(Photo:Daniel Tapia)
エクアドル検察は、元副大統領でコレイスタ(ラファエル・コレア支持派)のホルヘ・グラス(Jorge Glas)に対し、大統領候補だったフェルナンド・ビジャビセンシオ(Fernando Villavicencio)の暗殺事件(詳細はこちら)に関する先行捜査への関与を正式に通知した。グラスの国際的な弁護団の一員である弁護士ソニア・ベラ(Sonia Vera)は「本件には証拠が存在せず、刑事権力が政治的迫害の手段として使われている」と主張している。
通知は2025年5月6日にグラスの弁護団へ届いていたが、翌週の火曜日になってSNS上で広まった未確認の文書により公に知られることとなった。この文書では、元副大統領グラスのほかにも、複数の人物が捜査対象として追加されるとされており、その多くはやはりコレイスタとされる人物たちである。
文書の真正性については、エクアドル国家検察庁からは確認も否定もされていないが、そこには、元内務大臣ホセ・セラノ(José Serrano)、元国会議員ロニ・アレアガ(Ronny Aleaga)、さらに汚職事件で検察に起訴されている実業家ハビエル・ホルダン(Xavier Jordán)とダニエル・サルセド(Daniel Salcedo)の名前が記されている。
この動きに対し、元大統領ラファエル・コレア(Rafael Correa)は、X(旧Twitter)上で「狂気の沙汰だ! いまやホルヘ・グラスをビジャビセンシオ暗殺の犯人に仕立てようとしている。検察はまるで茶番劇の舞台だ」と非難の投稿を行った。コレアはこれまで一貫して、検事総長ディアナ・サラサール(Diana Salazar)がコレイスタに対する政治的迫害を行っていると批判してきた。
¡Demencial!
— Rafael Correa (@MashiRafael) May 13, 2025
Ahora se quiere culpar del asesinato de Villavicencio a Jorge Glas.
Fiscalía se ha vuelto un patio de comedias.#NosGobiernanDelincuentes pic.twitter.com/2xOySDAmBT
セラノは、自身のX(旧Twitter)アカウントで声明を発表し、今回の召喚が「個人的破壊を目的とした企て」であると非難した。「私の兄を殺害したのと同じ犯罪者たちと共謀し、虚偽の刑事物語をでっち上げようとしている。私は組織犯罪、麻薬取引、それに関与する政治的・国家的な関係者と戦ってきたために迫害されているのだ」と元内務大臣は述べている。
弁護士ソニア・ベラは、ホルヘ・グラスが本件に関与しているということには法的根拠が存在しないと主張し、次のように述べている。「検察は、ホルヘ・グラスに対して一切の証拠もないままビジャビセンシオ事件に関与しているとし、無罪推定の権利を侵害し、刑事権力を政治的迫害の道具として用いている。事実も、動機も、合法性も存在しない」。また、ベラはSNS上で、組織犯罪の関係者や政治的関係者とのつながりが暗殺の計画に関与していたとされる、いわゆる保護証人の供述書を公開した。この件についてエクアドル国家検察庁は、当該情報の公開は刑事犯罪に該当する可能性があるとして警告を発した。
ビジャビセンシオは大統領候補となる以前、ジャーナリストおよび国会議員として活動しており、とりわけラファエル・コレア政権に対して最も厳しく批判していた人物の一人であった。コレアは彼を名誉毀損および侮辱罪で訴えた経緯もある。暗殺が起きた当時、コレイスタ候補のルイサ・ゴンサレス(Luisa González)は2023年大統領選挙第1回投票における支持率で首位を走っていた。
ビジャビセンシオは、2023年の大統領選挙の臨時投票を数日後に控えた中、選挙集会終了後に暗殺された。その数時間前、保護証人による検察への供述が流出し、その中で「ビジャビセンシオ暗殺の背後にはラファエル・コレア政権があった」とする主張が含まれていたが、この主張は犯行実行者に対する裁判では立証されなかった。
最近、ビジャビセンシオの未亡人であるベロニカ・サラウス(Verónica Sarauz)は、この証人について「検察が真の責任者を隠すために作り上げた偽の証人(falso positivo)」であると表現し、検事総長ディアナ・サラサルから「夫の殺害の責任者としてコレアをSNSで名指しするよう圧力を受けた」と告発している。これに対して検察は、「そのような事実は根拠がなく、虚偽である」と正式に否定している。
これまでに、本件の実行犯として5人が有罪判決を受けており、その中には犯罪組織「ロス・ロボス(Los Lobos)」の幹部も含まれている。また、本件に関与していたとされる他の8人は裁判に至る前に死亡している。その中には、犯行に加わったとされるコロンビア人の殺し屋7人が含まれ、うち1人は現場でビジャビセンシオの護衛に銃撃されて死亡、残りの6人は拘置中に刑務所内で首を吊った状態で発見された。これらの死については現在も詳細が明らかにされていない。
元エクアドル副大統領ホルヘ・グラスは、2024年4月から、キトのメキシコ大使館での警察の強制捜査による逮捕後、最高警備の刑務所「ラ・ロカ(La Roca)」に収監されており、この出来事はエクアドルとメキシコの外交関係を断絶させる原因となった。
グラスの弁護士は「彼ら(検察)はグラスに対して有効協力者(cooperador eficaz)として協力させようと脅迫している」と述べた。有効協力者とは、容疑者が自分の罪を認め、他の関与者に関する情報を提供することで、刑罰を軽減してもらう制度である。弁護人は、元副大統領が現在置かれている状況が「ひどいものであり、すでに刑期の80%以上を満了しているため、彼は本来、刑務所を出るべきだ」と訴えている。また、グラスに関しては、2016年の大地震で被災した地域の再建に関連する公金横領(peculado)の疑いがかけられた最後の事件でも、保釈の期限が過ぎていることを指摘した。「ホルヘ・グラスは、外交的庇護を受けた後に誘拐され、孤立し、病気であり、今また根拠もなく非難されている。これは純粋で体系的な『法的戦争(lawfare)』だ」と、ベラ弁護士は自身のX(旧Twitter)アカウントで記述した。
Otro montaje más en construcción: el nuevo falso positivo contra Jorge Glas y otros líderes políticos
— Sonia Gabriela Vera García (@sonicorver) May 15, 2025
La fiscal Diana Salazar montó un falso positivo para usar su venganza personal contra el correísmo a través del crimen de Fernando, y él merece mucho más que eso”, denunció… pic.twitter.com/I82538jhes
一方の検察は「検察は、制限された性質の情報の拡散、特に証人の名前が明らかにされ、その生命を危険にさらすような行為を容認しない」と声明を出している。さらに、流出資料を共有した人物に対して法的措置を講じることを発表している。加えて、検察はソニア・ベラに対し、当該文書の公開に関する事情説明を求めるため、証言のための召喚を行ったとしている。ただし、ベラ弁護士は現時点で正式な通知は受け取っていないと述べている。
2024年4月にメキシコ大使館(キト市内)でグラスが逮捕されたことをきっかけに、エクアドルとメキシコの間で外交的な対立が生じ、両国は現在も国交を断絶している。
#JorgeGlas #FernandoVillavicencio #RafaelCorrea
参考資料:
1. Ex vicepresidente Jorge Glas es citado a declarar en el caso del asesinato del candidato Fernando Villavicencio
2. Ecuador: investigan a Jorge Glas por crimen de Villavicencio
No Comments