エクアドル:ボロンは『朝食のワールドカップ』の準決勝に勝ち進むことができたのか

(Photo:Guayaquil es mi destino)

イバイ・リャノス(Ibai Llanos)が主催する『朝食のワールドカップ(El Mundial de los Desayunos)』でエクアドルのボロン(bolón)は大きな話題となっている。エクアドル全土は2025年9月1日(月)を待ち望んでいた。その日の朝、ボロンとペルーのチチャロン入りのパン(pan con chicharrón)との対戦結果が公表されることになっていたからだ。この対戦結果に対する期待は最高潮に達していた。

エクアドルがペルーと戦った準々決勝は、バーチャルコンペティションではほとんど見られないほどの熱狂を引き起こした。実際、SNSでの1,500万回以上のインタラクション、著名人によるキャンペーン、そして大量のミームが溢れ、この料理対決は本物のデジタルクラシックとなった。この戦いは単なる料理の枠を超え、両国の国民的誇りを強調し、国境を越えた意味を持つようになっていた。

 

『朝食のワールドカップ』におけるボロンへの支援と熱狂

この競争は、両国で本物の国民的支援の波を引き起こした。ペルーでは、リマ市長のラファエル・ロペス・アリアガ(Rafael López Aliaga)がチチャロンパンを味わいながらキャンペーンに参加し、エクアドルではダニエル・ノボア(Daniel Noboa)大統領がボロン・ヴェルデを楽しんでいる姿がキャッチされ、グアヤキルのアキレス・アルバレス(Aquiles Álvarez)市長はエクアドルへの投票を呼びかけた。

機関もこのムーブメントに加わった。エクアドル観光省(Ministerio de Turismo Ecuador)は、自国の代表的な料理を紹介するアニメーション動画を公開し、投票を呼びかけた。一方、ペルーでは生産省(Ministerio de la Producción, Produce)が「ペルーは世界で最高の朝食を生産する」というキャンペーンを推進した。

インフルエンサーやアーティストも参加した。マリア・ピア・コペッロ(María Pía Copello)はリマを巡り、支持を呼びかける看板を掲げ、グルポ5(Grupo 5)はクリオージョのサンドイッチに「モトールとモティーボ」という名前をつけた。インフルエンサーでエクアドルの元成人映画女優のサシャ・グレイ(Sasha Grey)もボロンを支持し、ペルーではモデルのルシアナ・フステル(Luciana Fuster)は直接メッセージを送った。「イバイ、もう諦めて!ペルー料理には競争相手がいないよ」と述べている。エクアドルのスポーツ番組では、司会者がボロン・ヴェルデとエンセボジャードをユーモアを交えて支持しつつも、ペルーの勝利の可能性については不信感を露わにした。「エクアドルの皆さん、ボロン・ヴェルデとエンセボジャードがチチャロンパンとタマルに負けるなんてあり得ない! こんなことで脱落するなんてあり得ない!」と語り、視聴者に投票を呼びかけた。エクアドルの企業もまたボロンが勝利した場合のプロモーションを発表し、その勝利を祝う準備を整えた。それらの行動は主催者を驚かせた。

 

エクアドルとペルーは何で戦っているのか

ペルー

揚げたサツマイモとチチャロン入りパン(pan con chicharrón con camote frito)とタマル・クリオジョ(tamal criollo)

このペルーの伝統料理は、植民地時代にさかのぼる歴史を持っている。豚肉の揚げ物は16世紀からアンデス地方や沿岸部で一般的になり、時間をかけて手作りのパンと揚げカモテ(サツマイモ)と融合し、現在、リマの週末の朝食で最も愛されるサンドイッチとなった。タマルは先住民時代に起源を持ち、スペインの技術と融合して現代の料理となり、伝統と混合料理のシンボルとなっている。

 

エクアドル

ボロン・ヴェルデ(bolón verde)とエンセボジャード(encebollado)

ボロン・ヴェルデは、マナビ地方やグアヤキル地方の沿岸部の伝統から生まれ、プラタノ(バナナ)は先コロンブス時代から中心的な食材として使用されてきた。これをつぶしてチチャロン(豚の皮)やチーズと混ぜることで、人気の朝食として親しまれるようになった。一方、エンセボジャードは、新鮮な魚、ユカ(キャッサバ)、そして酢漬けのタマネギをベースにした料理である。これらの料理は文化的なシンボルとされ、朝食だけでなく、家族の集まりやお祝い事、週末にもよく食べられる。

 

準決勝に勝ち残ったチームとは

エクアドルやペルーの結果発表は後に回すとして、それらの国が準決勝や決勝で対決する可能性のあるライバル国をみてみる。以下準々決勝の結果はTikTok、Instagram、YouTubeの総数である。

スペイン vs チリ は チリが2,97百万票で進出決定

スペイン:ハモン(イベリコ豚のハム)、トマト、オリーブオイルを乗せたトースト
チリはマラケタ(marraqueta)にマラケータにアボカド、卵、ハムを挟んだもの

 

ベネズエラ vs コロンビア は ベネズエラが2,7百万票で進出決定

ベネズエラ:レイナ・ペピアーダ風のアレパとエンパナーダ
コロンビア:チーズ入りコーンのアレパ

 

アルゼンチン vs ボリビア はボリビアが1,8百万票で進出決定

アルゼンチン:メディアルナ(medialuna)にドゥルセ・デ・レチェ(dulce de leche)を添えた菓子パン、ファクトゥラ(factura)とマテやコーヒー
ボリビア:サルテニャ(salteña)とアピ(api)とパステル(pastel)

 

桁違いの熱狂ぶりとその結果

エクアドル vs. ペルーの動画は、TikTokでの記録を更新した。イバイ・リャノスのアカウントでも2番目に視聴された動画となった。全ての準々決勝の中で、この対決が最も多くのインタラクションを生み出した。イバイ・リャノス自身もTikTokでペルーとエクアドルの対決について、「ペルーとエクアドルの朝食のワールドカップでの戦いは、これまでに見たことがない。これはもう別次元の狂気だ。政府まで巻き込まれてしまった。エクアドルの大統領が投票を呼びかけ、リマやグアヤキルの市長も登場した…本当に驚いた」とコメントした。

 

最終集計

ペルー 8,161,000票 / エクアドル 7,858,000票

大貢献するもエクアドルはペルーに30万票の差で敗戦した。ペルーは全てのプラットフォームでエクアドルに僅差で勝利した。詳細は以下の通りである:

TikTok: チチャロン入りパンとタマール・クリオージョは4.9百万票を獲得、ボロン・ヴェルデとエンセボジャードは4.7百万票を集めた。
Instagram: ペルーは3百万票でエクアドルの2.9百万票を上回った。
YouTube Shorts: 投票は接戦となり、ペルーは261,000「いいね」を記録、エクアドルはその3,000票差で258,000「いいね」を獲得した。

残念ながらエクアドルの貢献は勝利には結び付かなかった。しかし、イバイはエクアドルが達成した投票数を「クレイジーだ」と評価した。ペルーとの対決の前にエクアドルがボロンのみでグアテマラの朝食と戦った時には、1.9百万票のみの獲得だったが、今回大会でその数は約4倍になっていた。ユーザーからの提案を受けて、ボロンにはエンセボジャード、目玉焼き、肉のジュースが追加され、興奮は倍増された。ペルーのチチャロン入りパンとタマルもメキシコの朝食と戦った時には2.5百万票しか獲得していなかった(メキシコは1.2百万票)。ペルーもまたその得票数を3倍以上に増やしたこととなる。イバイ・リャノスは「この結果はもはや訳がわからない、手に負えなくなった」と語り、さらに、「ペルーの人たちはパッションもすごい、チチャロン入りパンを守るために『狂いだしている』」と冗談を言った。

 

 

ミームと歴史的なライバル関係

デジタル上の対立を超えて、ペルーとエクアドルを代表する料理は、それぞれの国の本物の食文化の象徴である。これらは単なる朝食の定番ではなく、文化的および感情的な背景が深く根付いた料理であり、日常生活や家族の集まりの中で重要な役割を果たしている。各一口に、アイデンティティ、伝統、そして国民的誇りが凝縮されている。

エクアドルとペルーの対決はテーブルの上だけでなく、SNSでも熱く繰り広げられた。TikTokやX(旧Twitter)では、この戦いを歴史的な瞬間と比較した数千のミームが流れた。その中でも、ユーザーたちは「セネパ2.0」と名付け、この戦いをセネパ戦争(Guerra del Cenepa)になぞらえてユーモアを交えて取り上げた。

 

イバイ・リャノスは、代表的なイベント「ラ・ベラダ・デル・アニョ(La Velada del Año)」で知られる人物だが、この「朝食のワールドカップ」も大きな話題となり、投票数の集計が進んだ後、ペルーがエクアドルを僅差で破ったことが発表された。「朝食のワールドカップ」の戦いは、2025年8月18日に始まり、8月27日に16強の戦いが終了した。その後、準々決勝の投票が開始され、複数のイニシアチブによって投票が盛り上がり、イバイ・リャノス自身も驚く結果となった。

「朝食ワールドカップ」には、以下の16カ国がエントリーしていた:

  • アルゼンチン vs イギリス

  • スペイン vs フランス

  • アメリカ合衆国 vs ボリビア

  • 日本 vs チリ

  • エクアドル vs グアテマラ

  • ペルー vs メキシコ

  • コロンビア vs コスタリカ

  • ベネズエラ vs ドミニカ共和国

なお、上述の通り本大会には日本の伝統的な朝食──すなわち、味噌汁、白ごはん、焼き鮭、海苔、そして卵焼き(たまごやき)──も参加していた。しかしチリのマラケタにアボカド(現地で「パルタ」と呼ばれる)をのせた朝食に破れている。

こうして準決勝は、ボリビア vs. ベネズエラ、チリ vs. ペルーとなった。イバイは全ての国々の参加を称賛し、この大会が多くの料理と文化を発見する機会となったことを強調した。

#Gastronomy #朝食のワールドカップ

 

参考資料:

1. ¿Pasó o no pasó el bolón a las semifinales de ‘El Mundial de los Desayunos’ de Ibai Llanos?
2. Minuto a minuto del Mundial de Desayunos de Ibai Llanos: así quedaron las votaciones de Perú vs Ecuador
3. Perú vence a Ecuador en el Mundial de desayunos de Ibai Llanos


 

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