米国:ビッグキャット公安法でテキサス州の夫婦が起訴される

アラモ在住で29歳のラファエル・グティエレス・ガルバン(Rafael Gutierrez-Galvan)とその28歳の妻デヤニラ・ガルザ(Deyanira Garza)はマッカレンの連邦裁判所に出廷した。これはビッグキャット公安法(Big Cat Public Safety Act)を違反したことによる。

アラムダー・S・ハムダーニ(Alamdar S. Hamdani)連邦検事によると、ラファエル・グティエレス・ガルバンは8月24日、地元スポーツ用品店Academy Sports and Outdoorsの駐車場でマーゲイの子を7,500ドルで売っており、また、ガルバンは同じ人物にジャガーの子を9月26日に売ろうとしていた。販売相手は「覆面捜査の立場で行動する」国土安全保障省の特別捜査官である。連邦捜査官がグティエレス・ガルバンに近づくと、彼はスペイン語で「猫を売りに来た」と言った、と刑事告訴状には記されている。

連邦捜査官はグティエレス・ガルバンの住居を監視していた。妻が自宅から取引場所まで現金の入ったケースを持って行こうとした途中、信号無視でアラモ警察官に車を止められた。「交通違反の取り締まり中、ガルザはケースに金があると言った」と訴状は述べている。グティエレス・ガルバンとガルザは、どちらもエキゾチックアニマルの売買、取引、輸送のライセンスを持っていなかった。これは本人たちも認めている。有罪判決を受けた場合、グティエレス・ガルバンとガルザは最高5年の連邦刑務所、最高20,000ドルの罰金に処される可能性がある。

US Department of Justice

 

合衆国魚類野生生物局(United States Fish and Wildlife Service:FWS)と国土安全保障調査部(Homeland Security Investigations:HSI)は、テキサス公園野生生物局、ヒューストン動物園とサンアントニオ動物園の協力を得て、この事件の陣頭指揮を執った。当局は2匹を回収している。

アラムダー・S・ハムダニ連邦検事は、夫妻の事件はビッグキャット公安法に基づいて起こされた最初の事件であることを発表している。この措置は2022年12月に施行され、子猫を含むペットとしての大型猫の輸入、輸出、販売、個人所有が禁止している。なお、夫妻はクモザルも売買もしくは所持していたと訴状は述べている。

 

ビッグキャット公安法(Big Cat Public Safety Act):

ビッグキャット公安法は2022年12月20日に制定され、ペットとしてのビッグキャットの個人所有を廃止し、展示者が子猫を含むビッグキャットに一般人が接触することを禁止した。これにより、特定の種の大型ネコ科動物の商業、繁殖、所有、使用が新たに制限された。個人所有のビッグキャットを合法的に所有し続けるために、同法は個人または団体に対し、同法の他の例外が適用されない限り、制定日以前に所有していたビッグキャットを米国魚類野生生物局(USFWS)に登録することを義務付けた。この登録は施行日から180日後の2023年6月18日までに行わなければならない。

 

ビッグキャット公安法で指定さえている禁止野生動植物種:

– ライオン(Panthera leo)
– トラ(Panthera tigris)
– ヒョウ(Panthera pardus)
– ユキヒョウ(Uncia uncia)
– ウンピョウ(Neofelis nebulosa)
– ジャガー(Panthera onca)
– チーター(Acinonyx jubatus)
– クーガー(Puma concolor)

※クーガーはピューマまたはマウンテンライオンと呼ばれることもある。禁止されている大型ネコ科動物にはヒョウが含まれるが、これは別種ではなく、ヒョウ、クーガー、ジャガーを含む黒色の大型ネコ科動物を指す。

 

法律によって禁止されているのは以下事項(例外が適用されない場合):

– 州際通商または外国通商において、あるいは州際通商または外国通商に実質的に影響を与える方法で、輸入、輸出、輸送、販売、受領、入手、購入すること
– 繁殖または所有

 

ビッグキャット公安法の例外:

– 米国農務省(USDA)のクラスCライセンスに基づき、一般に動物を展示する団体、またはUSDAに登録された連邦施設で動物を展示する団体または施設が、良好な状態でライセンスまたは登録を保持し、例外に関する法律のすべての要件を満たす場合
– 州立大学、州立大学、州立機関、または州公認の獣医
– 禁止されている野生生物種を保護する適格な野生生物保護区であって、例外に関する本法のすべての要件を満たすもの
– この法律の例外に該当する者のもとへ迅速に輸送する目的でのみ、大型ネコ科動物を保管する場合のみ、資格のある輸送業者

 

個人のビッグキャット所有者の例外:

2022年12月20日に施行される前にビッグキャットを所有していた個人または団体は条件をクリアすることで例外規定が適用できる。条件とは2023年6月18日までに所有するビッグキャットをUSFWSに登録することだ。これによりこの法律の下で禁止されているビッグキャットを飼育することができる。

 

違反者:

違反者は民事罰もしくは刑事罰、またはその両方(罰金、禁固刑、またはその両方を含む)の対象となる。さらに、この法律の規定に反して繁殖、所有、輸入、輸出、輸送、販売、受領、取得、購入されたビッグキャットは、差し押さえと没収の対象となる。

US Department of Justice

 

なお、ジャガーは絶滅危惧種に指定されていることから、50年前から絶滅危惧種保護法の下で保護されている。世界動物保護協会によると、ジャガーは野生で17万3千頭ほどしか残っておらず、「絶滅の危機に瀕している」とみなされている。ジャガーは通常、熱帯雨林や湿地帯に生息し、世界の生息数の約半分はブラジルに住んでいるとされている。

国際絶滅危惧猫協会(International Society for Endangered Cats:ISEC)によれば、オセロットに似たマーゲイは「アメリカ大陸に生息する斑猫の中で最も美しく神秘的な猫」のひとつである。国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources:IUCN)のレッドリストでは、マーゲイは「準絶滅危惧種」に分類されている。コスタリカとメキシコでは「絶滅危惧」、アルゼンチンとブラジルでは「脆弱」とされている。

 

 

参考資料:

1. Undercover jaguar cub deal results in Big Cat Act charges
2. Texas couple arrested for jaguar cub deal in first case charged under Big Cat Public Safety Act
3. What You Need to Know About the Big Cat Public Safety Act

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