メキシコ:アヨツィナパ事件、発生から9年、真実を求める抗議集会

(Photo:@RaulRomero_mx / Twitter

9月22日(金)、アヨツィナパ(Ayotzinapa)事件の発生から9周年を迎えようとしている中、メキシコシティ南部にある連邦司法審議会(Consejo de la Judicatura Federal:CJF)本部前で、失踪したノルマリスタ(Normarista)の両親たちが文化イベントや抗議の歌を通じて抗議デモを行った。

エミシクロ・ア・フアレス(Hemiciclo a Juárez)の片側では、母親たちが43人のノルマリスタのカメの絵が描かれたTシャツ、刺繍入りのナプキンを50ペソから100ペソで販売した。Tシャツには「アヨツィナパは生きている(Ayotzinapa Vive)」「戦いは続いている(La Lucha Sigue)」「息子よ、43人全員が見つかるまで探し続けるよ(Hijo te buscaré hasta encontrarte…43)」、「アヨツィナパ、43人の魂と共に進む(Ayotzinapa, Caminando con el corazón 43)」などと書かれていた。

アヨツィナパ事件とはゲレロ州イグアラ(Iguala)にあるラウル・イシドロ・ブルゴス(Raúl Isidro Burgos)師範学校(Escuela Normal Rural)の生徒43人が失踪した事件を言う。9年前の9月26日、アヨツィナパで6人が殺害され、43人の生徒が行方不明になった。

 

ビドルフォ・ロサレス・シエラ(Vidulfo Rosales Sierra)弁護士に付き添われた親族たちは、21日(木)から国防省の第1-A軍事キャンプにテントを張り座り込みを行い、ノルマ・ルシア・ピニャ・エルナンデス(Norma Lucía Piña Hernández)国家最高裁判所(Suprema Corte de Justicia de la Nación:SCJN)長官が率いる司法省事務所までバスで移動していた。座り込みやテントの設営は9月25日(月)には解除される見込みだ。

集会の中で弁護士は、2年前に連邦司法審議会に対し、異なる裁判所に分散しているアヨツィナパ事件の30以上の刑事手続きを標準化する法的メカニズムの構築を求めたことを非難した。ロサレス・シエラは「裁判所は相反する基準で問題を解決させようとしている。一方私たちは2年前から、ひとつの裁判所、ひとつの審問で処理できるように法的メカニズムの確立を求めてきた」と語った。

ノルマリスタ、ホセ・エドゥアルド・バルトロ(María de Jesús Tlatempa)の母親であるマリア・デ・ヘスス・トラテンパ(María de Jesús Tlatempa)は、自分たちは子どもたちの生きている姿を要求しているのだと繰り返し述べ、軍がすべての情報を渡していないことを強調し、自分たちは真実を突き止めようとしていると主張し「不処罰はもうたくさんだ、私たちには行方不明になった子供たちがいるのである」と語った。

 

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドル(Andrés Manuel López Obrador、以下AMLO)大統領は、9月20日、43人の家族と面会した。会談では同席した人権問題副担当のアレハンドロ・エンチナス(Alejandro Encinas)が数時間にわたって、委員会の第二次報告書の内容を説明した。

エンチナスが説明した最初の報告書の中で最も議論の的となったのは、襲撃現場となったイグアラの犯罪ネットワークのメンバーが、2014年9月26日からその後の数日間と数週間の間に、襲撃中と襲撃後に交わしたとされる400通以上のメッセージのパケットを削除したことだ。メッセージは、実際に受信したとされる携帯電話の画面の写真とともに、ノルマリスタの最終的な運命を描いていた。たとえば、あるケースでは、当時イグアラにいた2つの陸軍大隊のうちの1つ、ホセ・ロドリゲス(José Rodríguez)司令官が、襲撃以来何日も監禁されていた43人のグループの殺害を命じたと書かれていた。それに対し、メッセージの信憑性を検証することが不可能であったため、委員会はそれを破棄せざるを得なかったと言う。エンチナスfと彼のチーム、そして昨年7月までこの事件を調査した独立専門家グループGIEIは、エンリケ・ペニャ・ニエト(Enrique Peña Nieto )率いる前政権(2012〜2018年)の大規模な隠蔽工作を常に批判してきた。現在獄中にあるヘスス・ムリジョ・カラム(Jesús Murillo Karam)とその右腕トマス・セロン(Tomás Zerón)率いる旧司法長官府が、この事件を迅速に終結させようとしたことで、捜査に修復困難なダメージが生じた。そのため、今日でも攻撃の大部分で何が起こったのかは不明の状態だ。

委員会の推理は、犯罪グループ 「ゲレロス・ウニドス(Guerreros Unidos)」が、イグアラや他の自治体の市警察の行動や、州検察庁、連邦警察、陸軍など他の治安機関の行動や不作為に支えられて、行方不明の43人の学生をグループに分け、ゲレロ州中心部のさまざまな場所に遺体を隠したというものである。問題は、当時のスキャンダルを考慮し、犯人たちが遺体をどこに、あるいは何度も移動させたかどうかである。遺族たちは熱心に耳を傾け、最後には、この報告書ではほとんど触れられていない、当時のゲレロス・ウニドス軍とその同盟軍のスパイ活動を記録した文書に大きな関心を示した。今のところ、これらの文書のうち2つが知られているが、その中には犯罪者と当局との会話が含まれており、その中で学生たちの運命の可能性について触れられている。GIEIの調査から、遺族はこの種の文書がもっとあり、たまたまこのようなメッセージのやりとりに出くわしたという状況証拠的なものではなく、スパイ活動が進行中であったに違いないと推測している。

水曜日、家族は国立宮殿に到着した。エンチナスは、より簡潔ではあるが、再び報告書を発表した。その後、この事件の特別検察官ロセンド・ゴメス・ピエドラ(Gómez Piedra)が、最近取り組んでいるいくつかの告発の状況について簡単に話した。この場で両親たちが糾弾したのはラファエル・エルナンデス(Rafael Hernández)将軍のケースだ。イグアラで活動していたもうひとつの大隊の当時の司令官であった彼は、ゲレロス・ウニドスとの協力の疑いで、組織犯罪の容疑で検事総長に告発されているにも関わらず、裁判官が予防措置を取らなくさせたという事実だ。エルナンデスは、逃亡の危険はないという国家警備隊の報告書のおかげで、自由な生活を送ることになる。遺族が危惧しているのは 事件に関与したホセ・ロドリゲス将軍を含む15人ほどの人間が恩恵を受けることである。

会合における事態が緊迫し始めたのは、遺族が議場に立ち、大統領に対し、要求された書類を軍に渡すよう要求したときだった。時に喧嘩腰の言い合いとなった。ロサレス弁護士や家族はそもそもその報告内容については納得していない。弁護士によると大統領が提示したのは軍の資料の一部えあり全部ではない。 全部ではないのに、全てを引き渡したと言うのは国防省が情報を隠しているのではないかという考えに基づく。つまり、家族は情報を操作する意図があっての ことではないかと信じている。 それを聞いてAMLOは会談中「私はペニャ・ニエトではない(¡Yo no soy Peña Nieto!)」と叫ぶ 一幕もあった。

 

家族との面会を終えた後、大統領は記者会見で 両親たちに事件の捜査が操作されずに行われていることを説明するために再度会いたいと語っていた。 また、家族との会談は決裂したのではないかと問う記者の質問を否定し、 階段は失敗していないこと、故に、決裂する理由もない事を語った。 行われているデモに対しては「彼は抗議行動をおこなう権利を持っている。なぜならかれらの息子たちが失踪しているのは、 耐えられないことだと理解することが出来るからだ。それは非常に人間的なことである」と述べた。大統領は2024年10月1日に自身が退任するまでに、この犯罪を解決するための努力を行うと約束をしている。

政府は、アヨツィナパ事件の捜査を政治的に加速させ、威厳をもって終結させようとしている。ここ数ヶ月の成果は、一部の被拘禁者に対する手続きに最小限の進展があっただけで、乏しい。大統領が先週述べているように、最も重要なのは少年たちの行方を突き止めることだ。43人の遺骨が発見されれば、生徒の家族と対立している大統領にとって不利な状況を変えることができる。

家族と政府大統領は9月25日午後5時から、 再会合を行うこととなっている。大統領の参加は無いものの、代わりにルイサ・マリア・アルカルデ(Luisa María Alcalde)政府長官、アレハンドロ・エンチナスが再度出席し、家族側の要求に答えることとなる。

 

アヨツィナパに関するその他の記事はこちらから。

参考資料:

1. Caso Ayotzinapa: familiares de normalistas piden al Poder Judicial homologar procesos penales
2. Padres de los 43 normalistas se concentran en el Hemiciclo a Juárez
3. ¿Qué significa ser normalista de Ayotzinapa?
4. López Obrador, a las familias de los 43: “Yo no soy Peña Nieto, yo no encubro”

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