ブラジル大統領選2022 : 投開票始まる、ルラは返り咲けるのか→決選投票

ブラジルで大統領選挙の投開票が始まった。10月2日午前8時~午後5時に行われた投票は即日開票となる。日本時間3日午前には結果が出る見通しだ。

今回の注目ポイントは2つ。現職ジャイル・ボルソナロ大統領(Jair Bolsonaro、67)が再選できるのか、そして決選投票に進むことなく第1回投票で決着がつくかということだ。ボルソナロの支持が増えたなど噂はいろいろありつつも、調査会社ダタフォリャ(Datafolha)が実施した世論調査では左派で元大統領ルラ・ダ・シルヴァ(Luiz Inácio “Lula” da Silva、76)の支持率が50%、ボルソナロは36%と差がついている。なお第1回投票で決着がつけるためには、有効票の過半数の獲得が必要となる。過半数に届く候補者がいない場合、上位 2名による決選投票(10月30日)が実施される。なお大統領選にはボルソナロ、ルラを含め11人が立候補している。

 

ボルソナロの支持が低迷している背景に景気の低迷やインフレがあるとされている。ブラジルの消費者物価は今年4月前年比 12.1%、現在は8%程度となっている。ルラを支持するのは主に貧困層や若者たちだ。一方労働者党(PT)の左翼的思想に抵抗感を示すのは実業家や銀行家とされている。何よりも経済を気にする人々はルラによる経済政策が見えてこないと批判をしている。アマゾン熱帯雨林の環境保護主義者の主張抑制も彼らは期待している。アマゾンを破壊してでもそこでアグリビジネスを拡大させていきたいからだ。また、財務大臣の名前も明かされていない。選挙直前にサンパウロで行われたシンクタンク「エスフェラ(Esfera)」主催のイベントでも財界人はルラに対し「よりよい成長を遂げるために、経済のパラメーターをもう一度確立してほしい」と頼んでいる。

 

ダタフォリャによる世論調査の結果は上述の通りだが、他からの報告も見てみよう。

アイペック(Ipec)がGlobo社から委託を受け実施した調査によるとルラが有効票(白人、無効票、未決定票を除く)の51%、2位ボルソナロが37%を獲得するという者だった。土曜日(1日)午後6時の発表では次点に民主労働党(Partido Democrático Trabalhista:PDT)から出馬している元大臣のシロ・ゴメス(Ciro Gomes)が5%、 ブラジル民主運動党(Movimento Democrático Brasileiro、MDB)から出馬した上院議員のシモーネ・テベット(Simone Tebet)が同じく5%で続いている。

イペスペスペ(Ipespe)調査によると第1回投票ではルーラが46%、ボルソナロが33%獲得するとされていた。9月23日に発表された前回の世論調査では、ルーラが46%、ボルソナロが35%だった。

Genial Investimentos社の依頼でクエスト(Quaest)が行った超世によると、ルーラ前大統領は有効投票の49%を獲得するとされていた。土曜日(1日)に発表されたこの結果に対し、前回の調査(9月28日発表)では50.5%だった。

 

ルラと言うのは幼少期からのあだ名である。名前ルイスから文字ってそう呼ばれていた。1982年のサンパウロ州知事選に立候補した時から本名に「ルラ」を加え、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァと改名している。

 

 

 

 

19:51 ボルソナロとルーラの差は1点差以下となったが集計66.66%(19:59時点)となると両者の差は0.14ポイントとなっている。この時の状況としてはボルソナロが45.69%(35,360,274票)に対し、ルーラは45.55%(35,246,748票)だ。

 

開票率70%になってルラがボルソナロを逆転した。差は20万票弱。

 

ドイツ国営の国際放送ドイチェ・ヴェレは、(Deutsche Welle、DW)は政治学者のオリバー・デラコスタ・スチュンケル(Oliver Della Costa Stuenkel)によるボルソナロの分析を掲載している。それによるとラテンアメリカ型のカウディーリョ、権威主義的野心を持つポピュリストとされている。ベネズエラの故チャベス大統領と比較するというスチュンケルは、それでも両者にはイデオロギーは違うとしているも、共通点としてはどちらも行政に権力を集中させ、政府を軍国主義化しようとしていること。また、メディアや大学を攻撃し、官僚を政治化し、自国を国際的に孤立させようとした。どちらもメディアを介さず、独自のチャンネルで国民とコミュニケーションすることにも共通の特徴がある。

スチュンケルはこれほどまでに多くの人がボルソナロを支持する理由も次のように語っている。過去10年間のブラジルは経済が成長しておらず、失われた10年とされていた。多くのブラジル人は、システムが機能していないと考えており、そのために過激な思想に染まりやすくなっていると言うのだ。ボルソナロのような過激派は、安定した社会では生まれることはない。また、スチュンケルはブラジルにおける多くの進歩的な改革が政治の場ではなく、裁判所から生まれたことにも原因があるとした。人権擁護、同性婚などは司法による新しい解釈の結果である。右翼の評論家はこれを非民主的なものだと言っている。ボルソナロの支持者は、例えばフェミニズムによる進歩的な変化を恐れる人たちであり、ウラジーミル・プーチンのような社会的ビジョンを共有していると言う。またボルソナロの有権者はもはや伝統的なメディアにアクセスすることはなく、ネット等別の情報世界に住んでおり、彼らが見るもの聞くものはすべて右翼的であることもその理由だと言う。

 

 

第1回投票で選挙が終了するためには、候補者が50%プラス1の票を獲得する必要がある。

 

 

 

 

21:27 ブラジル最高選挙裁判所(Tribunal Superior Electoral de Brasil:TSE)は、ルラとボルソナロで決選投票が行われるということを公式発表した。

 

次期大統領は23年1月1日に就任する。任期は4年だ。

 

第一回投票結果(最終)

 

なお、ボルソナロの一部支持者はルラが大統領となった場合、クーデターが起こるなどと語ると共に計画をし、逮捕に至っている者もいる(詳細はこちら)。

 

参考資料:

1. Lula intenta romper la desconfianza del empresariado brasileño ante su posible victoria electoral
2. Veja resultados das últimas pesquisas de intenção de voto para presidente

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