(Photo:Getty Images)
ベリーズ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、エルサルバドル、ハイチ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、ベネズエラの首脳と政府代表が、チアパス州パレンケで会合を開き、この地域の移民問題について話し合った。
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andrés Manuel López Obrador:AMLO)大統領は「幸福な友愛の隣国のためのパレンケ会議(Plan de Acción Concreta del Encuentro de Palenque)」を総括し、増大する移民の流れに対して、人道的なビジョンを持って行動を起こすことが不可欠であると述べた。同大統領はメキシコが「米国政府との間で大きな前進を遂げた」としながらも、米国による「根本的なイニシアチブを取るのを待つことはできない」と述べた。
Muy fructífero el Encuentro de Palenque, por una vecindad fraterna y con bienestar para enfrentar el fenómeno migratorio con cooperación y respeto a los derechos humanos. pic.twitter.com/CtCxqr0KYL
— Andrés Manuel (@lopezobrador_) October 23, 2023
AMLOは、キューバのミゲル・ディアス=カネル(Miguel Díaz-Canel)、ベネズエラのニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)、コロンビアのグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)、ホンジュラスのシオマラ・カストロ(Xiomara Castro)、ハイチのアリエル・ヘンリ(Ariel Henry)首相らと行った視察の様子をビデオで紹介した。AMLOはメキシコは移民の国であるだけでなく、今やメキシコとアメリカの南の国境から国境を越える人々の通過国でもあると付け加えた。
https://twitter.com/DiazCanelB/status/1716233290326085784
移民問題に対し共に行動し協力し合うことを目的とした会議では人の移動の構造的な発生原因への対処として、各国の実情に合わせた開発計画についても話し合われた。その結果計画の起草を含む14の合意事項が発表されている。
移民サミットでの合意事項:
1.各国の実情に合った開発計画に取り組む
2.関税優遇措置を通じて域内貿易を促進する
3.域内諸国に課された一方的な強制措置の撤廃を強く求める
4. 移住先の国々に対し人権に基づいた包括的な移住政策を実施するよう求める
5. 移住先国に対し一貫性のない選択的移住政策を放棄するよう求める
6. ハイチが政治的、経済的、社会的に正常化するよう支援する
7. 開発を進めるため、各国のソブリン債のリスケジュールに向けた協調的な努力を推進する
8. 労働問題に重点を置き、規則的で秩序ある安全な移住経路を拡張できるよう移住先国に要請する
9. この問題に関する各国間の包括的な対話を強く要請する
10. 国際機関との協調作業を強化する
11. 大陸南部間の関係を深める
12. 協定をフォローアップするため、外務省が担当するワーキンググループを設置する
13. 2024年第1四半期に開催が予定されている移民サミットに向けて、協定が再び取り上げられる。
14. キューバと米国政府は、二国間関係を再開するよう要請された
Comparto el Comunicado Conjunto del Encuentro en Palenque, que nos permitirá la construcción de soluciones integrales ante los flujos migratorios que experimentan nuestros países. Juntos vamos a avanzar con planes de acción bien coordinados y objetivos prioritarios. ¡Unidos por… pic.twitter.com/ROWi5EtZsc
— Nicolás Maduro (@NicolasMaduro) October 22, 2023
これに関連して、農業部門の強化による自給自足や食料主権などの優先分野に取り組むことが合意されるとともに、環境の保護、保全、回復、適正な雇用、教育、技術・技能の開発を促進することについても約束された。また移民や難民の発地国、経由国、着地国において人権に基づいた移民政策と慣行を実施することも合意されている。移住先国に対しては「地域の現状に沿った移住政策と慣行を採用し、特定の国籍の正規化など、『引き込み効果』と『抑止効果』の両方を恣意的に生み出すことを避けるため、一貫性のない選択的入国政策を放棄する」よう求めている。また、国際組織犯罪や人身売買との闘いに加え、関税優遇措置の推進を通じて地域貿易を促進することについても話し合われている。
課題への対処にあたってメキシコはエネルギー分野での協力や、ラテンアメリカ・カリブ海医薬品庁の設立を視野に入れた規制調和プラットフォームの提案を主導することに加え、センブランド・ヴィダ(Sembrando Vida)などの社会プログラムの適用における経験を共有した。センブランド・ヴィダは農林業振興による貧困問題の解決と気候変動対策を兼ねた国策。アグロフォレストリー生産システムを導入した土地区画の実施を通じて、社会基盤の再建と環境の回復、食料自給の促進を目指すものである。
AMLOは自身のソーシャルネットワークを通じて、首脳たちとの会談は、移民現象の原因に対処するために、力と意志と資源を結集することを呼びかけるものであったと伝えた。さらに同大統領は、移民は人道的な問題であり、この地域の政府が協調して対処する必要があると説明し、同首相は、必要なことがあればメキシコの協力を期待できると繰り返した。メキシコは国連総会においても移民問題を人道的観点から語っている(詳細はこちら)。人の移動が切っっけとなり発生する社会的現象はたしかにある。しかしながら、移民は危ないとか怖いとか、そのような差別は現代において通用しない。そのようなことを平気で語る人はそれらに向けられる暴力や人権侵害を再生産するきっかけを作る。共同コミュニケによると移民の構造的な原因は政治的、経済的、社会的、そして気候変動の悪影響であり、移民個人に問題があるわけではない。移民という現象を通じて社会サービスが行き届かなくなったり、特定の場所に人が集中してしまうなどと言ったことはある。一方移民を食い物にする組織犯罪、凶悪犯罪組織が存在することは確かだ。
国立移民研究所(INM)のデータによると、昨年1月から8月までの間に、メキシコで402,324人が非正規移民として検出されている。これは2022年と比較して61.7%の増加を意味する。最も多くのケースが報告されたのはチアパス州の132,250人で、登録者全体の32.8%に相当する。2位はタバスコ州の111,734件(27.7%)、3位はベラクルス州の39,920件(9.9%)、4位はバハ・カリフォルニア州の19,449件(4.8%)、5位はコアウイラ州の17,347件(4.3%)であった。
メキシコに避難を要請する移民の数は2023年も増え続けている。1月から9月にかけて、メキシコ難民支援委員会(Comar)は、同委員会の事務所に112,960件の請願書が提出されたと報告しており、2022年の同月に登録された86,337件を30.8%上回った。Comarの記録では、2023年現在までに3万7,736人のハイチ人が亡命を申請しており、最も多い亡命希望者となっている。以下、ホンジュラス(31,055人)、キューバ(12,777人)、エルサルバドル(5,033人)、ベネズエラ(4,784人)と続く。
多くの移民を自国から生み出しているベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領はコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領と会談し、両国関係が再確立されてからの進展について話し合った。ニコラス・マドゥロはその様子をTwitterを通じて報告しており、コロンビアとベネズエラの関係は、兄弟愛、相互尊重、さまざまな発展分野での協力の道を進んでいると述べた。一方のペトロ大統領は、世界中の移民が直面している深刻な状況について言及し、人類の始まりから存在する人間の流出は、市民の権利であるとして、犯罪化することで犠牲にすることはできないと述べている。移民に関する地域サミットの中で、ペトロは、もし北側がこれらの人々を受け入れたくないのであれば、この状況を打開する最善の方法は、南側に進歩を築くことであり、国境に強制収容所を建設することではないと述べた。
https://twitter.com/infopresidencia/status/1716252653208916289
アルバロ・レイバ(Álvaro Leyva)外務大臣は、パナマのダリエン県とチョコ県北部に広がるダリエン・ギャップの危機に対する効果的な解決策を探るため、パナマのハナイナ・テワネイ・メンコモ(Janaina Tewaney Mencomo)外務大臣と数日中に会談することを約束した。コロンビア外務大臣は「パナマとコロンビアは、ダリエンギャップが我々の存在であり、マフィアがどのように働くか知っており、我々のジャングルであるこの権利の対象を守るつもりであることを世界に示すつもりである」と断言した。この会合に参加した際、レイバ外務大臣は、過去2回の政権で決裂したベネズエラとの関係についても言及した。
レイバ外務大臣によると、グスタボ・ペトロがコロンビア大統領に就任するとで同国との外交関係が再開し、この1年半の間にベネズエラで起こったことは世界中から称賛されている。「私たちは制度を更新しなければならず、それは今日私たちが集大成しようとしているような対話のメカニズムを通じて行われる」とレイバ大臣は述べた。また、来年11月にはハイチを訪れ、今日起きていることを連帯、認識、そして支援することになるだろうと演説している。
参考資料:
1. Piden en cumbre acabar con políticas migratorias selectivas
2. Petro se reunió con Maduro en México: “Hemos venido avanzando por el camino de la hermandad”
3. Así reaccionaron las redes a fuertes imágenes de migrantes en la frontera con EU
4. “No somos perros”: el fuerte relato de un migrante tras tragedia durante incendio en Ciudad Juárez
5. Latin America has a different migration problem
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