映画:「Emilia Pérez」は見る価値がある?それとも本当にひどいのか?

ネタバレ注意

『エミリア・ペレス(Emilia Pérez)』は、近年最も大胆で物議を醸した映画の一つである。映画祭やコンクールで称賛され、多くの賞を受賞し、2025年のオスカーには13のノミネートがされている。それでも、多くの人々、特にメキシコではこの映画は不人気だ。その背景にあるのは偏見の塊であると考えられている。

もちろん、『エミリア・ペレス』は国民感情を害した初めて映画でもなければ、最後の映画でもないだろう。ディズニーのアニメーション映画『アラジン』はアラブ人の描写に関して、そして『300』はスパルタの活躍を通じて、イランの人々からの反感を得ている。

『エミリア・ペレス』が不評な理由は、麻薬組織による失踪者の危機というセンシティブなテーマを扱いながらも、ありきたりな表現や不正確な要素、軽薄な内容、そして創造性に欠ける描写が多いことにある。また、スペイン語がわかる観客にとっては、セレナ・ゴメス(Selena Gomez)の演技や、ミュージカル仕立ての映画で使われた曲は失笑せざるを得ないことも多かった。しかし、これらの問題はメキシコ国外の観客にとってはさほど重要ではない。

 

『エミリア・ペレス』には、悪評を超える多くの高評価があることも確かだ。まず、編集担当のフランス人ジュリエット・ウェルフリング(Juliette Welfling)の編集は観客を飽きさせることはない。撮影、サウンドトラック、物語の展開、そしてゾイ・サルダナ(Zoe Saldana)の演技もこの映画に価値を与えている。ドミニカ系アメリカ人の父とプエルトリコ人の母をもつサルダナは2000年、バレエの才能を買われて「センターステージ」で映画デビューを果たした人物としても知られている。「真夜中のピアニスト」などで知られるジャック・オーディアール(Jacques Audiard)監督は暴力的なシーンを控え、一方感情的な瞬間を引き出した。

麻薬カルテルのボスが女性として新たな人生として生きるという設定は信じ難いかもしれない。しかし、スーパーパワーを持つクリプトニアン(Kryptonian)の話が受け入れられるのなら、『エミリア・ペレス』の話もまた、フィクションであるという点で受け入れられることだろう。

 

アドリアナ・パス(Adriana Paz)、ゾイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン(Karla Sofía Gascón)、セレナ・ゴメスの4人はカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した。カルラ・ソフィア・ガスコンによる女優賞を受賞はカンヌ国際映画祭史上トランスジェンダー俳優がそれを受賞したという点においても初のことである。本作品は第97回アカデミー賞でも作品賞や国際長編映画賞をはじめ、非英語作品としては史上最多となる12部門13ノミネートを果たした。

この作品を見るかどうかを悩むのであれば、ぜひその目で見て評価を加えてみたらいかがだろうか。なお日本における劇場公開日は2025年3月28日となっている。

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参考文献:

1. Emilia Pérez ya se puede ver en Ecuador: ¿Es tan terrible como se dice o vale la pena entrar al cine?

 

作品情報:

名前:  Emilia Pérez
監督:  Jacques Audiard
脚本:     Jacques Audiard
制作国: France、Mexico、Belgium
製作会社:Why Not Productions、Page 114、Pathé、France 2 Cinéma、Saint Laurent Productions、Pimienta Films
時間:   132 minutes
ジャンル:Comedy、 Crime、Drama、Musical Thriller

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