたと言う。ライフルやピストルなどは使わなかった、そうカルモナは付け加えた。

仲間が1階を確保している間に、デルタグループは2階に進み、大統領を探した。そのチームはコロンビアでも麻薬王と対峙していた陸軍の特殊コマンド参加者で最高の兵士で構成されていた。2階には2つの部屋がああり、ナイゼル・フランコ・カスタニェダ(Naiser Franco Castañeda)二等兵とマリオ・パラシオス(Mario Palacios)二等兵は右側の部屋に向かった。フアン・カルロス・イエペス(Juan Carlos Yepes)、ピネダ、ハビエル・ロメロ(Javier Romero)、カパドールの4人は左側の部屋に入った。そこに標的がいた。

 

実行後の退去と逃亡

襲撃にかかった時間は約30分だった。モイーズがこの世からいなくなった後に残ったのは、スーツケースと監視カメラの回収だ。部屋には、2つのスーツケースと、紙幣が入っていると思われる3つの箱があった。それには1,800万ドルから4,500万ドル入っていると言う事前情報があった。これらの金はCTUセキュリティと傭兵たちの給料となる予定だった。へルマン・リベラたちは大統領の書類や監視カメラの録画システムも持ち帰った。彼らは灰色のフォードに乗っていたと言う。この時点でコロンビア人のみになった。

コロンビア人たちは決められた計画に沿って、守るべきハイチの新大統領が就任する大統領府に向かう。そこでは新大統領の宣誓と、クーデターが起きたこと、傭兵を大統領の親衛隊にするという発表がなされるはずだった。道半ばでハイチ警察がピックアップトラックや戦車で行く手を阻んだから、一行は車を捨て家に避難した。そもそも大統領がいなくなった後、傭兵たちは首相たちに守られるはずだった。だから脱出計画も立てていなかった。しかし現実は違った。コロンビア人は裏切られ、罠を仕掛られ、犯行から30分もしないうちに、さらに何の調査もされないうちに「犯人」と発表されたのだ。

そんな状況だから待っても待っても傭兵たちへの助けは来なかった。保護をされることもなかった。動揺する元軍人たちにカパドールは「落ち着け」「(ガブリエルと)調整しているから」と語った。そしてハイチ当局の反撃が午後4時頃から始まるという情報が入る。家には最榴弾が投げ込まれその後、銃声が鳴り響いたという。バリケードを作るも、そんなの狂気の沙汰以外の何者でもなかったという。

 

最初のコロンビア人が銃弾に倒れた。ハビエル・ロメロ軍曹だ。武器も弾薬もほとんど保持していない傭兵に当局は極めて激しく攻撃してきたという。そして投げ込まれた手榴弾が隅っこにしゃがんでいたハビエルの上に落ち死んだ。手榴弾による攻撃の後、元兵士たちは家の裏手に避難した。また別の手榴弾が投げ込まれ、その破片がカパドールに傷を負わせた。カパドールは傭兵を採用し、最も経験豊富な軍人だった。仲間たちは彼を救おうとしたが救急キットはすべてバンの中にあり、無理だった。その後、元兵士のミゲル・ガルソン(Miguel Garzón)が死んだ。彼は「捕まりたくない。捕まるくらいなら殺された方がいい、捕まるならば、自分で自分の命を絶つ方がいい」と言っていたという。怪我の痛みに耐えられなかったと言うこともあるようだ。彼のライフルが暴発し、彼も死んだ。

その日の夜、コロンビア人たちは暗闇を利用して壁や屋根の間を移動し、数メートル先の台湾大使館に逃げ込んだ。この場所はハイチ警察が入って来れないから安全だ、とマイクは言った。傭兵たちは大使館でひと夜を過ごした。謀議の責任者たちは、自暴自棄になった傭兵たちに、嘘のような妄言を吐き続けた。彼は後になって、アメリカ大使館がすでに動いていて、コロンビア人を脱出させるために何人かのアメリカ兵を送ると言っていたという。

暗殺から1日半後の翌朝、ハイチ当局が台湾大使館に入ってきて部屋に隠れていたコロンビア人たちは見つかり、捕まった。こうしてコロンビアの傭兵たちは、36時間を過ごした。

 

アントニオ・イントリアゴ(Antonio Intriago)の発言

コロンビア人は「傭兵」ではなく、ハイチの「人道的」インフラプロジェクトの警備のために人材の依頼を受けたとCTUセキュリティ代表イントリアゴは弁護士を通じて語っている。またその行為の合法性については事前にFBI捜査官や政府関係者に連絡を取り確認したと主張している。この点から弁護士の一人であるジルベルト・ラカヨは、依頼人は「無実で、汚名を晴らすために当局に協力している」と語った。

また報道されているような傭兵の訓練をこの会社がしていないこと、また、兵器を提供していないこと、大統領が殺害された時点で「非武装」なはずの隊員たちも、ハイチ警察からの武器許可をとっていたと考えていたことを明らかにした。

なおエマニュエル・サノンについても語っており「ハイチ人にもっと良い生活をさせる」とされる開発計画の投資家として、他のハイチ人とともに会社を訪れていたことを詳述している。

 

権力を狙う黒幕たち

コロンビア人傭兵の証言によると、エマニュエル・サノン(Emannuel Sanon)は大統領の座を狙うために、ハイチの高等司法機関と手を組んだ。匿名の人物の証言によると、裁判官や最高裁に組み込まれた人全てが元大統領の反対派だった。ハイチの権力のすべてが議会にも、立法にも実質的に与えられていなかった。この発言は、最初から陰謀に巻き込まれ、リベラと一体となって活動していた男の発言であり、米国当局の要請により匿名化されている。元大統領の逮捕状は女性判事ディアマンテ(Diamante)、本名ウィンデル・コック(Windelle Coq)が出した。彼女もまた逃亡中である。

当初から言われている通り、サノンが次の大統領になるよう計画はされていた。でも、皆彼にその力がなくなっていることを知っていた。実は次期大統領候補にはプラン Bが存在していた。それは上述のディアマンテが着任するというものだ。今年2月にモイーズがその職を解任したディアマンテは、コロンビア傭兵、ジョセフ・スリーとともに重要な会議にも出席していた。カルモナは彼女の印象を「何も言わず、むしろ病気のように見えた。高齢の女性で、痩せていて、髪は短く、マウスピースを持ち、眼鏡をかけ、小さな花柄のドレスを着ていた」と述べている。

なお、FBI捜査官などがクロード・ジョセフ元首相も黒幕の一部と疑っていたことについては、現時点においても証拠は出てきていない。またハイチ警察、ハイチの外交当局、そしてクロード・ジョセフ前首相自身も、コロンビアの傭兵が計画の一部として首相に言及したことはないと述べている。

警察の最新の数字によると、44人が拘束されており、その中には警察官12人のほか、引退した軍人を中心としたコロンビア人18人、ハイチ人6人(うち3人はアメリカに帰化)が含まれている。

 

参考資料:

1. Así mataron al presidente de Haití: mercenarios colombianos confiesan cómo fue el magnicidio
2. La fuga tras asesinato del presidente de Haití: ¿qué robaron de la casa y por qué no lograron huir?
3. ¿El ratón cuidando el queso?: las sospechas que recaen sobre la Policía de Haití por magnicidio
4. Primer ministro Claude Joseph, en la mira por asesinato del presidente de Haití
5. ¿Quiénes ordenaron magnicidio en Haití? Exmilitares señalan a policías, mafiosos y políticos

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