エクアドル:2025年、世界一のパエリアを食べたければキトへ行け

2025年に世界最高のバレンシア風パエリアを味わいたいと思えば、向かうべきはスペイン東部のバレンシア州スエカ(Sueca)ではない。もちろん、バレンシア市(Valencia)でも、バレンシア州(Comunidad Valenciana)でもない。その味に出会うには、大西洋を越え、南米大陸エクアドルへと旅立つ必要がある。

2025年9月14日(日)、スペイン・スエカで開催された第64回「スエカ国際バレンシア風パエリアコンクール(Concurso Internacional de Paella Valenciana de Sueca)」において、「世界最高のパエリア」の称号を手にしたのは、エクアドルの首都キトにあるレストラン、「サボール・アマール・パエージャス(Sabor Amar Paellas)」である。

 

この日、リベラ・バイシャ(Ribera Baixa)地方の州都スエカには、世界五大陸から選ばれた料理人たちが集結した。会場は例年通り「パセオ・デ・ラ・エスタシオン(Paseo de la Estación)」であり、世界各地から集まったトップシェフたちが、伝統的なバレンシア風パエリアの技術と情熱を披露した。

今回の大会には、前回よりも2か国多い14か国からの代表が参加した。その結果、例年以上に国際色豊かな料理の祭典となった。今大会で特に注目されたのは、アフリカ大陸からの初参加である。代表国はモロッコであり、同国はこれまでこのスペイン最古の料理コンクールに出場したことがなかった。これにより、コンクールはついに五大陸すべてからの代表を迎え、真の国際大会として新たな節目を迎えた。参加者たちは、スエカ市が誇る伝統的な方式に則ったレシピを用い、「世界最高のパエリア」の称号をかけて技を競い合った。その頂点に立ったのが、「Sabor Amar Paellas」である。全世界から集まった40組の有力シェフたちの中で、もっとも優れたバレンシア風パエリアを完成させたと評価された。

本年は、コンクールの歴史において初めて、スペイン国内での全国準決勝が開催された。5月25日には、カスティーリャ=ラ・マンチャ州のグアダラハラ市(Guadalajara)で、7月14日にはバレンシア州カステリョン県のグラオ(Grao de Castellón)で開催された。国際部門においても拡大が見られた。メキシコ・ウアマントラ(Huamantla)と日本・大阪(Osaka)の2都市において準決勝が実施され、それぞれの優勝店舗が決勝へと駒を進めた。さらに、地元スエカ市およびその周辺地域からも3店舗が代表に選ばれた。こうして、国内外の予選を勝ち抜いた計40組の出場者が、世界一の称号を目指してスエカの舞台に集結した。

審査は、今年も例年同様、料理界の各分野で実績を持つ著名な審査員団によって行われた。審査の公正性を確保するため、公証人(notario)が立ち会い、その決定に公式な証明を与えた。今回の大会では、スエカ出身の名サッカー選手、アントニオ・プチャデス(Antonio Puchades)の生誕100周年を記念し、追悼の場が設けられた。地元にとって誇りである同氏への敬意が、料理の祭典の中で静かに、しかし確かに示された形である。また、毎年恒例となっている名誉称号「Paellero de Honor(パエジェロ・デ・オノール/名誉パエリア職人)」は、今年は特別な意味を持つものとなった。スペイン各地を襲った暴風雨DANAの被害を受けたすべての人々、特に苦境に立たされながらも日々を支えた飲食業界の関係者たちに敬意を表し、本大会はその労苦と回復への努力に対して、心からのオマージュを捧げることを決定した。

 

2025年大会の受賞結果

🥇 第1位:サボール・アマール・パエージャス(Sabor Amar Paellas/エクアドル)
🥈 第2位:レストラン・レニン・ルエラス・コシーナ(Lenin Ruelas Cocina/メキシコ) – 1,500ユーロ
🥉 第3位:レストラン・カサ・マカリオ(Casa Macario/スペイン・タベルネス・デ・ラ・バルディーニャ) – 1,000ユーロ

 

これに続き、大会主催者は地理的エリアごとの特別賞も発表した。

  • スペイン国内部門最優秀賞:レストラン・ロス・レイェス(Los Reyes/マラガ)

  • バレンシア州内最優秀賞:ラ・リャルガ(La Llarga/バレンシア)

  • スエカ市最優秀賞:ジャルディンズ・ブラウ・マール(Jardins Blau Mar/スエカ)

  • 国際部門最優秀賞:パエージャス・ソカラット(Paellas Socarrat/チリ)

 

スエカにおける大会の意義

スエカ市は、バレンシア風パエリアの世界的な首都とされており、この伝統料理の最も国際的な発祥の地として知られている。スエカはアルブフェラ湖(Albufera)の南側に位置し、毎年この町には栄誉ある冠を目指して多くのレストランが集う。この賞は、受賞した店舗の経済状況を一変させ、永遠に語り継がれる名声をもたらすほどの影響力を持つ。

スエカ市の市長、フリアン・サエス(Julián Sáez)は、本年度の「国際パエリア・バレンシアーナ・コンクール」に対して、例年以上に高まった関心に満足の意を示した。多くの国々から集まった料理人たちが卓越した料理技術を披露し、何よりもバレンシア風パエリアへの愛情と敬意を持って参加していることに深い感謝を述べている。「我々のコンクールは真の美食イベントとしての地位を確立しており、スエカを再び“パエリアの世界首都”として位置づける存在である。今年もこのイベントを成功へと導くために尽力してくれた多くの関係者、スポンサー企業、そしてメディアに心より感謝する。現在の厳しい経済状況下にあっても、スエカ市はこのコンクールの名誉と伝統を守り抜く覚悟である」とサエス市長は述べている。

また、スエカ市の担当議員、テレサ・リベス(Teresa Ribes)氏は、今年の大会が市の財政的制約の影響を受けていることを認めつつ、次のように語った。「本年度のコンクールも、市の厳しい経済状況の影響を免れることはできなかった。しかしながら、多くのスポンサーや協力者の支えにより、我々の大会は何十年にもわたって築き上げてきた評価と信頼を損なうことはない。バレンシア風パエリアの価値と尊厳を世界に示し続けてきたその歴史的意義は、決して軽んじられるべきではない。スエカ市の使命は、このかけがえのない遺産を守り続けることである」。

一方、大会ディレクターのトニー・ランデテ(Tony Landete)も、今大会を支えてきたすべての関係者、特にスポンサーに対して感謝の意を表明した。ランデテは次のように述べている。「今回の大会は非常に特別なものであり、史上もっとも国際的な大会である。なぜなら、初めて五大陸すべてから参加者を迎えることができたからだ。さらに今年は、スペイン国内で初めて全国予選をグアダラハラで開催し、すでに来年に向けた準備も始まっている。また、自治州予選としてカステジョン(Castellón)で2回目の大会を実施した。これに加え、大阪とメキシコでの国際予選も開催され、いずれも大成功を収めた。加えて、バレンシア州の『イノベーション・産業・商業・観光省(Conselleria de Innovación, Industria, Comercio y Turismo)』および『バレンシア県議会(Diputación de Valencia)』の協力も極めて重要であった」。

スエカ市長のフリアン・サエスは、同コンクールについて「単なる料理コンテストではなく、友愛・文化・伝統・味覚の祭典であり、バレンシア風パエリアの真髄を支える稲作農家や料理人たちへの敬意を表するものだ」と語った。さらに、観光担当市議のテレサ・リベスは「スエカはバレンシア風パエリアの発祥地であり、その真正性を守り抜くことは我々の責務である」と述べている。

このコンクールは、64年前から開催されている。ランデテは、「この大会は町にとって非常に大きな意味を持つ」と語り、当初は国内向けのコンクールとして始まったものが、現在では国際的な規模にまで成長したと述べている。「世界最古のパエリアコンクールといっても過言ではない。しかも、米料理やパエリアに関しては、世界最大かつ最も厳格なルールを持つ大会である。それは私の意見ではなく、実際にここに来て見れば分かるはずだ」とも強調した。

このイベントはスエカ市役所が主催しており、市が公募で選定した企業に対して運営と管理を委託している。ランデテとそのチームが実務の指揮を担っているという。さらに、「このイベントは1年を通じて取り組む仕事である」とし、すでに次回大会の準備に入っていることも明かした。「私たちは継続的に大会運営を行っている。参加者を町に招き、宿泊の手配なども我々の責任だ」と詳細を語った。加えて、このイベントが地域にもたらす影響についても触れ、「大会を見に多くの人々が訪れるため、町だけでなく周辺地域全体、さらにはスペイン国外にも非常に大きなインパクトを与えている」と述べている。

 

スペイン国外のレストランの受賞は珍しいのか

エクアドルのレストラン「Sabor Amar Paellas」が、スペイン最古の美食コンクールに優勝し、歴史にその名を刻んだ。受賞者はシェフのトマス・アングロ・サラス(Tomás Angulo Salas)と、その助手であり妻でもあるカリーナ・イトゥラルデ(Karina Iturralde)である。優勝チームには賞金2,500ユーロ、記念のペルガミーノ(羊皮紙)、そして今回から新設された「世界最高のパエリア」の称号を象徴する銀のメダルが贈られた。授与式はスエカ市長フリアン・サエス(Julián Sáez)の手によって行われた。

受賞後、エクアドルのシェフ夫妻は「非常に感激しており、感謝の気持ちでいっぱいだ。この賞はまさに夢の実現である」と語った。審査員団は、「バレンシア米原産地呼称統制委員会(D.O. Arroz de Valencia)」の代表、過去の受賞シェフ、国際的な美食アドバイザーらで構成されていた。

一見すると、エクアドルのレストランがこのような賞を受賞するのは異例であるように思える。しかし、ヨーロッパ以外のレストランがスエカ国際バレンシア風パエリアコンクールで優勝した例は過去にも存在する。

1996年および1998年には、キューバのハバナにある「オスタル・バレンシア(Hostal Valencia)」が2度にわたり優勝を果たしている。また、2012年には米国ラスベガスの「バ・バ・リーバ(Ba-Ba-Reeba)」が優勝を飾った。さらに近年では、2022年にメキシコ・サカテカス州グアダルーペにある「レストラン・クロクス(Restaurante Crocus)」が世界一に輝いている。

 

このように、スエカで開催される本大会は、バレンシア風パエリアという地元の伝統料理を真にグローバルな料理文化へと昇華させる舞台である。

バレンシア風パエリアは国境を越え、世界中の厨房にその魂を根付かせている。受賞のたびに伝統の味と技術が新たな土地へと伝わり、グローバルな料理文化としての地位をますます確固たるものとしているのである。

#Gastronomy 

 

Sabor Amar Paellas

住所:Av. Francisco de Orellana 9, Quito 170517, Ecuador 
電話:+593 96 325 1098wa.me/593963251098
ホームページ:https://www.facebook.com/saboramarpaellas/

 

参考資料:

1. El restaurante Sabor Amar Paellas de Ecuador gana el título de la mejor paella del mundo
2. La mejor paella valenciana del mundo la cocina un restaurante de Ecuador
3.
Cocineros de los cinco continentes competirán por preparar la mejor paella del mundo en Sueca
4. Concurso Internacional de Paella Valenciana de Sueca

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