エクアドル全国ストライキ2025:オタバロにおける負傷者と軍による弾圧

報道陣に対する短い声明の中で、内務大臣(Ministro del Interior)のジョン・レインベルグ(John Reimberg)は、今後、全国ストライキの解決を模索するための対話を相手側、すなわち全国先住民族連合(Confederación de las Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)と実施することはないと述べた。これはCONAIEが合意を履行しなかったためと断じている。「彼らは、我々が行っていたことがいかに重要かを理解できなかった。その結果として、今後は誰とも直接話し合いを行わない。彼ら自身がその可能性を閉ざしたのだ」と、レインベルグは責任転嫁をした。大臣によれば警察も軍も先住民族の領域には入らないという約束の後、「彼らが対話を求めてきた」が、先住民族がそれを拒んだため実現はなくなった。また、レインベルグは先住民族の人々が指摘する軍や警察の行動を「弾圧(represión)」と見なす見解に対しても「弾圧は続いていない。我々が述べている通り、警察も軍もすでに出動していない。その後に彼らは対話を求めてきて、我々はそれに応じた」と、彼は述べている。そして「今後起こるいかなる事象も、彼ら自身(先住民族側)が責任を負うことになる」とは語った。その一方で彼は、より多くの国家や機関、特に米州機構(Organization of American States:OEA)からの支援を歓迎しており、「それが麻薬密売および組織犯罪グループとの闘いを強化することになる」と述べ話をすり替えた。

 

オタバロにおける軍による弾圧での負傷者19名の被害状況

2025年10月14日にオタバロ(Otavalo)で発生した軍による弾圧は、痛ましい爪痕を残した。地元の家族および地域団体によってまとめられた記録によると、銃弾、散弾、催涙ガス弾の影響で数十人が重傷を負ったという。この弾圧により、多くの人々が切断や骨折、視力喪失の被害を受けている。家族たちは、治療および緊急手術の費用支援を求めている。

被害者の多くは、ペグチェ(Peguche)、サン・ペドロ(San Pedro)、コタマ(Cotama)、サン・イグナシオ(San Ignacio)、エル・セルカド(El Cercado)などの先住民コミュニティに属し、建設業、縫製業、日雇い労働に従事していた。特に深刻なケースとしては、ホセ・ラファエル・ランチンバ(José Rafael Lanchimba、48歳)が挙げられる。彼は催涙ガス弾の直撃を受け、左目を失明した。また、インティ・パカリ・コルドバ(Inti Pakari Córdoba)はサン・イグナシオ出身の日雇い労働者で、股関節全置換手術を受けざるを得なかった。さらに、エルナン・グスタボ・プリナンゴ(Hernán Gustavo Plinango、36歳)は顔面に受けた催涙ガス弾の負傷により外科手術を受けている。多くの負傷者は義肢、金属プレート、継続的な治療を必要としており、治療費は5,000米ドルを超える高額に上っている。

ブライアン・スティーブン・カイザ(Bryan Steven Caiza、22歳)は銃撃を受けて緊急手術を受けた。エミリオ・ランチンバ(Emilio Lanchimba、52歳)は散弾による複数の負傷を負っている。建設労働者のアラン・メヒア・カンポ(Alan Mejía Campo、23歳)は足首を骨折し、再建手術を要した。合計で、記録されたリストには18名以上の重傷者が含まれており、切断や視力または四肢に永久的な障害を負った者もいる。

軍による弾圧によるオタバロでの重傷者

 

家族たちは医療費および回復費用を賄うための支援キャンペーンを開始している。多くの負傷者は現在も入院中か自宅療養中であり、国からの支援はない。「彼らは犯罪者ではなく、軍が発砲した時に帰宅途中だった労働者や若者たちだった」とオタバロから家族の一人は語っている。

 

「国家ストライキにおける治安部隊の行為は違法かつ拷問的手法」

人権専門の弁護士であるラファエル・バンダ(Raphael Banda)は、ラジオ・ピチンチャ(Radio Pichincha)のインタビューで、国家ストライキ中の治安部隊の武力行使を厳しく非難した。彼は、国家警察の制圧作戦に法的・道義的正当性は全くなく、特にレオナルド・ダニエル・アリアガ・ゴンサレス(Leonardo Daniel Ariaga González)が受けた暴行は「拷問に該当する」と指摘した。

バンダは、治安部隊は法令に基づき行動すべきであり、すでに制圧された人物への攻撃や身体に向けた催涙ガスの使用は許されないと強調。「これらは拷問の手法であり、エクアドルは人道に対する罪で訴追される可能性が高い」と警告した。また、警察・軍隊の指揮系統は上官の命令に従う階層構造だが、多くの命令が法や憲法に違反している実態を指摘した。

オタバロにおける逮捕については、多くの被拘束者が法定の拘留期限切れにより釈放されており、政府の自主的判断によるものではないと述べた。現在、「オタバロの12人」として知られる12名のみがテロリズム容疑で訴追されている。

 

エクアドル人権組織連合が公表した報告書でも、2025年全国ストライキに対する政府の対応を厳しく批判されている。報告書は、大統領ダニエル・ノボア(Danial Noboa)政権が「無差別的」「不釣り合いな」「組織的」な弾圧を展開し、多数の犠牲者を出すとともに、基本的な憲法上の権利を侵害していると非難している。同連合が10月18日までに収集したデータによると、第2週次報告では、377件の人権侵害、205人の拘束者、296人の負傷者、15人の一時的行方不明者、3人の死亡者が確認された。報告書は、分析期間中に軍や警察による大規模かつ過剰な展開が弾圧を激化させ、1件の超法規的処刑を含む多数の負傷、恣意的な拘束、複数の権利侵害が発生したと指摘している。

同報告書は、2025年10月13日から14日にかけてインバブラで実施された政府の軍事作戦に対して最も厳しい批判を集中させている。中央政府は、すでに地域に展開していた約2000人の兵力に加え、さらに5000人の軍隊を含む軍事部隊の増派を命じた。この行動は公式には「人道的かつ生産的」と説明されたが、エクアドル赤十字は「参加を拒否し、人道的輸送部隊は武装部隊による管理や護衛ができない」などの条件を指摘し、政府の主張は崩れた。軍事作戦の結果として、銃撃で死亡したホセ・グアマン()を含む死者、18歳の若者の脚切断、重度の眼の負傷者2人、至近距離で発射された催涙弾や発射物により負傷した数十人が発生した。連合は拘束の恣意性も強調している。インバブラでは同日66件の拘束が記録され、そのうち7人が未成年者だった。全員が後に釈放されたものの、複数があざや身体的虐待の痕跡を示し、拘束の違法性と武力の違法使用を示していると報告されている。

 

大学自治の侵害と学生への弾圧

2025年10月15日には弾圧が国立エクアドル大学(Universidad Central del Ecuador)の構内にまで及んだ。警察官は平和的に抗議する学生を追跡し、学部内で数時間にわたり催涙弾を発射した。さらに負傷者を治療していた医療ボランティアのいる場所にも放水砲が使用された。これらの行為は「大学自治の重大な侵害」とされ、表現の自由や身体の安全に対する権利の侵害として強く非難されている。

 

表現の自由の犯罪化とメディア弾圧

報告書は、政府による報道内容の管理と批判的な声の沈黙を図る意図的な戦略を指摘している。電気通信規制監督機関(Agencia de Regulación y Control de las Telecomunicaciones:ARCOTEL)は、全国ストライキ報道で重要な役割を果たすコミュニティラジオ「イルマン(Irman)」および「インティ・パチャ(Inti Pacha)」の周波数を停止した。連合はこれらの行為を「独立メディアを沈黙させ、国民の知る権利を奪う試み」と非難している。

さらに、2025年10月14日にはオタバロでの抗議現場を取材していた地域チャンネルApak TVの記者エディソン・ムエナラ(Edison Muenala)が右腕を銃撃される事件も発生したと報告されている。

 

コミュニティへの嫌がらせとキトでの攻撃

嫌がらせは首都キトの都市部にあるコミュニティにも及んだ。2025年10月19日、国家警察はキトのキト・カラ族(Kitu Kara, Kichwa)のサンタ・アニタ・デ・カルデロン(Santa Anita de Calderón)およびサン・ミゲル・デル・コムンに対し、激しい催涙ガスを放った。この影響で多くの家族、子どもや高齢者も被害を受けた。

同日、サンタ・アニタ・デ・カルデロンの自宅から強制的に連れ出され、暴行を受けた31歳のレオナルド・ダニエル・アリアガ・ゴンサレスの拘束が記録された。目撃者によると、アリアガは赤ちゃんがいる自宅で催涙ガスが直撃していることを警察に訴えていたという。

特に深刻な事件として、サン・ミゲル・デル・コムンでは、停戦を求め両手を挙げていたコミュニティメンバーのロベルト・パラシオス・サムエサ(Roberto Palacios Samuesa)が眼に銃撃を受け重傷を負った。被害者が治療を受けていた病院の外には警察官が配置されていたとの目撃証言もある。

 

集会の権利と公共空間の侵害

ノボア政権は平和的抗議の権利を無効化している。エル・アルボリト公園(Parque El Arbolito)では、社会団体とラウリタス宣教師修道女会(Hermanas Lauritas)が呼びかけた、インバブラで亡くなった人々の追悼と平和のためのミサを警察が阻止した。報告書によれば、警察は「上司の命令」として、少なくとも5時間にわたり警察と軍隊が公園に留まり、礼拝者の集会を妨害したという。

 

国家暴力と免責

同報告書は、2025年全国ストライキに直面して「犯罪化のパターン、過剰な武力行使、社会的抗議の権利に対する制限が明らかになっている」と厳しく非難している。エクアドル人権組織連合は、「日が経つにつれて、抗議者だけでなく非抗議者やコミュニティに対する国家暴力がエスカレートしている」と警告した。

さらに、ノボア政権が「国際人道法の概念を歪めて体系的暴力を正当化している」と糾弾し、「人道的かつ生産的」という名目で派遣された車両は、「コミュニティに催涙ガスを浴びせ、負傷者や拘束者を生み、祖先の土地の完全性を侵害している」と批判している。同組織は「致死的武力の違法使用が増加している」と警告し、エクアドルでの動員が始まってほぼ1ヶ月経過した現在、その死傷者数はもはや例外的で正当化される致死的武力の行使ではないことを示していると指摘した。

また報告書の中で、エクアドル人権団体連合は監視機関の不作為を厳しく批判した。「武力の行使や行政の行動に対する制度的な監視は存在しない。国家の監督・規制機関は全国ストライキ期間中の政府の行動を調査・監督する義務を怠っている。人権機関の完全性は無効である。」「この不作為は制度の独立性を損ない、人権侵害に対する免責を助長している」と強く警告している。

 

#FueraReimberg

CONAIEは、#FueraReimberg キャンペーンを通じて、ジョン・レインベルグ内務大臣を主要な責任者として名指しし、「民族絶滅主義者(etnocida)」と断じている。同組織はX(旧Twitter)アカウントで、「エクアドルの全国ストライキ開始以来、国家権力はレインベルグ内務大臣の指示のもと、残虐な行動を取っている」と強調した。CONAIEはまた国家による組織的な暴力を、「弾圧は安全保障ではなく、国家テロである」と厳しく非難した。また、エクアドルの現状に対し、「メディアの沈黙を破り、真実を伝え続ける」ことを目的に、日曜日にソーシャルメディア上で「抵抗の日」を呼びかけた。

 

Facebookで共有された動画では、ノボア政権と内務大臣レインベルグによる弾圧の規模が強調された。CONAIEはレイムベルグの発言一つひとつが「さらなる弾圧、負傷、そして尊厳をもって抗議する民衆への暴力を正当化している」と主張した。「共同体全体が攻撃される中で、あなたは正義と権利を求めるエクアドル国民に対し『敵』と言うレッテル貼りしている」と同組織は表明している。さらに、右派政権であるダニエル・ノボア大統領に対し、大衆動員に対する弾圧を直ちに停止し、市民の要求に応える政治的措置を実施するよう強く求めた。「脅迫も内戦ももうたくさんだ。ダニエル・ノボア政権は銃弾ではなく、政治的解決で応えるべきである」と結んでいる。

この批判は、ダニエル・ノボア大統領の政権下で激化する弾圧の実態を示すものであり、国内外からの注目を集めている。

#DanielNoboa #CONAIE #エクアドル全国ストライキ2025

 

参考資料:

1. Reimberg respondió a varias inquietudes periodísticas. Aseguró, también, que de ahora en adelante, los indígenas serán responsables de lo que ocurra.
2. Impactos de bala, pérdida de ojos y amputaciones: el saldo de los 19 heridos en la represión militar en Otavalo
3. Raphael Banda, abogado: “Las fuerzas de seguridad no aplican procedimientos, sino prácticas de tortura” en el contexto del paro nacional
4. Campaign Targets ‘Ethnocidal’ Minister Reimberg: «Repression is Not Security, It’s State Terrorism»

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