ダンテと聞くとダンテ・アリギエーリのことを思い浮かべる人も多いだろう。残念ながらローマや詩に対する知識があまりにもないことから、彼に関することはかけそうにない。
今日話をしたいのはディズニー映画COCO(邦題:リメンバー・ミー)に出てくる犬ダンテについてである。
ダンテはメキシコの古代種ショロイッツクゥイントリ(Xoloitzcuintle)がモデルである。メキシコの犬と言えばチワワが有名で、日本でも人気の犬種となっている。チワワも古代における小型犬テチチ(紀元前15世紀頃には存在した)に起源を持つが、一方のショロイッツクゥイントリもまた少なくとも3500年前には今のような血統になっていたとされている。 この舌を噛みそうな犬の名前はアステカ時代に遡る。アステカにおいては人間は死ぬと冥府の最下層であるミクトラン(Mictlan)に向かうとされていて、そこに辿り着くには4年の歳月を要した。そこにたどり着くには道案内が必要で、その役割を担ったのがショロイッツクゥイントリだったとされる。それは金星を象徴する神ショロトル(Xólotl)が全人類を造りだした銀の生命の骨を使って作り上げた犬(イツクイントリ:Itzcuintle)で、ゆえにこの名がついたとされる。 この神聖なる犬はペットとして可愛がられただけでなく、湯たんぽがわりとして人の体を温め、また時に祭礼においては美味しく栄養のある貴重な食べ物として重宝された。 ちなみに、ショロトル自体も人間の体に犬の頭を持っていたとされ、眼は大きくギラギラしていたと言うから、ミクトランまでの暗い道のりでも、大丈夫だったのかもしれない。なお、足は後ろ向きで彎曲していたと言う。
話をCOCOとの関係に戻そう。COCOの作品が出来上がるまでにダンテは特別な工程を取られた。彼を主題にした短編「ダンテのランチ(Dante’s Lunch)」が作られ、それを通じてキャラクターが確率されたのだった。 早速そのショートムービーを見てみよう。
ダンテのモデルは冒頭の通りショロイッツクゥイントリだ。体はつるんとしていて毛がほぼ生えておらず、これがその特徴と言っていい。また、よくよく見ると体には色素沈着の斑点、耳は一部避けたような傷があり、また、皮膚にはプツッと盛り上がった部分もある。これは、ダンテが野良犬として、いろいろなことに巻き込まれながらも、逞しく生きてきたことを物語る。ちなみに、右耳が折れているのも特徴だ。もっとダンテを知りたくなった?だったらこの動画を。
ダンテはミゲルとともに死の世界に行くことができた。そして、皆が元の(生の)世界に戻った後も死の世界にいることができた理由はそう、もうお分かりだろう。彼は本物の犬ではなく、死の世界への案内役だったのだ。大好きなリメンバー・ミー。何度もいると、知らなかったことが見えてきて面白い。ダンテがアレブリへになっているのも可愛らしい。
なお、若干こじつけにはなるがダンテが野良犬であることから、保護犬、保護猫に興味を持った方は、リンクからどうぞ。
関連文献:
1. 3500年続く古代の犬種「ショロ」 絶滅寸前から復活(NIKKEI STYLE)
2. 毛のないメキシコの伝統犬「ショロイツクインツレ」、ヒップスター時代に人気再燃(AFPBB News)
3. テクストと方法について:ショロイツクイントゥリを事例にして(池田光穂 大阪大学COデザインセンター )
4. 身体にあてて病気を治すために使った犬「ショロ」(ペットトゥモロー)
初めて映画COCOを見たとき、変わった犬が出ている程度で何も気に留めてなかった犬ダンテに、アステカ時代に遡る深い物語があるとは!全く知りませんでした。イイ話だね。教えてくれてありがとう。
ジブリしかり、奥が深いです。情報を持っているのと持っていないのとでは、見えてくるものが違ってきますね。