(photo by MiguelAlanCS)
ペルー調査会社のDATUMは8月6日ペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)大統領就任後初の支持率を公表した。そこには想定内とも言える数字が並んだ。支持39%、不支持率41%、わからない20%だった。
また、7月28日の就任式におけるカスティージョのメッセージをきちんと受け取れた人は2/3以上いた。ただ、その約束が果たされるかについては懐疑的で半数以上が、果たせない、またはわからないと答えている。カスティージョの就任で国がよくなるかという質問もまた、この国の今の状態を表しているものに見えた。というのも、1/3ずつの人が彼の就任をポジティブ、ネガティブ、ニュートラルにとらえていることによる。カスティージョのメッセージに対する評価は少し細かいのでこの場のコメントは割愛する。
もう少しカスティージョを支持する人がいるだろうなと思っていたが、そうでもなかった。それはギド・べジド(Guido Bellido Ugarte)を首相に据えたこと、さらにはPLのスポークスマンに党首ブラディミル・セロン(Vladimir Cerrón)の実の弟ワルデマル・セロン(Waldemar Cerrón)就任を就任させたことがカスティージョ政権の支持率にさらに影響を与えたと想定される。ギドの任命については、政府与党からも反対意見が出ていた。紫の党もベリドが「民主主義、人権、汚職やテロとの戦い」を信じていないとし、彼に信任票を与えないとしている。
クスコ出身のギドは極左議員の代名詞のような人物で、2017年Facebookの投稿でセンデロ・ルミノソ(Sendero Luminoso)のリーダーの一人だったエディス・ラゴスの死を追悼したことから、ペルーの検察当局から「テロリズムへの謝罪」で捜査を受けている。また、4月にも地元メディアによるインタビューで、1980年代から90年代にかけて政権奪取を目指し数万人のペルー人を殺害した毛沢東主義の反政府組織センデロ・ルミノソのメンバーを擁護してもいた。さらに、LGBTに関してもリマ・ホモセクシャル・ムーブメント(MHOL)はこの首相をホモフォビア(同性愛嫌悪)の偏屈者を首相に選出したと非難している。過去には同性愛者であることが知られている地元の政治家を攻撃したり、「プロゲイ・アジェンダ」を推進していると思われる広告を出したりするなど、ソーシャルメディア上でも同性愛嫌悪や女性嫌悪の意見を表明していたことによる。
カスティージョが政党に囚われることなく幅広く適切な人を要職につけ、穏健派政権となるだろうことに期待していた人からすると、梯子を外されような感覚だ。左翼紙La Repúblicaでさえ、社説でベリドの起用を批判し「時代遅れの妄想に満ちた小さな派閥」による提案を採用することで「変革を求めて投票した社会の信頼を裏切らないように」とカスティージョに呼びかけている。首相には76%の国民が反対、内閣に「無能な人間が複数いる」と考えている人が57%となった。なお、新内閣に信任票を投ずるべきで無いと思っている人は51%にのぼる。なお、新首相にはペルー議会での信任投票を勝ち取るための1ヶ月間の猶予がある。
このような状況下においてギドは経済についてコメントを発した。それによると政府が新たな公共企業体の設立も目指すとし、ここ数十年続いた国営企業の売却からの転換点となる。また、左派新政権の下で天然ガスや新しい水力発電プロジェクトなどの主要産業に国家が参加する計画もあるとした。産業界が地域社会とのより良い関係を求め、環境保護に投資することなどを優先課題として掲げるとも述べた。
上述の通り、カスティージョの意に反してかどうかはわからないものの、カスティージョの周囲やペルー・リブレの要職にセロンの色が強くあるらしいことが見て取れる。国民も国の実権は大統領ペドロ・カスティージョではなくウラジミール・セロンとが握っていると考える人が多く、その割合は48%にのぼる。なお政府を国の福祉や団結を一義的に考えているのではなく、自らの政党ペルー・リブレ(Perú Libre)の理想第一、と考えている人が55%にのぼっている。
カスティージョはそもそもウラジミール・セロンの代用としてペルー・リブレから出馬した。セロンはフニン州知事時代に不適合な交渉と職権乱用をしたとして3年9カ月の執行猶予付きの禁錮刑となっていて立候補できなかったことによる。
その他の閣僚の評価についても見ていこう。保健大臣と経済財政大臣の支持は各々36%、47%だ。国民が期待している2つの柱についても支持が伸びない。経済については決選投票後の長い開票作業の間、投資家の不安を和らげていた元世界銀行のテクノクラートがいなくなってしまったことも要因かもしれない。自ら政権から離れたのか、追いやられたのかはわかっていない。ただ、ケイコを支持してきた人たちの多くが、いわゆる左翼的な経済政策の適用に否定的なことは確かであり、誰もがパンデミックで傷んだペルー経済や雇用の状況を回復させたいと願っている。それゆえ期待も大きいのである。事実向こう5ヶ月における個人の経済状況を好転すると答えたものは25%に留まっており、皆悲観的な状況にいる。そのような中6日、エコノミストのエルナンド・デ・ソト(Hernando de Soto)が大統領顧問になるという噂が出てきた。今年の大統領選挙に出馬し落選したた彼は、フジモリ政権で経済顧問として務め、ペルー経済を新自由主義に転じさせた人物として有名だ。
保健大臣の評価については、パンデミックがいまだ収まりついていないことにもよるのかもしれない。
カスティージョ政権で最も頭を悩ましそうなものが、新しく決まった新議会の政府に対する態度である。これについてもDATUMは調査を取っている。ここでもマリア・デル・カルメン・アルバ(María del Carmen Alva)が率いる共和国議会の新しい議会が政府と対立関係になるだろうと考えている人が多い。
ペルーでは、過去5年間に4人の大統領が罷免等で誕生している。さらにカスティージョ就任式において新議会によってなされた妨害行為、具体的には退任するフランシスコ・サガスティ臨時大統領がカスティーヨ氏に大統領のたすきを渡すために建物に入るのを妨害した、のを国民は見ている。
このような状況下で彼女がどんなに政府と協調していくと言っても国民の心に届かないのは、致し方ないことともいえよう。
議会で130議席中37議席しかないペルー・リブレ。国をうまくドライブしていくためには中道派をうまく取り込んでいく必要がある。苦難が多いが、良い国作りに向けエゴイスティックにならずに進んでいって欲しいものである。
今回の調査はカスティージョ支持が39%だったが、次の調査では政策が功をなし上がっていることを願う。いずれにしてもペルーのための政策作りと実行が優先だ。これ以上のペルーの困難は誰もが望まない。なお個人的にはデ・ソトが加わることで1996年から土地の不法居住の承認委員会(Organismo de Formalización de la Propiedad Informal:COFOPRI)で行われきた非合法住宅の土地所有権の承認などの貧困対策が進むことも期待したい。
参考資料:
1. EXCLUSIVE Peru’s new govt eyes natural gas, hydroelectric sectors for public companies
2. Quién es Guido Bellido, el controvertido nuevo primer ministro de Perú investigado por “apología del terrorismo”
3. El hermano de Vladimir Cerrón es el nuevo vocero de Perú Libre
4. Hernando de Soto asegura que sí aceptaría asesorar al presidente Pedro Castillo
5. Encuesta Datum: un 42% cree que Pedro Castillo manda en nuestro país, y un 48% que lo hace Vladimir Cerrón
6. La desaprobación de Pedro Castillo alcanza el 41 % a nivel nacional, según encuesta de Datum
7. ペルーの貧困研究を導いてくれた1冊の本
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