ハイチ大統領暗殺事件:容疑者の2名をさらに逮捕した

今日もまたハイチ大統領ジョブネル・モイーズ(Jovenel Moïse)の暗殺に関わった人物たちの情報を共有するとしよう。ハイチ当局の発表によると7月8日に追加2名の逮捕ができた。ポルトー・プランスの数十人の人間が、コロンビア人傭兵とされる2人を捕らえ、ペーション・ヴィルの警察署で警察に引き渡しましたのだ。こちらでも伝えた通り、この暗殺にはコロンビアの退役軍人が多く関わっている。

現代の国際法においては、傭兵が戦争に参画する事を認めていない。私的な利益をのために敵対するものに対して暴力行為を行うなどといったことももちろん許されていない。ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約の捕虜に関する規定も適用されない単なる犯罪者でしかない。それでも、治安の悪い地域では時としてこの原則が曲げられ、軍事力不足を補填するために政府や武装勢力が傭兵を雇い入れる事は「暗黙」のうちに許可されている状態だ。コロンビアがそうだとは言わない。ただし、国家安全保障局に所属していたコロンビア人隊員が、現在、ドバイなどでさまざまなサービスを提供しているというのも事実のようだ。

新聞SEMANAによる軍関係者へのヒアリングでは、これらコロンビア人傭兵がハイチでの任務に選ばれたのは、今回のコマンドを構成するメンバーが陸軍特殊作戦部隊、高精度のアクションを完遂する精鋭部隊に所属していたからであり、高い遂行能力があったことによるということだった。なお全員陸軍のメンバーで、2018年から2020年の間に軍から離れている。

Hoja de ruta de la Policía Nacional tras magnicidio del presidente Jovenel Moïse.

Hoja de ruta de la Policía Nacional tras magnicidio del presidente Jovenel Moïse.

 

これまでに発表された公式情報によると、暗殺前少なくともコロンビアからの4人の容疑ボゴタからドミニカ共和国東部プンタ・カンタ空港到着後、同国首都サント・ドミンゴ に移動し、国立宮殿、コロンブスの灯台や、コロニアル・シティ、サント・ドミンゴのマレコンなどを観光した。その様子は自身のFacebookアカウントを通じ共有しており、現役軍人からコメントをもらっていたという。なお、すべての画像は6月6日付となっているが、実際に同日にそれらの場所にいたかはわかっていない。

その観光者のうちの一人がマヌエル・アントニオ・グロッソ・グアニン(Manuel Antonio Grosso Guarín)だ。1980年4月19日生まれのこの男は、2019年までコロンビア軍に所属していた。2013年都市型反テロリスト特殊部隊グループに配属された彼は、コロンビアのディエゴ・モラーノ(Diego Andrés Molano Aponte)国防大臣に言わせると最も洗練された人間であり、米軍教官により特別な訓練を受けていたという。実はこの人物、ラファエル・グアリーン(Rafael Guarín)大統領補佐官(国家安全保障担当)の従兄弟であることがわかった。声明の中で高官は、この人物が自分と同じ姓を持ち、父親の国で生まれたことを知り、さらに従兄弟の一人がプロの兵士だったことを加味した場合、何か自分に関係があるのではないかと考え家族に相談したことから、これが判明した。なお本人曰く、彼とは全く面識がなく、生涯を通じて「家族レベルでさえも」付き合いがなかったことを明らかにした。補佐官の父の話では、父の10人兄弟のうちの1人の息子だそうだ。

サント・ドミンゴ観光写真に一緒に写っていた人物にマリオ・アントニオ・パラシオス・パラシオス(Mario Antonio Palacios Palacios)がいた。コロンビア国籍を持っているが、彼自身ハイチの血を引いていると考えられている。容疑者の一人と考えているこの人物は引き続き逃亡中である。

ナイゼル・フランコ・カスタニェーダ(Nacer Franco Castañeda)は30歳。マヌエル・アントニオ・グロッソ・グアニンと一緒に観光していたと推定(未確認)されている彼は水泳技術、浮力システムを含む戦闘戦術のほか、空中襲撃、ファストロープ、壁面降下、航空機降下などのスキルを身につけている。フランコ・カスタニェーダは、6月16日にサント・ドミンゴのファロ・ア・コロンとマレコンを訪れた時の写真を公開し、暗殺5日前の7月2日には、妻と2人の娘と一緒に写っている画像を公開していた。

カルロス・ジョバンニ・ゲレロ(Carlos Giovani Guerrero Torres)中佐はコロンビア人傭兵の中でも最高位で経験も豊富だった。2018年まで軍に所属し、25年の軍歴を経て退役した。軍関係者によると、昇進の力学上、彼は大佐のランクにはなれなかったという。最後にはスクレ大隊に所属していた。SEMANAの取材ではコロンビア元軍がWhatsAppグループを持っており、その中でゲレロ中佐が、コロンビア軍の最高幹部であることを理由に、イスパニョーラ島での各メンバーの行動の調整役をしていたらしいことが判明している。

ヘルマン・アレハンドロ・リベラ・ガルシア(Germán Alejandro Ribera García)元大尉は軍事戦略や戦争に精通しており、常に陸軍の特殊部隊に所属していた。14年間の勤務の後、2012年に退職。ゲレロ大佐と同様、ハイチにいる他のコロンビア人元軍人の作戦を指揮していた一人である。

アレハンドロ・ジラルド・サパタ(Alejandro Zapata Girardo)は1980年4月1日生まれ。都市型テロ対策を担当しており、対ゲリラ試験に合格し特殊部隊に入隊していた。

ビクトル・アルベイロ・ピネラ・カルドナ(Víctor Albeiro Pineda Cardona)は1981年7月2日生まれの元兵士。爆発物や長距離武器の取り扱いに精通、紛争地域で誘拐事件と戦ってきた。

ジョン・ハイロ・ラミレス・ゴメス(John Jairo Gómez Ramírez)は1981年5月17日生まれ。電動機器を使った作戦にも参加したことがあり、通信機器にも精通しているが、スナイパーでもある。

フランシスコ・エラディオ・ウリベ(Francisco Eladio Uribe Ochoa)も元兵士。2000年11月20日に陸軍に入隊し、義勇兵、その後2003年11月1日にはプロの兵士として編入、アントキアで勤務していた。司法長官室と平和特別管轄区(JEP)の公式情報によると、軍人としての最後の年、アンティオキアで超法規的処刑をした容疑で彼を訴追していたという。2008年初頭にルイス・カルロス・カルデナスを殺害した共同犯であるとされているからだ。事実、当時のセザール・アルベルト・タファー二等軍曹とともに、保護対象者の殺人罪と公文書の思想的虚偽の罪で裁判にかけられていた。ハイチからの公式情報によると7月9日、妻と名乗る女性が出現。Wラジオに語ったことによると、本件に関する情報は持っていないとしながら、結婚して18年になる夫は、ジューシーな「仕事の機会」に誘われたのではないかと語っているという。彼女曰くたまたまハイチにいたのは「CTU」というイニシャルの会社が各国でセキュリティ人材を募集していたからであり、その魅力的なオファーは月々2,700米ドルだったという。一方、フランシスコ・エラディオ・ウリベは、2003年5月1日から2017年5月31日任期中の給与未払いを理由に国に対し訴訟を起こしていたが、2019年3月14日に勝訴している。なお、妻は暗殺事件について、ウリベはどこに連れて行かれるか知らなかったと主張し、「CTU」という会社は警備員をドバイ(アラブ首長国連邦)にまで連れて行っていたという。彼女は2008年の事件についても「彼はすべてにおいて無実だった」と断言している。

死亡した容疑者はマウリシオ・ハビエル・ロメロ・メディナ(Mauricio Javier Romero Medina)とデュベルニー・カパドール(Duberney Capador)だ。カパドールは国軍の副一等軍曹だった。アルメニア、キンディオで生まれの彼は1990年6月8日軍に入隊。5フィート10インチの彼は40歳だった。2001年1月に陸軍に入隊、2020年の同月に退役している。彼は5つの表彰を受けており、今では疑問視されているサンタンデール州北部にあるククタの第30旅団に所属していた。ロメロは国軍の一等軍曹だった。ウイラ州ネイバで生まれ、2000年3月に入隊し、ネイバ出身で45歳、履歴書には5つの表彰状が含まれていた。スクレの第2歩兵大隊に所属し、情報部門の責任者を務めていた。2021年6月4日にボゴタからサント・ドミンゴに向け出発。

 

ハイチ系アメリカ人の詳細情報も出てきた。こちらでも少し述べたが、逮捕された二人とはジェームズ・ソラージュ(James Solages)とジョセフ・ヴィンセント(Joseph Vincent)を言う。大統領宅付近で銃声が鳴り響く中、コマンドのメンバーを追っていた警察は、汚れた白いTシャツとカーキ色のズボンを履いた南フロリダ出身の2人のハイチ系アメリカ人に声をかけた。2人を取り調べた結果、彼らは自首した。ジェームズ・ソラージュは帰化したアメリカ人、南フロリダとハイチを頻繁に行き来していた。インターネットで仕事を探して応募したところ、フルネームを知らない「外国人」向け通訳の仕事を得たという。ソラージュと外国人たちは、大統領の自宅から10分ほどのところにある高級ロッジ、ロイヤルオアシスホテル内のレストランで食事を共にしながら、他のチームメンバーと交流をし約1カ月過ごしたという。ソラージュによると、他のメンバーは裁判官が許可した大統領の逮捕命令を実行が任務だったという。水曜日の夜、一行が大統領官邸に近づいているところを、ソラージュが米国麻薬取締局(DEA)を名乗り大統領の護衛に声をかけ、身を引くように命じたと言う。しかし、違和感も感じていたと言う。彼曰く、大統領の自宅からコロンビア人部隊の一人が戻ってきて、この米国人二人にDEAと称する傭兵が大統領の元に到着する前に大統領が殺されたと知らせてきたという。

 

現在ハイチ当局によって勾留されている合計19名(ハイチ系アメリカ人2人、8日逮捕者含む)である。実行部隊が28名だったから、死亡者3名を加味すると、残り6名が引き続き逃走をしている。

 

上記以外の逮捕者:

エナルベルト・バルガス・ゴメス(Enalbert Vargas Gómez)
ジョン・ハイロ・スアレス・アレグリア(John Jairo Suárez Alegría)
アンヘル・マリオ・ヤルセ・シエラ( Ángel Mario Yacce Sierra)
フアン・カルロス・ィエペス・クラビホ(Juan Carlos Yepes Clabijo)
ジョン・ジェイバー・アンデラ(John Jader Andela)
ネイル・カセレス・ドゥラン(Neil Cáceres Durán)
アレックス・マイヤー・ラスティマ(Alex Miyer Lástima) 
ジェイナー・アルベルト・カルモナ・フローレス(Jheyner Alberto Carmona Flórez)
エドゥイン・ブラウニセット(Edwin Blaunicet)

 

実行部隊第一陣であるアレハンドロ・リベラ・ガルシアとデュベルニー・カパドール・ジラルドは5月6日、パナマへ飛び、5月10日にはサントドミンゴからハイチの首都ポルトープランスに入った。記録されている6月6日のフライトには、ビクトル・アルベルト・ピネダ、マヌエル・アントニオ・グロッソ、ジョン・ハイロ・ラミレス、ジョン・ハイロ・スアレス、ヘルマン・アレハンドロ・リベラ・ガルシア、メイガー・フランコ・カスタニェダ、アンヘル・マリオ・ヤルセ・シエラ、カルロス・ジョバンニ・ゲレロ、フランシスコ・エラディオ・ウリベ・オチョア、アレハンドロ・ジラルド・サパタが搭乗しており、ドミニカ共和国のプンタ・カナに向かった。6月4日(金)午後2時25分にも元軍人4名がアビアンカ航空でドミニカ共和国に向かった。

ホルヘ・ルイス・バルガス警察長官は、記者会見で実行犯以外に関係があるかもしれない別のコロンビア人がいる、具体的にはコロンビアの企業4社があることを述べ、彼らがどのような役割を果たしたのかを立証しようとしていることを示した。この他にも、元大統領の警護責任者たちを召喚し、引き続き操作を実施している。

大統領が殺された理由については、引き続き調査中である。

 

モイーズの暗殺にあたってはギャングの抗争や、自身の任期問題以外にも色々と話が出てきている。例えばこの国においては制度的な政党以上に、対立する2つのイデオロギー(グループ)が存在していること可能性の一つとしてありうる。元大統領の出身政党PHTK(中道右派)に強く対立する存在としてジャン・チャールズ・モイーズ(Jean-Charles Moïse)を中心としたベネズエラに近い左派の流れがある。過去2度にわたりこの国を率いたジャン・ベルトラン・アリスティド(Jean-Bertrand Aristide)もその流れにいる。

 

参考資料:

1. ¿Quiénes son los colombianos acusados de matar al presidente de Haití? Los perfiles de los exmilitares
2. Consejero del presidente Duque es primo de colombiano capturado en Haití
3. Cuatro empresas colombianas bajo la lupa por magnicidio de presidente de Haití
4. Ocho continúan prófugos: ¿qué se sabe de los mercenarios colombianos en Haití?
5. Mercenarios en Haití: ¿Quién es el militar (r) capturado, Francisco Eladio Uribe?
6. La Fiscalía de Haití interrogará a dos magnates y dos ex senadores por el asesinato del presidente Jovenel Moise
7. Palacio Nacional, entre los lugares emblemáticos de RD que visitaron colombianos acusados de matar al presidente de Haití 
8. Assassination of Haitian president becomes complex international web

 
どのような理由であれ人の命を奪うことは疑う余地なく許されることではない。が、彼らの経歴などを調べているうちにもしかしたら・・・彼ら自身も誰かから騙された可能性があるのではないか、などと思ってしまう瞬間があった。冒頭でも記載した通り、国際法で傭兵や暴力は認められていないし、罰せられるべきことである。それを罰するのが、ハイチにいる市民とならないよう冷静かつ節度を持った犯人探しをハイチ人にはしてほしいと強く願う。さもなければ、彼らもまた暴力の罪に問われてしまう可能性もあるのだから。

2 Comments

  • miyachan 07/12/2021 at 03:09

    実行部隊が28人!まだまだこの暗殺事件の全容は解明には時間がかかりそう。ハイチ国内の政治的派閥、この地域の地政学的な問題まで及ぶ複雑な事情が事件の背景にありそう。真相をさらに知りたくなるような驚きのブログ内容でした。
    「傭兵」の言葉に悲しい響きを感じる。いったい誰がその傭兵を雇い暗殺を命令したのか?長編のサスペンス小説でも書けそうな事件でもあるような感じがする。
    犯人はサントドミンゴのマレコンを観光した。あそこは、カリブ海の潮騒を聞きながらアイスクリームを食べるのが定番。彼らも笑顔で食べていたのだろうか?

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    • MARINA 07/24/2021 at 13:16

      マレコンは世界共通でアイスクリームですね。ちなみに傭兵がアイスクリームを食べているような写真は警察から共有されていないですね。観光地で写真を撮っているものなどは数枚共有されていました。

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