エクアドル:大統領がノボアになっても変わらない、民意軽視の姿勢

(Caricatura/ @vilmavargasva /X)

エクアドル大統領ダニエル・ノボア・アジン(Daniel Noboa Azín)は、2023年8月20日の国民投票で決着のついたヤスニ公園における石油採掘中止決定を軽視し、石油採掘を延長しようとしている。自身は意気揚々と採掘中止へ票を投じたとメディアを通じて報告するも結局大統領選における票稼ぎであったと疑われても仕方がない。

ノボアが言うに石油採掘を続けたい背景は財政赤字の削減と、麻薬密売に関連するグループとの「内部武力紛争」のための資金源の確保だ。しかしこの国の財政赤字は今に始まったことでもなく、また、市民社会は昔から政府に対し財政源確保にあたっては大規模企業に対する免税の廃止などを提案している。このような提案に歴代大統領は耳を貸すことがなく人権侵害を冒してまで天然資源からの搾取に積極的で、また、一般市民が負担する付加価値税(VAT)などの増税提案をおしすすめている。ノボアの場合、例えばVATを12%から15%に引き上げることが当面の目標だ。そしてヤスニ国立公園、つまりアマゾン地域の主要油田のひとつである「イシュピンゴ、タンボコチャ、ティプティニ」ブロック(ITT-43)の閉鎖期限を1年延期することで赤字を補填しようとしている。

 
しかし、2023年8月に行われた国民投票では、生物多様性の高いヤスニ国立公園での原油採掘を中止することにエクアドル国民の60%以上が賛成していた。

新政府によるブロック43-ITTの閉鎖延期提案に対してエクアドル先住民族連合(CONAIE)のレオニダス・イサ(Leonidas Iza)代表と環境保護団体ヤスニドス(YASunidos)、人権擁護同盟、およびその他の志を同じくするグループは1月25日、政府がモラトリアムを実施した場合、憲法裁判所と米州人権委員会に対し訴えることになるだろうと述べた。イサは国民投票の結果公布から1年間という期限を石油ブロックの施設解体に与えていることを述べている。イサは「ノボア政権は、ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)、レニン・モレノ(Lenín Moreno)……の政権の流れを引き継いでいる。彼はへこへこし、国際通貨基金の押し付けを受け入れている」と述べ、資金源のために大企業に対する免税措置を廃止すべきだと主張した。

10年にわたる法廷闘争の末、2023年の住民投票を実行させたヤスニドスのスポークスマン、ペドロ・ベルメオ(Pedro Bermeo)は2023年12月、憲法裁判所に対し、国民投票で承認された内容をフォローアップし、公営企業ペトロエクアドル(Petroecuador)に対し、操業閉鎖計画を引き渡すよう要請すること、国営企業に付与された環境ライセンスと許可を無効にするよう要請している。

彼は「ダニエル・ノボア大統領、我々は、民意を尊重するか否かはあなた方が決めることではないことを再認識すべきである。判決を尊重しない場合、あるいはそれ以上に民意を尊重しない場合は、行政、民事、刑事の責任を負うことになる。もし民意を尊重しないのであれば、憲法裁判所は大統領を罷免すべきであり、その後、我々は適切な措置をとる」と述べている。彼も財源を得るための選択肢のひとつは、税金を徴収し、大企業への支払いを免除しないことだと考えている。

 

フェミニスト団体チョラス・バリエンテス(Cholas Valientes)のメンバーであるミカエラ・カマチョ(Micaela Camacho)もまた、ノボア政権が一方では付加価値税の値上げやヤスニ公園での石油開発を提案し、他方では大企業家への数百万ドルの税金債務を免除するという矛盾を指摘している。

活動家たちが何度か介入した後、イサは発言し、ダニエル・ノボアに対する苛立ちを露わにし、組織犯罪との内部武力紛争におけるアメリカの軍事協力のために、世界列強に「頭を下げた」ことにもまた非難を加えるとともに、大統領に対し「国に嘘をつくべきではない。選挙への参加が民主主義のすべてではない。この20年間、意見を発するために選挙に勝たなければならないなどと言ってはいけない。あなたは反民主主義的で、絶対的な権威主義者だ。民衆セクターの団結が求められている。

というのも、ソーシャルネットワークやメディアに身を捧げ、この国で闘う私たちを侮辱し、彷徨うことに時間を費やすだけの経済・政治クラスが存在するからだ。彼らは社会に貢献していない。国民、農民、米生産者、農民は、エクアドル人の食糧を維持するために毎日働いている」と述べた。イサはノボアに対し、CONAIEは国民的ストライキも対話も呼びかけてなどいないことを明らかにしている。そもそも大統領の今回の対応は対話の域にも達していない。ダニエル・ノボアに対して言えることは「民主主義者は民意を尊重し、日和見主義者は民意を利用して自分の尻馬に乗る。エクアドル国民の60パーセントは、絶対的な良心を持ってヤスニに投票した。その60%に乗っかって大統領に当選し、今さらモラトリアムプロセスを実施するなどと言うとは信じられない。そんな身勝手は法秩序にも憲法にも存在しない」と忠告した。また、経済が立ち行かないのは「ソーシャルネットワークやメディアに身を捧げ、この国で闘う私たちを侮辱し、彷徨うことに時間を費やすだけの経済・政治階級が存在するからだ。彼らは社会に貢献していない。国民、農民、米生産者、農民、私たちはエクアドル国民を養うために毎日働いている」と続けた。

 

ヤスニでの石油生産終了に向けた有権者の決定を延期することは活動家以外からも認められないとの意が示されている。法律の専門家はこの議論は議論の余地がないとしている。「投票を無視することはできないし、遅らせることもできない」と述べるのは憲法学者のフアン・ビダル(Juan Vidal)で、「エクアドルの憲法は、協議における直接民主制による市民参加の権利を保障しており、国民の決定を覆すことはできない。大統領としての支持を得たとしても、この問題を議会で進めることはできない。事件は解決している」と述べた。

そもそも国民投票にあたって憲法裁判所は、国民が中止との判断を下すのであれば、石油採掘に関連するすべての活動を段階的かつ秩序正しく撤退とともに、国家による石油採掘を継続するための新たな契約関係を開始するためのいかなる行動もとることができないとする投票に関する書面を承認している。

アスアイ弁護士会でクレーバーとは無関係なルベン・カジェ(Rubén Calle)会長もビダルに同意し「国民投票は尊重されなければならない。もし必要であれば、憲法裁判所が介入し、大統領と議会にこれ以上進めないように言うだろう」と述べている。

 

クレベル・カジェは、国民投票の結果が遅れたり無視されたりすることについて「深刻な心配はしていない」と言う。「憲法を理解している人たちによれば、議会とノボアの計画はうまくいかないだろう。我々は戦う準備はできているが、その必要があるかどうかは疑問だ」と述べた。ヤスニドスによれば、国民投票は2014年に有権者に提示されるべきだった。しかしラファエル・コレア(Rafael Correa)前大統領の政府による「詐欺的で非民主的な」戦術によって中止されたものである。「大統領候補として国民投票を支持したダニエル・ノボアは、完全に(国民を)裏切ったことになる」。「ラファエル・コレアやギジェルモ・ラッソのように、ノボアは非常事態を持ち出して民意を無視しようとしている」と続けた。

 

社会キリスト教徒と市民革命議会のメンバーによって最初に提出された石油掘削延長提案の中には、生産終了の1年または2年の延期、操業終了の国民投票の再投票、または有権者の意思の完全無視がある。市民革命は未だ汚職を犯し逃亡中の元大統領のマリオネット状態であり、その存在がなかったとしても憲法や民意を軽視する傾向にあるとも言っても過言ではない。それは歴史、現代における言説が物語っている。

ブロック43-ITTには、今後20年間で138億米ドルに相当する石油埋蔵量が残っているとされている。政府は、ヤスニ油田の操業維持が認められれば、年間約10億ドルが国家予算に貢献すると見積もられている。

 

参考資料:

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