コロンビア:最高裁検事総長の一刻も早い選出を世界は求めている

最高裁判所本会議が2月8日午前9時に開かれ、新検事総長の投票が再度始まった。昨年12月に始まった新検事総長選びは2週間前に加え5回の投票が行われてきた。しかし候補者が誰であろうと、常に空票があり、未だ決まらない新検事総長選出には至っていない。過去の投票においてはグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)が提出した候補者リストのうち、フランシスコ・バルボサの後任に最も近いのはアメリア・ペレス・パラ(Amelia Pérez Parra)である。しかし9人の判事の承認を得ることに成功したものの、14票の空票が彼女を検事総長から遠ざけている。

2月8日に行われた投票においても新司法長官の選出に必要な最低得票数16票には、どの候補者も達しなかった。これについて最高裁判所長官のへルソン・チャベラ・カストロ(Gerson Chaverra Castro)判事は、「私たちは通常の状態で会合を開き、投票ラウンドを進め、2ラウンドを行ったが、最終的な結果は、今のところ、どの候補者も新司法長官に選出されることを宣言するのに必要な票を得られなかった」と述べている。2回目の投票では、空票が当選者となり、アメリア・ペレス・パラ候補、ルス・アドリアナ・カマルゴ・ガルソン(Luz Adriana Camargo Garzón)候補と続き、アンへラ・マリア・ブイトラゴ(Ángela María Buitrago)候補は0票だった。次回投票は2月22日に予定ではある。しかし、各々の都合により確実に同日選挙が行われる保証はいまのところはない。

 

2月12日のバルボサの任期満了を前に、女性検事の選任を求めるデモが各地で行われている。しかし上述の通り未だ何人かの判事が再度の白紙投票を投じており、選出されていない状態だ。2月8日には政府支持者の一団が裁判所の所在地である司法宮殿への立ち入りを封鎖、新検事の選出を求める労働組合による街頭抗議デモも行われた。しかしこの状況は変わっていない。いつまで経ってもどの候補者にも勝てる雰囲気はないとさえ噂されている。2月8日の封鎖に対しヘルソン・チャベラ裁判所長は、「暴力的で違法な封鎖」で包囲されたと非難し、独立選挙に必要な保障を国家政府に要求した。これに対し大統領は「私は、予防的に司法宮殿に配置されるべきセキュリティ・プロトコルに不備があったことを認識しており、ナリーニョ宮殿からそれを修正した」と認めた。バルボサの指揮下にある組織が大統領を罷免するよう圧力をかけていると糾弾し、彼の支持者に街頭に出るよう促したことから、本件については国内で特別な関心を呼んでいる。

 

2月13日火曜日の朝、最高裁判所長官であるヘルソン・チャベラ・カストロ判事は、2月8日に司法宮殿で起こった出来事についてメディアに対し語った。彼は事件を「超越した深刻なもの」であり、「最高裁判所と判事たちに対する侵略と暴力であることは明らかだ」と強調した。木曜日裁判所が「包囲」され、その入り口が「封鎖」されたため、裁判所内にいる判事たちの自由な移動が妨げられたと彼は説明するとともに、新たな暴力行為があれば選挙を延期するというホセ・フェルナンド・レイエス・クアルタス(José Fernando Reyes Cuartas)憲法裁判所長官からのメッセージに直面し、チャベラ・カストロ判事は、「裁判所は自律的かつ主権的な機関であり、その時々の状況を分析するのは最高裁判所であり、その分析に基づいて最高裁判所は対応する決定を下す」と述べている。「警察長官のサラマンカ(Salamanca)将軍が最高裁の敷地内に入ることができたからといって、封鎖がなかった、裁判所が包囲されていなかったということにはならない。同裁判所の判事4人が建物から出ようとしたが、裁判所の出入り口が物理的、物質的に封鎖されていたため、戻らざるを得なかった」とチャベラは繰り返し述べるとともに、2月22日に行われる検事総長の選出プロセスの続きに関連して、最高裁判所長官は、「私たちがコミュニケで述べたように、穏やかで平和で調和のとれた形で本会議を開催できるよう、条件が整うことを期待している。木曜日のコミュニケでもそう呼びかけたが、裁判官たちが自治と独立をもって職務を遂行できるような条件を整えるよう政府に求めている」と強調した。12日月曜日には当局や警察との会合で懸念が示されたとことを明かし、2月22日に本会議場が通常の状態で開催できるよう、必要な措置の採択を要求するとした。

 

検事総長の空席を一時的に埋めることを目的に、2月13日から最高裁判所が新検察庁長を選出するまでの間、大統領に対する率直な批判者であったバルボサの右腕だった副検事のマルサ・マンセラ(Martha Mancera)が担当検事となる。これはコロンビアの法律には、一時的に検事総長が不在の場合、その代わりを務めるのは副検事であること、検事の再選は認められていないことが記されていることによる。

マンセラ副検事は声明で「司法の役人としての職務に忠実であるため、この職務を引き受けますが、捜査・検察機関の指揮を長期にわたって執ることは、最適な進展のためには望ましくないと認識している」と述べている。地元メディアから、麻薬や武器密売につながる元国家高官を庇おうとした疑惑で告発され、疑問視されているマンセラはこれを否定し、彼女に対する中傷キャンペーンだと述べている。

グスタボ・ペトロ大統領は、一時的であるとはいえ検事総長にマンセラが就任にすることについてブカラマンガにあるサンタンデール産業大学(Universidad Industrial de Santander:UIS)のルイス・A・カルボ講堂で語っている。マンセラを「出自の怪しい人物」と呼称するとともに、組織犯罪とつながっていると疑われている評判の悪い指導者たちをマンセラが擁護していることについて政府は同意していないことを示すとともに、早期検事総長の選出について語っている。大統領はまた「野党よりのマスコミは、われわれが最高裁に圧力をかけていると言っているが、われわれが圧力をかけているのは、良識が現れ、コロンビアの主要な捜査機関が国内最大の犯罪勢力の手に渡るのを阻止することだ。 こんなコロンビアがあるだろうか」と語った。大統領は、検察庁の候補者の人選についても言及し、その人選は彼の党を含む政治権力から独立していると述べた。コロンビアの不処罰をなくすために、まともな女性たちの候補者として出すという単純な事実が、このような政治的な地震をもたらす可能性があること、まともさが革命的になったとき、コロンビアの政治と国家司法制度の一部がどのように劣化するのか、彼女たちは考えている」と述べた。

 

国連人権事務所による要請

ジュリエット・デ・リベロ(Juliette de Rivero)が代表を務める国連人権事務所は、グスタボ・ペトロ大統領から送られた候補者リストに基づき、コロンビアの各機関に対し、新検察官の選出プロセスを完了させるよう呼びかけている。コロンビアの制度的不安定化に関するさまざまな疑惑や見解が飛び交うなか、国連は検事総長の任命プロセスを監視してきた。その中で、国連事務所は、「グスタボ・ペトロ大統領が提案した候補者の中に、ジェンダーに焦点を当てた人物が含まれている」ことを歓迎している。国連によれば「3人の候補者はこの重要な役職に必要な資質は満たしている」。そのため一刻も早く透明性、公開性、無差別、情報へのアクセス、訓練、実力、不干渉という基準に基づき人選をするよう求めている。なぜなら、「この組織の独立性、自律性、タイムリーな移行を確保し、司法の弱体化を防ぐ」ことが必要だからだ。国連はグスタボ・ペトロ大統領に対し、裁判所がいかなる妨害も受けずに新検事の選出を完了できるよう、保証を提供することも求めている。

大統領は国連からの要請に対し自身のXアカウントで「国連人権理事会の代表は、新しい検察官の選出を求めている。真の主権者はもはやコロンビアの人々だけでなく、今や世界なのだ」「憲法と良識に従う必要がある」と述べた。

 

 

米州人権委員会による要請

米州人権委員会(Inter-American Commission on Human Rights:IACHR)もまたコロンビアの新司法長官の選出について注視している。2月13日に出した声明では、現職が任命されなかった場合、コロンビアの司法制度が弱体化する可能性があるとしている。最高裁判所(Corte Suprema Justicia:CSJ)の公式スケジュールによると、検事総長の選挙は2023年12月7日に終了する予定であった。これは、共和国大統領府が8月2日、同職に適任と認められた3人の候補者の候補者リストを適時に提出したことを受けたものである。しかし、定数の不足と、それに続く判事間の政治的合意の欠如により、前司法長官の任期が終了した2024年2月12日をもって、同機関は暫定的な任務の下に置かれることになった。

この文脈で、2月8日、全国で71の社会的動員が記録された。ボゴタとメデジンでは一時的な無秩序なものがあったが、それ以外は平和的な動員だった。司法宮殿周辺でのデモに関して国は、司法宮殿の判事や職員が身体的暴行を受けたことはなく、国家警察が警備を提供し、異常事態が発生することなく、施設からの職員の退出を促したと報告した。一方表現の自由特別報告者事務所は、ジャーナリストに対する襲撃事件の報告を受けた。IACHRは、この抗議行動について、市民権のほぼ平和的な行使とみなすものから、包囲の一形態であり司法の独立に対する脅威であるとするものまで、さまざまな公式見解を記録した。

IACHRは、刑事訴追を独占する検事総長が、不処罰との闘い、司法へのアクセス、コロンビアの民主主義と法の支配の維持において基本的な役割を果たしていることを強調している。しかし現職の不在と暫定的な人物の任命は、その独立性と自律性に影響を与える可能性があるとも述べている。国際人権基準および米州人権基準によれば、選考プロセスは、平等、無差別、訓練、能力という基準を確保した上で、透明性を保ち、情報へのアクセスを確保しながら実施されなければならない。さらに、このプロセスはいかなる妨害、嫌がらせ、不当な圧力からも解放されなければならない。IACHRは最高裁判所に対し、憲法上の義務を遵守し、国家司法長官室の長の選考プロセスをできるだけ早く完了するよう促している。また、行政府に対しても、このプロセスが妨害されることなく完了するための条件を保証するよう求めるとともに、国家のあらゆるレベルに対し、その機能行使においてコロンビアの民主的機関を優先するよう求めている。

 

参考資料:

1. No hubo humo blanco en la elección de fiscal general de la Nación
2. Corte Suprema debería elegir este jueves fiscala general en medio de marchas: así fue el resultado de la última votación
3. Colombia: Corte Suprema de Justicia debe culminar la selección de titular de la Fiscalía General de la Nación, sin interferencias
4. ¿Podría aplazarse la elección de Fiscal? Esto dijo el presidente de la Corte Suprema
5. ‘De dudosa reputación’: Gustavo Petro se despachó contra elección de fiscal encargada

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