UNICEFの報告:世界初、肥満の児童・生徒数が低体重を上回る

2025年9月10日発表の国連児童基金(United Nations Children’s Fund:UNICEF)による報告書によれば、世界の児童および青年(5~19歳)のうち、肥満の割合が初めて低体重を上回った。世界では5~19歳の児童・青年のおよそ5人に1人(約3億9100万人)が過体重であり、そのうち10人に1人は肥満である。これは高血圧や糖尿病といった命に関わる病気のリスクを高める要因である。

この傾向は、サブサハラ・アフリカおよび南アジアを除くすべての地域で見られる。これらの地域では、依然として低体重の子どもの方が肥満より多い。

報告書『利益優先の食環境:いかにして食品環境が子どもを失敗させているか(Feeding Profit: How Food Environments are Failing Children)』では、子どもの体型の変化に対する主因として、砂糖、精製デンプン、塩、不健康な脂肪、添加物を多く含む超加工食品の存在が挙げられている。

 

UNICEFは、「これらの製品は商業施設や学校にあふれ、デジタルマーケティングによって、食品・飲料産業が若年層に対して強力な影響力を持つようになっている」と指摘する。

また、UNICEFの事務局長であるキャサリン・ラッセル(Catherine Russell)は、「栄養が子どもの成長、認知発達、精神的健康に極めて重要な役割を果たすこの時代に、超加工食品が果物、野菜、タンパク質の代替として普及している」と警鐘を鳴らしている。

2000年以降、5~19歳の低体重の子どもの割合は約13%から9.2%へと減少した一方で、同年代の肥満率は3%から9.4%へと3倍以上に増加している。

特に太平洋諸島においては、世界で最も高い肥満率が報告されており、ニウエで38%、クック諸島で37%、ナウルで33%と、いずれも2000年から倍増している。UNICEFによれば、「これらの増加は、伝統的な食事から、安価で高カロリーな輸入食品への移行が主な要因である」という。

 

先進国でも子どもの肥満率が高水準

チリ(27%)、アメリカ合衆国(21%)、アラブ首長国連邦(21%)といった高所得国においても、児童の肥満率は依然として高い水準にある。一方で、低・中所得国の多くでは、痩せ(wasting)や発育阻害(stunting)といった栄養不良が、5歳未満の子どもにおいて依然として深刻な問題となっている。

国連児童基金(UNICEF)の事務局長、キャサリン・ラッセルは「多くの国で、発育阻害と肥満が同時に存在する『栄養の二重負荷』が確認されている。これは特別な介入を必要とする問題である。すべての子どもにとって、成長と発達を支える栄養価の高い、かつ手頃な食品が確保されなければならない。親や保護者が子どもに健康的な食事を与えられるようにする政策が、今すぐに求められている」と述べている。

 

ジャンクフード広告の氾濫

UNICEFが実施した調査によれば、13歳から24歳の若者64,000人(170カ国)を対象に意識調査を行った結果、全体の4分の3が「過去1週間の間に砂糖入り飲料、スナック菓子、ファストフードの広告を目にした」と回答している。さらにUNICEFは、紛争下にある国々においても、若者の68%がこれらの広告に晒されていると指摘している。

 

青年層における不健康な食品の摂取と業界の影響力

グローバル・ダイエット・クオリティ・プロジェクト(Global Diet Quality Project)のデータによれば、15歳から19歳の青年のうち60%が前日に砂糖を含む食品または飲料を2回以上摂取しており、32%が炭酸飲料(ソフトドリンク)を、25%が塩分の多い加工食品を複数回摂取していた。

UNICEFは超加工食品や飲料を含む不健康な食品・飲料は、子どもたちが暮らし、学び、遊ぶ場所において広く出回っており、安価で、積極的に宣伝されている。また、超加工食品・飲料業界による非倫理的な商業慣行は、子どもを不健康な食環境から守るための法的措置や政策の導入努力を損なっている」と述べている。

UNICEFがアルゼンチン、ブラジル、チリ、コスタリカ、メキシコで実施した調査では、貧困層の地域の方が裕福な地域よりも、小売業者がスイートスナックや砂糖入りシリアルを店舗の入り口や子どもの手が届く場所に目立つように配置する傾向が強いことが判明した。

また、24カ国で実施された調査では、政府関係者および市民社会の代表の70%が、「業界の影響力が政府主導の食品マーケティング規制の導入における主要な障害である」と回答している。

UNICEFによれば、業界は、政治的働きかけ、科学的な正当化、評判管理、マーケティング手法を組み合わせることにより、政府による政策の導入を遅延・弱体化・阻止・回避している」。

 

可能な介入策

UNICEFは、子どもの肥満が長期的に深刻な健康問題および経済的損失を各国にもたらすと警告している。予測によれば、2035年までに世界全体での過体重および肥満による経済的影響は、年間4兆ドルを超えると見込まれている。UNICEFは、子どもたちが栄養価の高い食事にアクセスできるようにするための食品環境の改革に向け、いくつかの具体的な介入策を提案している。それは以下のようなものである:

  • 前面表示ラベル(front-of-pack labelling)、マーケティング規制、健康的な食品に対する課税および補助金など、子どもの食品環境を改善するための強制的な政策の導入

  • 学校内での超加工食品およびジャンクフードの提供・販売の禁止

  • 学校内における食品関連の広告やスポンサーシップの全面禁止

 

UNICEFは、メキシコ政府の取り組みを進展事例として挙げている。メキシコは、砂糖入り飲料に課税した最初の国の一つであり、最近では塩分・糖分・脂肪分の多い超加工食品の販売および配布を公立学校で禁止する措置も導入している。

#PublicHealth #Children #UNICEF

 

参考資料:

1. Global First: More School Kids are Now Obese Than Underweight
2. Feeding Profit – How food environments are failing children.

 

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