エクアドルの麻薬取引の状況が急速に変化している。国内メディア「Punto Noticias」によると、2023年11月以降、エクアドル当局は累計545トン以上の麻薬を押収している。しかし、従来の植物由来の薬物だけでなく、新たに化学合成型の危険薬物の流通が深刻な問題となっている。特に2023年から2025年にかけて、フェンタニルをヘロインやコカインと混合する実験室が国内で複数発見され、摘発される事態が起きていた。
この現状を受け、2026年に開催された「国際合成麻薬会議(Conferencia Internacional sobre Drogas Sintéticas Ecuador 2026)」でダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領は演説を行った。彼が強調するのは、国境を越えて活動する犯罪ネットワークを根絶することが、新世代の安全な未来を守るために不可欠であると言うことだ。また、化学前駆体の流通管理を徹底し、違法薬物の製造や密輸を阻止する必要があるとも述べ、政府の対策方針を示した。
ノボア大統領はさらに、「フェンタニルとヘロイン、コカインを混合する実験室を摘発し、この猛毒が市中に出回るのを防いだ。違法医薬品や危険な化学物質を押収することで、国民の健康を守ることに成功した」と説明した。この摘発は、国内の麻薬取引が単なる農産物由来のものから、化学合成型に高度化している現状を象徴している。
政府は今後も、国内だけでなく国際的な連携を通じて犯罪組織を追跡・摘発し、麻薬流通ネットワークを壊滅させる方針である。今回の一連の摘発と会議での演説は、エクアドルが高度化する麻薬犯罪に対応する決意を示したものだ。
INCAUTAMOS MÁS DE 10 MIL FRASCOS DE KETAMINA DESTINADOS A LA PRODUCCIÓN DE DROGAS SINTÉTICAS EN CARCHI
— Policía Ecuador (@PoliciaEcuador) January 24, 2026
La #PolicíaEcuador, ejecutó con éxito la Operación Antinarcóticos “RENACER” en el distrito Tulcán, #Carchi, logrando afectar a una estructura delictiva dedicada al transporte… pic.twitter.com/VxcjJfwsPL
合成麻薬対策の強化:懲役上限を引き上げ、前駆体流通を厳格監視
エクアドル政府は、急速に進化する合成麻薬の脅威に対応するため、法的枠組みの強化を進めている。2024年7月、国民議会(Asamblea Nacional)は、化学前駆体や管理化学物質の違法生産に対する刑罰を、従来の最長5年から7年〜10年の懲役に引き上げる法律を可決した。
ラテンアメリカでは、メキシコが化学的麻薬製造の中心地となっており、シナロア・カルテル(Cártel de Sinaloa)やハリスコ新世代カルテル(Cártel Jalisco Nueva Generación:CJNG)が北米市場向けの合成麻薬製造を主導している。これらの組織は化学的手法に精通しており、国際的に規制された前駆体を、中国やインドから輸入される未規制物質に置き換えるなど、巧妙な手口を用いている。
国際麻薬統制委員会(Junta Internacional de Fiscalización de Estupefacientes:JIFE)は、こうした「マスキング前駆体(precursores enmascarados)」の使用が増加していると指摘している。特に1-boc-4-piperidoneは、国際規制を回避できる「デザイナープレカーサー(precursor de diseño)」として知られ、摘発が難しいとされる。
エクアドル政府は、2025年初頭にPENオンラインシステムを活用し、この化合物3トンの不正流用を未然に防いだ。この量は純フェンタニルに換算すると最大3.3トンに相当し、流通すれば国民の安全に深刻な影響を及ぼす可能性があった。
Ayer Elementos del Ejército Mexicano🪖 y la Guardia Nacional🚓, en coordinación con la Fiscalía General de la República, decomisaron droga sintética, armamento, un vehículo y un inmueble en la colonia Reforma de #SanLuisRíoColorado, #Sonora. pic.twitter.com/MyDZsO9ULW
— EJÉRCITO, FUERZA AÉREA Y GUARDIA NACIONAL México (@EJTO_FAM_GN) January 28, 2026
メタンフェタミン生産の高度化と酸性化学物質の利用
合成麻薬の製造技術は、メタンフェタミンの分野でも急速に高度化している。2025年に行われた地球化学的分析によれば、メキシコの麻薬組織は、1-フェニル-2-プロパノン(1-fenil-2-propanona, P-2-P)を用いた合成ルートを高度に洗練させていることが確認された。
これらの組織は、製品の効力と依存性を最大化するため、酒石酸(ácido tartárico)を用いたエナンチオマー選択的精製工程を導入している。この工程により、精神刺激作用がより強いd-メタンフェタミンのみを分離・精製することが可能となり、市場価値の高い製品が生み出されている。
実際、メキシコではシアン化ナトリウム6.5トン、塩化ベンジル13.7トンといった工業用化学物質の大量押収が相次いで報告されている。これらの物質は実験室規模を超えた生産体制を示すものであり、メタンフェタミン製造がすでに完全な工業規模で行われている実態を裏付けている。
南米南部に広がる化学的麻薬の影響
南米南部では、ブラジルとアルゼンチンがそれぞれ異なる形で合成麻薬問題に直面している。ブラジル連邦警察は、国内に豊富に流通する農薬が前駆体として転用され、結果として同国が「化学物質の廃棄場」と化していると警告している。合法的な農業資材の存在が、違法な化学物質流通を覆い隠す構造を生んでいるのである。さらに同地域では、複数の合成薬物を組み合わせた高危険性の混合物が流通し始めている。
「ココ・シャネル(Coco Chanel)」と呼ばれる混合物は、2025年末にコロンビアで確認されたもので、メタンフェタミン、ケタミン、コカイン誘導体を組み合わせた極めて危険な薬物である。
また、「トゥシ(Tusi)」または「ピンクコカイン」と呼ばれる薬物は、その名称とは異なり、通常コカインを含まず、ケタミンとMDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)を主成分とする混合物である。
さらに深刻なのが「ニタゼノ(Nitazenos)」と総称される合成オピオイドである。アイソトニタゼノなどに代表されるこれらの物質は、フェンタニルを数倍上回る強力な作用を持ち、一般的な毒物検査では検出が困難とされている。
CINCO NARCOS DETENIDOS POR COMERCIALIZAR DROGAS SINTÉTICAS
— Ministerio de Seguridad Nacional (@MinSeguridad_Ar) December 21, 2023
A través de la Policía Federal desmantelamos una organización dedicada a la venta e importación ilegal de peligrosas drogas sintéticas en su modalidad de vapers electrónicos y gomitas con hongos. Cinco narcos detenidos. pic.twitter.com/oSDuQvlJSZ
このような急速な麻薬生産・流通の高度化を踏まえ、当局は一致して新たな課題を指摘している。2026年における最大の技術的課題は、新しい合成薬物を分子レベルで正確に検出することだ。従来の検査方法では、フェンタニルやニタゼノのような新型合成オピオイドや複合薬物の迅速な特定が困難であるため、流通を未然に阻止することが難しい状況にある。
国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime:UNODC)の事務局長ガダ・ワリ(Ghada Waly)は、犯罪組織が状況に柔軟に適応し、世界的な危機を悪用していると指摘した。その上で、ワリ事務局長は「技術を活用し、国境を越えた協力を強化することで、対策を強化することが急務である」と述べ、国際的な連携の重要性を強調している。

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