ラテンアメリカ:イスラエルによるジェノサイドに対する各国対応

(Photo:BTV)

ラテンアメリカでは、イスラエルがガザ地区で行った数百人の子どもを含むパレスチナ人の虐殺に対して、いくつかの国が強く反対を表明した。ボリビアはテルアビブとの国交断絶を決定し、コロンビアとチリは決断を下す前に在イスラエル大使と紛争について協議している。

歴史的に見ればラテンアメリカの左派諸国はパレスチナの大義に同調し、右派諸国はアメリカの路線に従うことが多かった。しかし、本来そうである必要はない。むしろ良いこと、悪いことを自ら判断し世界に発信していくべきである。

ハマス主導の攻撃でラテンアメリカの数カ国から13人の市民が死亡し、少なくとも21人が行方不明となっていることは確かだ。ハマスの民間人を相手にした攻撃、拉致は許されるべきものではない。では、イスラエルはどうか。イスラエルはむしろ長年民間人を自らの領土を獲得するため殺してきた。それはハマスの攻撃とは関係ないところでも行われている。国際法違反し他国の領土への侵攻を行い、意気揚々とその戦略を公言する(詳細はこちら)。

ラテンアメリカの数カ国は、特にジャバリアのパレスチナ難民キャンプへの攻撃以降、この地域で深刻な「国際人道法違反」が起きていると考えている。また、早急な停戦と民間人への攻撃の停止を求めている。

本記事ではガザに対する不釣り合いの攻撃を続けるイスラエル、ハマスに対するボリビアチリコロンビアベネズエラブラジルアルゼンチンベリーズエルサルバドルの反応を伝えるものである。

 

 

ボリビア

ボリビアは、ガザ地区で深刻な犯罪を犯しているとみなすイスラエルとの関係を断絶することを決定した。マリア・ネラ・プラダ(María Nela Prada)大統領府大臣とフレディ・ママニ(Freddy Mamani)外務副大臣は記者会見でこのニュースを確認し、「残酷で非人道的で卑劣な扱い」を非難した。「ガザ地区で行われているパレスチナ人に対する人道に対する罪について言及する。我が国のルイス・アルセ・カタコラ(Luis Arce Catacora)大統領はパレスチナ大使と会談し、パレスチナ人の苦しみに対するボリビア国民との連帯を表明した」とプラダ大統領は述べた。

 

ボリビア政府はまた、「イスラエルは国際法、国連憲章、世界人権宣言、特に国際人道法を尊重していない」と主張した。さらにこの文脈においてパレスチナ側の死者の数から、すでに「ジェノサイド」と言うことが可能であると考えた。アルセは、パレスチナが自決権を行使し、1967年に東エルサレムを首都として設定された国境線の枠内で、「不法な占領のない」領土と「自由で独立した国家を確固たるものにする」ための、決定的な解決策を求めた。

2009年、当時のエボ・モラレス(Evo Morales)大統領(2006-2019年)のボリビア政府は、当時のガザ地区への攻撃を受けてイスラエルとの国交を断絶したが、2020年2月、クーデター政権のジェニン・アニェス(Jeanine Áñez)政権(2019-2020年)は、両国間の国交の再確立と強化に合意した。

ルイス・アルセ内閣は、「何千人もの人々の生命を脅かす深刻な健康危機が進行している」ガザへの人道支援物資の輸送を発表した。ボリビアの国連大使であるディエゴ・パリ・ロドリゲス(Diego Pary Rodríguez)は総会でイスラエルを「生命、民族、国際法、国際人道法を軽視する国家」と見ており、ボリビアは「歴史の正しい側、パレスチナ人の権利の正しい側」に立ちたいと述べた。もともと国交断絶までは述べていなかった。しかしエボ・モラレス前大統領が自国の公式声明に対する独自の反論を発表し、Xに次のように投稿した。彼が述べるのは政府の対応はボリビア国民が求めるものではないということであり、「イスラエルによるパレスチナ領土の不法占拠を常に非難する」というものだった。そしてモモラレスは、シオニスト政府の帝国主義的、植民地主義的行動を非難した。モラレスと覇権争いをしているからか、モラレスのこの言葉を受けてかは不明ではあるものの、現政権は国交断絶という決断を下した。

ガザ地区には、包囲と占領の長い歴史があるが2008年末から2009年初めにかけてイスラエルによって行われた「キャスト・リード作戦(operación plomo fundido)」は22日間続き、1,400人以上のパレスチナ人と13人のイスラエル人が死亡した。2007年以来ガザを支配しているイスラム過激派組織ハマスによる自国領土へのロケット弾発射を阻止する目的とされる攻撃では最も激しい攻撃が行われた。この時ボリビアは初めてイスラエルとの国交断絶を決定し、この行動にはベネズエラも加わった。当時エボ・モラレスが率いていたこの国は、国際社会に対し、何もしなければ「大量虐殺に加担する」ことになると警告した。モラレスは、イスラエルの侵略が「世界平和」を脅かしていると主張し、イスラエルの高官をジェノサイド罪で告発するよう国際刑事裁判所(Corte Penal Internacional:CIJ)に要請すると述べた。当時のイスラエル外交官は、両国は50年以上にわたって良好な関係を築いてきたとして、驚きと「悲しみ」を表明していた。

2014年7月7日の保護的エッジ作戦は2014年8月26日まで続いた。ボリビア大統領はその後、イスラエルを「テロ国家」と呼び、同国は国連憲章や世界人権宣言を尊重していないと主張、イスラエル国籍を持つものに対してボリビアでは入国ビザの分類をグループ1からグループ3に移行した。「リスト3への移行はテロ国家を宣言することを意味する」と当時モラレスは言っている。

「ボリビアの左翼にとっても、先住民にとっても、イスラエルは中東におけるアメリカの権力強化である」。「ボリビアの左翼は、反帝国主義的な言説のおかげで権力を握った。だから、モラレスがイスラエルと決別するのは、パレスチナとの連帯のためだけでなく、自分の基盤を固めるためでもある、とBBCは学者であるアンガス・マクネリ(Angus McNelly)の言葉を用いて伝えている。またアルセがガザ地区を支配するハマスの主要なスポンサーであり同盟国であるイランと今年7月、両国政府は安全保障と防衛分野での二国間協力を拡大する覚書に調印したことについてBBCは言及している。

 

チリ

ジャバリア難民キャンプへの攻撃を受け、チリのガビエル・ボリッチ(Gabiel Boric)大統領は自身のX(Twitter)アカウントでイスラエルの攻撃を非難し、ユニセフが「(ベンヤミン・)ネタニヤフ首相率いるイスラエル国家によって、毎日420人の子どもたちがガザで負傷または殺害されている」と報告したことを想起した。ボリッチは、未成年者は「罪のない民間人(主に女性)と共に主な犠牲者」であり、一部のイスラエル政府関係者が言うような「巻き添え被害」ではないと述べた。また、ガザにおけるテルアビブの「国際人道法に対する容認できない違反行為」について、駐イスラエル大使のホルヘ・カルバハル(Jorge Carvajal)との協議を求めた。チリは、シオニストがガザに対して行った「容認できない人道法違反」を挙げ、「ガザの住民に対する集団処罰は、国際法の基本的な規範を尊重していない」と指摘した。チリはこの地域で最大のパレスチナ人ディアスポラを抱える。それもあり今回の暴力を強く非難すると同時に、パレスチナ人の権利の支持を表明している。ガブリエル・ボリック大統領は声明の中で、ハマスによる10月7日の「残忍な攻撃、殺人、誘拐」とともにイスラエルによる「民間人に対する無差別攻撃」を非難している。

 

コロンビア

コロンビアのグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)大統領は、在イスラエル外交官のマルガリタ・エリアナ・マンジャレス・エレラ(Margarita Eliana Manjarrez Herrera)を呼び出して協議した。イスラエルがパレスチナの人々の虐殺を止めないなら、我々はそこにいることはできない」と大統領は自身のX(Twitter)アカウントで述べた。

 

コロンビア外務省は、イスラエルとハマスの衝突を受け、危機に見舞われているガザ地区のパレスチナ市民に対し援助を行うとともに、中東に向け人道的フライトの指揮を執ることを以前発表している。「コロンビア航空宇宙軍ボーイング737-700は、パレスチナの人々の苦しみを和らげるため、共和国大統領が発表した人道支援物資を積んで、軍輸送航空司令部(Catam)から出発する」と報告していた。外務省によると、同機には駐コロンビア・パレスチナ大使が言及した人道支援物資が積まれている。同時にこの便はイスラエルに立ち寄り、100人ほどの国民をコロンビアに連れ帰る。ドミニカ共和国、ポルトガル、イタリアに技術的事由から寄港した後、エジプト北部のエルアリッシュ空港に到着するコロンビア航空機には、国家災害リスク管理ユニットからの600個の衛生キットと120個のマットレスなど、1トン以上の物資が積まれている。外務省によると、この援助は、ガザ地区におけるイスラエルの軍事的エスカレーションによって深刻な影響を受けているパレスチナ市民に、より尊厳のある生活を提供することを目的としている。エジプトに到着した人道援助物資は、在エジプト・コロンビア大使館を通じて、エジプトの組織に届けられる。この組織は現地に到着したすべての人道援助物資の受け入れ、集約、保管を担当しとおり、アクセス制限の許す限り、ガザ地区に輸送している。

10月19日木曜日にイスラエルのガリ・ダガン(Gali Dagan)駐コロンビア大使、パレスチナのラウフ・アル・マリキ(Raouf Al-Maliki)大使と会談したグスタボ・ペトロ大統領は本人道物資の支援について語るとともに、パレスチナの中心都市ラマッラに大使館を開設することを発表している。

声明でペトロは「私は、2つの独立した自由な国家への道を開く国際和平会議を実現する立場を表明した。イスラエルとパレスチナの子どもたちは、平和のうちに生きなければならないし、生きる権利を持っている」と語り、「我々は、人道支援物資を積んだ飛行機をガザ郊外に派遣し、人道的回廊の開通を待つ。コロンビアはパレスチナのラマッラに大使館を開設する」と付け加えた。

彼は「パレスチナの子供たちが平和に眠る唯一の方法は、イスラエルの子供たちが平和に眠ること」であり、その逆もまた然りだと考え、「それは戦争によって達成されることはなく、国際法と両国民が自由に共存する権利を尊重する和平協定によってのみ達成される」とも述べている。10月頭、ペトロ大統領がイスラエルによるガザ包囲を受けナチスによるユダヤ人迫害と比較し非難したことでコロンビアとイスラエルは緊張状態になった。イスラエルは1990年代から、コロンビアにとってクフィール戦闘機、監視装置、アサルトライフルの主要供給国のひとつであり、ラテンアメリカの麻薬密売人や武装集団との戦いに関与してきた存在ではある。

 

ベネズエラ

ベネズエラ政府は数週間にわたり、イスラエルに対して非常に批判的な姿勢を維持してきた。ベネズエラは、ジャバリアの難民キャンプへの攻撃を非難し、パレスチナ人に対するイスラエルの行動を「ジェノサイド」と表現した。また、イスラエルの「国際人道法の原則の組織的違反とジュネーブ条約の規定の無視」を非難し、「国連安全保障理事会の決議に従い、パレスチナ人の住民の平和、安全、尊厳を可能にする早急な解決策の模索」を要求している。ベネズエラは直接対話と国連安保理決議2334の遵守を通じて、パレスチナ全域での暴力の終結を求めた。ベネズエラは国連に対し、国際平和と合法性の保証者としての役割を果たすよう求めている。

 

ブラジル

ブラジルは、国連安全保障理事会での停戦に関する投票を推し進めた。結局、この措置は国際機関の総会で採決されたが、紛争当事国はいずれもこれに従わなかった。ルラ・ダ・シルヴァ(Lula da Silva)大統領はイスラエルに対し、犯罪の責任を取るよう求めた。「私たちは初めて、死者のほとんどが子どもたちである戦争を目の当たりにしている。「やめてくれ、頼むからやめてくれ」と彼は要求した。また大統領は、イスラエルによるガザ地区への空爆の即時停止を求め、ガザ地区で命を落とした3000人近いパレスチナの子どもたちを深く悼んだ。

 

アルゼンチン

アルゼンチンはこの地域で最大のユダヤ人コミュニティのひとつを抱えている。アルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernández)大統領は、ハマスによるイスラエル人への攻撃を非難し、「世界で暴力は決定的に根絶されなければならない。平和はかつてないほど急務だ」。

選挙戦のさなか、外務省がエジプトおよび国連と交渉したとおり、パレスチナ人を支援するホワイト・ヘルメットをガザに派遣し、人道支援を行うことを選択した。ガザに送られる物資には、医薬品、浄水剤、衣類、ワクチンなどが含まれ、後者は冷蔵保存が可能なものである。しかし政府は、アルゼンチン国民を含むハマスが拘束している人質の解放要求にも積極的に参加している。この点に関して、経済大臣で大統領候補のセルヒオ・マサ(Sergio Massa)は、11月19日の投票で勝利した場合、イスラム組織を「テロリスト」と宣言すると発表した。10月中旬、ブエノスアリエスのアメリカ大使館とイスラエル大使館は電子メールで2件の爆破予告を受けている。

 

ベリーズ

ベリーズは、ハマスとイスラエル間の敵対行為を断罪し、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家を支持し、先祖伝来の故郷を追われたパレスチナ人の帰還の権利を要求しながら、即時解除を求めた。

 

エルサルバドル

イスラエルの強固な同盟国であるエルサルバドルは、イスラエルに対するハマスの攻撃を強く非難したが、イスラエルのガザに対する行動についてはまだコメントしていない。パレスチナ人の祖先を持つサルバドル人として、パレスチナの人々にとって最善のことは、ハマスが完全に消滅することだと確信している…あの野蛮な獣はパレスチナの人々の代表ではない、とした。

 

各国は声明の中で、現在進行中の紛争は「パレスチナの人々が国際法の中で自分たちの歴史的権利を主張する場を見つけることができなかった結果である」と認識した。

パレスチナ問題とされるものはイギリスはもとより、国連加盟国が身勝手なレジームから発生させたものといえる。1947年11月29日、パレスチナに対するイギリスの委任統治が終了する1948年5月にパレスチナを分割するとの国連パレスチナ特別委員会(United Nations Special Committee on Palestine)が作成した計画を支持したことによる。計画はパレスチナ・アラブ人、アラブ諸国、その他の国によって拒否されたにも関わらず進められ、結果パレスチナ問題は深刻化し、イスラエルとの間の中東紛争にまで発展した。

 

参考資料:

1. Latinoamérica y las condenas al genocidio
2. La turbulenta historia diplomática entre Israel y Bolivia, el primer país que rompe relaciones con el gobierno de Netanyahu por los ataques en Gaza
3. Colombia to open embassy in Palestine: President
4. How have Latin American countries responded to the Israel-Hamas war?
5. Petro llamó a consultas a embajadora en Israel por “masacre del pueblo palestino”
6. Presidente Boric llama en consultas a embajador de Chile en Israel
7. Lula llamó al cese inmediato de bombardeos de Israel en Gaza

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