米国:先住民で環境アクティビストのジェイコブ・ジョンズ、撃たれる

(Photo:@JenStewartRI/ Twitter)

9月28日木曜日、ニューメキシコ州北部でスペインの征服者フアン・デ・オニャテ(Juan de Oñate)像の設置に対して抗議していたデモに対し銃が向けられた。郡は治安上の懸念から前日に像の設置を延期していたが、それでも人々は集まった。リオ・アリバ(Rio Arriba)郡保安官当局が犯人として拘束したのはライアン・マルティネス(Ryan Martinez)容疑者(23歳)、熱狂的なトランプ支持者である。デモ参加者被害者は胴体上部を撃たれ、地元の病院に運ばれた。

 

ライアン・マルティネスは、抗議者たちとの口論で冒涜的な言葉を使い、警察官にも立ち去るように言われていた。野次馬が撮影したビデオには、この男が背の低い壁を飛び越え、群衆のほうへ向かっていく様子が映っていた。自由になった犯人は腰のベルトから拳銃を取り出し、集団に向かって一発撃った。悲鳴が上がるとともに、「助けてくれ!助けてくれ!」「息ができない」という声が聞こえた。撃たれたのは著名な気候変動活動家ありホピ族およびアキメル・オダム族のジェイコブ・ジョンズ(Jacob Johns)だった。

 

ビデオでは、数人の目撃者が彼を追いかけようとする中、彼が駐車場を徒歩で逃げる様子が映っている。数分後には保安官代理が到着している。

発砲事件は現地時間午後12時30分前にニュースブリーフィングにある郡庁舎前で発生した。銃撃は、保安官事務所を含む郡事務所のドアのすぐ外で発生した。20台以上の警察車両が駆けつけ、アッパー・リオ・グランデ・バレーを見下ろすエスパニョーラ市の道路を埋め尽くした。

 

「今回もまた、銃による暴力事件が起きたことが一番悲しい」と同郡のビリ・メリフィールド(Billy Merrifield)保安官は短い記者会見で語った。また彼はオニャーテ像が2020年に別の場所から撤去されたと、そして、リオアリバ郡の委員会は最近、同郡のエスパニョーラ別館に像を移設・再展示することを決定し、木曜日に再献堂式が予定されていたことを語っている。保安官によれば、彼は先週、郡委員会に「私の懸念を伝える」手紙を提出し、「現時点での」像の移動という郡委員会の決定に「同意できない」ことを伝えたという。しかしこのような事態になった。

メリフィールドによれば、3人の委員のうち2人は、彼の手紙を受けて式典を中止することに同意したという。保安官の広報担当者によると、委員たちは水曜日の夜遅く、式典を続行しない決定を下していた。「私はそのことにとても感謝しています。彼らは、この件から生じたすべての安全上の懸念を考慮して、式典を行わないという決断を下したのです」とメリフィールドは記者団に語った。

 

オニャテ像を巡っては2020年6月、ニューメキシコ州アルバカーキで、抗議者たちが別のオニャテ像を取り壊そうとしている最中に別の男性が撃たれている。つまりそれほど物議を醸し出す人物ということである。

オニャテはニューメキシコの歴史上、何世代にもわたって物議を醸してきた人物であり、現在のアメリカ南西部を征服した際にネイティブ・アメリカンを抑圧し、時には残虐な扱いをしたことから、活動家たちはこの像や他のスペイン人の似顔絵を標的にしてきた。

しかし一方ヒスパニック系住民の中には、この銅像を自分たちの伝統のシンボルだと指摘する者もいる。1598年に現在のニューメキシコに到着したオニャテは、スペイン人入植者を祖先とするリオ・グランデ川上流沿いのコミュニティでは、文化的な父として称えられているのだ。

しかし、オニャテはその残忍さも知られている。ネイティブ・アメリカンにとってオニャテは、彼の兵士たちがアコマ・プエブロのメサの頂上にある「スカイ・シティ」を襲撃した後、捕虜となった部族の戦士24人の右足を切り落としたことで知られている。この攻撃はオナテの甥が殺されたことがきっかけだった。

 

抗議者たちは火曜日に到着し、テントを張り、陶器、トウモロコシの茎、奉納キャンドル、野菜の入ったバスケットなど、オニャテへの捧げ物を空の台座の上や周囲に置いた。彼らが掲げる横断幕には「今日のオニャテは違う」、「征服者ではなく、(我々の)抵抗を称えよう」と書かれていた。

州警察は木曜夜、被害者の容態や、この銃撃事件に関して告訴された、あるいは係争中であるなどの情報を求めるAP通信の電子メールや電話には即座に応じていない。情報公開を許可されていない配車係は、木曜日の夜か金曜日に詳細が発表される予定であると述べた。

サン・イルデフォンソ・プエブロに住むジェニファー・マーリーは、ネイティブ・アメリカンの権利団体「レッド・ネイション」のオーガナイザーである。「ひどい話だ。これは平和的な呼びかけでした。私たちは銅像が建てられないことを祝うためにそこにいたのです」と彼女は言った。また彼女は、オニャテの遺産は大量虐殺的暴力の一つであると述べた。「実に皮肉なことですが、私は基本的に、この暴力は現在進行形で続いていると言っていたのだ……私たちが平和的に祈りを捧げているときでさえも。私が話している最中に銃撃が始まったのだ」。

この銃撃事件は、ニューメキシコ州保健局がニューメキシコ州の病院で治療された銃弾被害者に関する報告書を発表した日に起こった。ミシェル・ルハン・グリシャム(Michelle Lujan Grisham)州知事は今月初め、最近の銃乱射事件をめぐってアルバカーキ地域の銃使用権を一時停止する公衆衛生命令を出すと同時に、この報告書を委託した。

報告書によると、2019年から2022年の間に銃器による負傷で集中治療室に入院する患者は16%増加した。救急部から手術室に移送された銃創患者は、同じ期間に61%増加した。

報告書はまた、2017年から2021年にかけての銃器による負傷による死亡は、ヒスパニック系、非ヒスパニック系ネイティブアメリカン、非ヒスパニック系黒人の集団で増加したことを指摘した。

ロスアラモス国立研究所に勤務していた78歳の定年退職技術者、トニー・オルテガ(Tony Ortega)は、地元のヒスパニック系住民の誇りの象徴として、郡がオニャーテ像を再び公共の場に展示する計画があると聞いて喜んでいると語った。しかし、それがトラブルを引き起こすことは分かっていたという。

「これが問題になることは思ってもいなかった。ネイティブ・アメリカンはそれ(設置)を望んでいない」。「彼らはオニャテを多かれ少なかれ悪い人間だと思っている」と彼は述べた。

1998年、エスパニョーラ近郊のオニャーテ像は、無数のモニュメントを倒そうとする人種正義を求める全国的な運動の中で、2020年に撤去されるまで展示されていたが、何者かによって右足が切り落とされた。アルバカーキ市の博物館の外にあるブロンズ製のスペイン人入植者のキャラバンの中のオニャテの似顔絵も、2020年に抗議を受け、撤去された。

リオアリバ郡委員会のアレックス・ナランホ(Alex Naranjo)委員長(民主党の元司法判事で教育委員会委員)は、この銅像を公の場に戻すことに変わりはないと述べた。彼の叔父であるエミリオ・ナランホ(Emilio Naranjo)が州上院議員として、またビル・リチャードソン(Bill Richardson)元州知事を含む公人たちによって推進されたプロジェクトは郡、州、連邦政府から100万ドル以上の資金が投入されていた。

アレックス・ナランホは木曜日の対立を、エスパニョーラ渓谷の外から来た「無礼な」抗議者たちのせいだと非難したが、木曜日に抗議した人々の多くは、地元のネイティブ・アメリカンとのつながりを挙げた。

「私にとっては原則の問題なのです」とナランホは告げた。しかし彼の祖先は1500年代後半に到着したスペイン人入植者である。「私の意見に反対する人がいても、彼らが敬意を払い、友好的な方法でそれを行う限り、私はそれを問わない」と彼は続けた。

 

ジェイコブ・ジョンズ射殺事件を受け、生物多様性センター(Center for Biological Diversity)エグゼクティブ・ディレクターのキラン・サックリング(Kierán Suckling)は「今週ニューメキシコ州で、先住民族の気候変動と正義の活動家であるジェイコブ・ジョーンズが、マガ(Make America Great Again)ハットをかぶった偏屈な男に銃撃されたことに、恐怖を感じ、打ちのめされている。生物多様性センターは、ジョンズの勇敢な行動と、暴力的な征服者フアン・デ・オニャテの記念碑の復活に抵抗するニューメキシコと北米の先住民とともに立ち上がる」。「気候変動と絶滅の危機に終止符を打つセンターの活動は、植民地開発主義への抵抗に根ざしている。私たちは、ニューメキシコ州エスパニョーラのテワ自治区で今週の平和的集会を主導した、レッド・ネイション、スリー・シスターズ・コレクティブ、ネイティブ・ウーマンに対する暴力を止める連合、NDNコレクティブなど、あらゆる形態の入植者人種差別に抵抗する先住民活動家のたゆまぬ組織化に敬意を表します。どこであれ不正義はどこであれ正義を脅かすものだからだ」と語った。

ジェイコブ・ジョンズの家族は、この攻撃は先住民族が何世紀にもわたって自分たちの土地で直面し続けている暴力を浮き彫りにしたと述べた。「何世代もの間、先住民族は危害、死、組織的抑圧に直面してきた。『先週の計画的な銃撃は、先住民の歴史における一連の制度的不正の、もうひとつの歴史的な出来事に過ぎない』」。家族はまた、ケガの治療を受けている病院で彼と母親が写っている写真も公開した。オンライン募金を立ち上げた友人によれば、彼は少なくとも1回の手術を受けたが、新しい情報によれば、回復への道のりは長い。

 

家族は犯人の拘留継続を求めている。同被告は現在、殺人未遂と加重暴行容疑でリオアリバ郡拘置所に拘留されているものの、家族によると「私たちのコミュニティー、そしてすべてのコミュニティーに重大な危険をもたらしている」ことから、マルティネスに対する連邦憎悪犯罪の立件を要求している。ニューメキシコ州は、マシュー・シェパードとジェームズ・バード・ジュニアのヘイトクライム防止法(連邦法)に基づいて起訴された最初の事件が起きた場所である。被害者は先住民でもあった。
「これは人種的、文化的に動機づけられたヘイトクライムであり、そのように扱われなければならない」とジョンズの家族は述べている。

この声明はさらに、リオ・アリバ郡の当局に対し、1500年代から1600年代にかけて先住民に対する暴力行為で悪名高い植民地時代の人物、フアン・デ・オニャテの記念碑を再設置する計画を取り下げるよう求めている。マルティネスは、襲撃に至るまでの数日間、物議を醸しているこの像についてソーシャルメディアに投稿していた。

しかしこれまでのところ、記念碑を復活させようとした県当局は、銃撃に先立つ状況を作り出した責任を認めていない。また、この襲撃事件を明確に非難することもなく、被害者について言及することなく「悲劇的な出来事」としている。

エスパニョーラ市長は、自身の公式ソーシャルメディア上で像の設置を宣伝したが、銃撃事件に関する声明の中でジョンズについても沈黙を守った。モニュメントが設置された場所から90分以上離れた場所に自宅があるマルティネスがこの地域にいることについても、市長は公の場でコメントしていない。

米国国勢調査局によると、2020年現在、リオアリバ郡住民の約17.2%がアメリカン・インディアンまたはアラスカ・ネイティブであると自認している。そのほとんどはエスパニョーラ近郊のプエブロ・コミュニティ(オカイ・オウィンゲとサンタ・クララ)に住んでいるが、ジカリラ・アパッチ族にもかなりの人口がいる。

 

 

参考資料:

1. A man is shot and wounded as tempers flare in New Mexico over the statue of a Spanish conquistador
2. Man shot as tempers flare in New Mexico over statue of Spanish conquistador
3. For Immediate Release, September 29, 2023(Center for Biological Diversity Statement)
4. Family of activist Jacob Johns releases statement about deadly shooting

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