エクアドル:エスメラルダスのSOTE、油流出で緊急時対策が発動

エスメラルダス県キニンデ(Quinindé)のエル・ベルヘル(El Vergel)で原油流出事故が発生した。ペトロエクアドルによると、原因は雨による地滑りにある。ペトロエクアドルは、エクアドル横断石油パイプライン・システム(SOTE)のパイプラインで油漏れが発生したとの警報を受け、同社は直ちに緊急対策計画を発動し、パイプラインの運用プロトコルを実施している。また、重質原油パイプライン(OCP)や陸軍と協力し、安全、衛生、環境、保守管理、物理的安全対策を担当する専門技術チームを現場に派遣した。ペトロエクアドルは、SOTE経由の原油輸送を一時的に停止したものの、副次的な輸送ルートを活用し、既存の在庫を確保しているため、輸出には影響しないと強調している。

https://twitter.com/EPPetroecuador/status/1900384349561770186

 

一方、エスメラルダス水道公社は、パイプラインの破損による水源汚染を防ぐため、浄水場への原油流入を回避し、浄水処理能力を一時的に制限した。これを受けて、住民に対し、節水と協力を求める声明を発表している。

 

 SOTE、54年の歴史、エクアドル経済の原動力

エクアドル横断石油パイプライン・システム(SOTE)は1972年6月26日、が操業を開始した。 その日、アマゾンから最初の石油1バレルが輸送され、アンデス山脈を越えて太平洋に隣接するバラオに到達し、そこから世界中の目的地へと運ばれた。2018年当時にエクアドル政府が発表した情報によると創業日から46年間、エクアドルの技術者たちの努力の歴史的証言が続いている。彼らの仕事のおかげで、この国の主要な天然資源である石油の絶え間ない輸送が可能になったのだ。この間、SOTEは同国経済の原動力となり、同国東部で採掘された石油をバラオ海上ターミナルまで輸送し、エスメラルダス、ラ・リベルタッド、シュシュフィンディの3つの製油所に輸出・納入した。このパイプラインは現在、アマゾン、シエラ、コーストの3地域を貫く497.7kmのパイプラインを通じて、日量36万バレルの輸送能力を有している。6つのポンプステーションと4つの減圧ステーションがある。

 

エクアドルの歴代政府はSOTEについて良いことしか言わない。しかしSOTEを含む石油産業をめぐる問題、地元住民に与える悪影響についてはとどまることがない。

例えば現在、SOTEを通じて輸送される石油の重要な拠点であるカンポ・サチャ(Campo Sacha)の利権を巡り国は揺れている。エクアドル政府は2025年2月29日、エクアドルで最も生産性が高く、エクアドル東部オレリャナ県サチャ油田(ブロック60)を、カナダのニュー・ストラタス・エナジー(New Stratus Energy)社と中国国営シノペック(Sinopec)社の子会社であるペトロリア・エクアドル(Petrolia Ecuador)社とアモダイミ・オイル・カンパニー(Amodaimi Oil Company)社によって結成された民間コンソーシアム、シノペトロル(Sinopetrol)社に譲渡したと発表した。国民議会監視委員会が求める利権獲得プロセスに関する情報提供をペトロエクアドルと国家政府は拒否している。委員会によると、この要請に対する回答期限として法律で定められた10日間はすでに過ぎており、回答がないのは「深刻な透明性違反」であるとしている。

 

「2月21日、委員会は、ペトロエクアドル社の経営陣に対し、この油田をいかなる名目であれ第三者に譲渡することの利便性および/または必要性を正当化する、技術的、法的、経済的な報告書に関する詳細な情報を正式に要請した」と、代表団は議会が発表した公式コミュニケの中で述べた、また、「国益を守ろうとする政府の姿勢に疑念を抱かざるを得ない」と付け加えた。委員会は、この情報へのアクセスは「裁量的な要求ではなく、行政機関および公的企業の法的義務である」と指摘した。このため、同委員会は、立法行政審議会(Consejo de Administración Legislativa:CAL)に対応する規制手続きを継続すると警告した。「国民は、国の最も重要な戦略的資産のひとつを危険にさらす可能性のある決定の背後にある技術的基準を知る権利がある」と国民議会は結論づけている。

https://twitter.com/FiscalizacionAN/status/1898030280012636322

 

1998年の流出事故と比較される規模

環境エンジニアのビクトル・サラス(Víctor Salas)によると今回の流出事故は、1998年2月26日にエスメラルダス県の州都近郊ウィンチェレ(Wínchele)で発生した大規模な原油流出事故と比較できると指摘する。当時、オイルパイプラインと燃料パイプラインが破損し、火災が発生。1,800軒の家屋が焼失し、33人が死亡、18人が重度の火傷を負い、15人が溺死、100人以上が負傷するという、同国最大級の環境災害となった。

今回の事故を目撃したキニンデ郡チュカプレ(Chucaple)地区の住民エルネスト・バスケス(Ernesto Vásquez)によると、事故当日は「黒い油の柱が地表から噴き出し、丘の斜面を流れ落ち、エル・アチオテ(El Achiote)川に達した」。エスメラルダス市の環境管理局長であるアレックス・ベナルカサル(Álex Benalcázar)は、「SOTEには4つの減圧ステーションがあり、適切に機能していれば、このような環境危機を防げた可能性がある」と述べている。

 

今回の事故による影響

この流出事故により、キニンデのキュベ教区、ビチェ教区、およびエスメラルダス郡のマフア、チンカ、サン・マテオ、タチナ、州都エスメラルダス市などが影響を受けている。流出した原油は川岸や植生、船舶に付着し、アチオテ川、カプレ川、ビチェ川、ブランコ川、エスメラルダス川の汚染を引き起こしている。サン・マテオ教区の住民マリアナ・ロア(Mariana Roa)は、「川を渡る船が、汚染された川岸に引っかかり、航行が困難になっている」と状況を語っている。

エクアドル環境省が発表した声明によると、被害を軽減し、技術的な復旧作業を監督し、安全な水の供給を確保するための対策が実施されている。3月16日にX(旧Twitter)を通じて同省が発表した情報によると流出の警報を確認した後、対応プロトコルに従い、環境監督機関の技術スタッフが現地に派遣されている。派遣されたのは、地方局(ゾーン2)、環境・社会復旧プログラム、および環境管理局の専門家で、環境および社会への影響を調査する。また、エスメラルダス県の緊急対策委員会(Comité de Operaciones de Emergencia:COE)の枠組みの中で、安全な飲料水の確保を目的とした技術作業グループが立ち上げられている。また、COEは事故の原因の徹底調査、責任者への制裁、影響を受けた地域への経済的および環境的補償を求めている。また、キニンデおよびエスメラルダスの自治体は、川の汚染による飲料水不足に対応するため、給水車を配備して住民に安全な水を供給している。

環境省は3月14日から、環境監視活動の一環として、技術スタッフ、ペトロエクアドル、分析機関、そして被災地域の代表者が現地調査を実施し、水質や土壌のサンプル採取を行っていると発表。汚染レベルと環境状況の評価を進めているという。さらに、SOTEを運営する企業に対し、環境回復のための行動計画を順守するよう監視するとともに、キニンデ郡の複数の農村地域で被害を受けた996世帯を支援する方針を示した。一方、政府機関の協力により、クベ(Cube)教区のエル・ロト(El Roto)地区では、230人以上の住民に対し、400ガロンの飲料水、10リットル容量のバケツ50個、水の浄化用資材3,650個が配布されている。

 

法的措置と復旧作業

エスメラルダス県の技術者らは、今回の事故に関して、刑法(Código Integral Penal:COIP)第251条に基づき「水質汚染に関する犯罪」として適用されるべきだと指摘する。刑法第251条とは以下を指す。

水に対する犯罪:現行の規定に反して、水域、湧水、水源、生態系の流れ、水路流域の自然湧水や地下水、水生生物資源全般を汚染、枯渇、改変した者、または重大な損害をもたらす海洋への排水を行った者は、3~5年の禁固刑に処される。

最高刑は、犯罪が国家保護地域システムの空間において行われた場合、または犯罪が営利を目的として行われた場合、もしくは広範かつ永続的な損害をもたらす方法、器具もしくは手段を用いて行われた場合に科されるものとする。

準拠法令:ECUADOR(エクアドル)共和国憲法、第12条、第71条、第318条、第411条
民法(第2編)、第612条、第619条
衛生組織法、第96条、第104条、第105条 96, 104, 105
水資源に関する有機法(18条、64条、66条、78条、79条)
サンチェス・デ・ブスタマンテ国際民間法(117条)
鉱業法(61条、79条、95条、96条

 

ペトロエクアドルは、SOTEおよびエスメラルダス-サント・ドミンゴ燃料パイプライン、さらに重質原油パイプライン(OCP)と連携し、緊急対策計画を実施している。流出した原油の正確な量は現在調査中である。

エスメラルダス県の複数の水源で発生した原油流出の封じ込めおよび清掃作業は、3月15日も国営石油会社ペトロエクアドルの技術者や作業員、その他の機関と共に続けられている。

#Petroecuador #CampoSacha

参考資料:

1. Derrame de crudo del SOTE activa plan de contingencia de Petroecuador en Esmeraldas
2. Se registra derrame de crudo y se detiene bombeo por rotura del SOTE en Quinindé, Esmeraldas
3. Casi 1.000 familias afectadas en sectores rurales de Quinindé, Esmeraldas, tras derrame de petróleo
4. Petroecuador se niega a dar información sobre Campo Sancha, asegura Comisión de Fiscalización
5. Sacha: Refinerías Esmeraldas y Libertad dependen en 32% del petróleo de este campo, ¿que pasará si se adjudica a un consorcio extranjero?
6. CÓDIGO ORGÁNICO INTEGRAL PENAL, COIP

 

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.