エクアドル国会解散:ヴィジャヴィセンシオの死を受け響くのは「コレア、殺人者」の声

(写真:Movimiento Construye/HP

8月20日選挙にて大統領候補として出馬していたフェルナンド・ビジャビセンシオ(Fernando Villavicencio)がキト北部の中心部にあるアンダーソン校(colegio Anderson)で殺害された事件を受け、Construye運動(Movimiento Construye)の支持者数百人は国内の主要都市で「Correa asesino!, ¡Correa asesino!, ¡Correa asesino! (…)」と叫んでいる。この講義は道でのそれにはとどまらず、ソーシャルネットワーク上でも #correasesino と言うタグがつけられ、本動画が拡散しさまざまなコメントがつけられている。誰がビジャビセンシオの死に関わっていたのかについては、捜査中であり、元大統領の関与については当局の発表等はない。

 

ビジャビセンシオの暗殺を知ったコレアはツイッターを通じ「フェルナンド・ビジャビセンシオが暗殺された。エクアドルは破綻国家となった。傷ついたか、祖国よ。彼の家族、そして暴力の犠牲となったすべての家族に連帯を」と発信した。その一方、自分への非難に対し、猛烈に抗議、弁護している。

 

ビジャビセンシオの命を奪った銃声による騒ぎの中、デモが隊はConstruye運動の旗を振りながら、コレアの名を叫び、彼を「殺人者」と呼ぶには過去がある。それは実質的な暗殺首謀者を意味するものではなく、過去行き過ぎとさえ思われる裁判の結果にもあるのかもしれない。コレアに対する汚職を告発後、ビジャビセンシオ等はコレアに対する誹謗中傷の疑いで禁固18カ月の実刑判決を受けている。

2022年11月、同国の選挙期間中、当時議員だったビジャビセンシオ自身は、コレアの最初の大統領選挙キャンペーンはエクアドル領内にいることを許可することで元FARCゲリラから資金提供を受けていたと主張し、元大統領が地方選挙の候補者への支持を示す選挙看板を見たときに感じた憤りを自身のアカウントのツイートで指摘した。

選挙看板にはマナビ県ポルトビエホ(Portoviejo)のマナビ県知事候補だったレオ・オルランド(José Leonardo Orlando Arteaga)候補がコレアと一緒に写っており、それに対してビジャビセンシオはこう投稿した。「逃亡中の犯罪者と選挙運動をすることが許されるのか、説明できるか?答えられるのか、それとも黙っているのか?」と投稿した。

 

即座にコレアは挑戦的な口調のツイートで反論している。「唯一の犯罪者はあなたであり、唯一の逃亡者はあなただ。 死ぬほど怖くて、自分の悪事を謝罪しようとさえしたことを覚えているのかか?あなたは臆病な悪党だ。あなたの政党はすぐに終わる(Pronto se te acabará la fiesta)」と #LosCorruptosSiempreFueronEllos のタグと共に呟いている。コレアのこのツイートは今回の暗殺事件を受け今一度引用されネット上では拡散されている。また「私たちの個人的な復讐は強引なものになるだろう(nuestra venganza personal será contundente)」とのツイートもまた、今回の事件を思わせると考える人もいる。

https://twitter.com/fotopine/status/1689727772980072448

 

コレアが逃亡者とビジャビセンシオを呼ぶのは上述の通りコレアへの屈辱を理由とした禁錮判決に従うことなくエクアドル・アマゾン中南部のジャングル地帯に位置するサラヤク(Sarayaku)にある先住民領土に避難したことにある。同地域に避難したのはビジャビセンシオを含む実刑判決を受けた3人で議員のクレベル・ヒメネス(Cléver Jiménez)と活動家カルロス・フィゲロア(Carlos Figueroa)である。この事件の発端は2011年、2010年9月30日の警察反乱の際、ラファエル・コレアを救出するために警察病院を軍が襲撃したことで、人道に対する罪を含む犯罪の疑いがあるとして、3人の反対派がエクアドル検事総長にラファエル・コレアを告訴したことにある。検察は証拠を見つけられず、告訴は悪意ある無謀なものとされた。コレアは名誉毀損で反訴し、最終的に国立裁判所はヒメネスとビジャビセンシオに懲役18ヶ月、フィゲロアに懲役6ヶ月の判決を下していた。米州人権委員会はこの服役命令の停止を目的とした予防措置を認めていた(エクアドル政府はこの予防措置を考慮しないことを決定)。その判決も受けて4月24日にはサラヤク人民会議によって彼らの領土でエクアドル・アマゾンへの難民を生活擁護を目的に引き取る決定を下した。135,000ヘクタールのサラヤク領土の95%は原生林である。そこには1200人ほどのキチュワ族が住んでおり、自分たちの生活や文化に対する脅威と考えるものから自分たちを守ってきた長い歴史がある。

なおフェルナンド・ビジャビセンシオが亡命生活を送っていた椰子の屋根と壁のない家から、先住民たちは妻ベロニカ・サラウズや子どもたちに哀悼の意と連帯を伝えた。

 

 

ベルギーで逃亡生活を送っているコレアとビジャビセンシオとの間には、何度も明らかな衝突があった。例えばウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)がロンドンのエクアドル大使館に滞在中、彼に亡命とエクアドル市民権を与えて支援したことをコレアが批判した際にも、このような事態が生じた。故大統領候補は、欠席裁判で懲役8年の判決を受けた前国家元首を「逃亡者」と呼んでいた。ビジャビセンシオはその後、コレアと距離を置いたレニン・モレノ政権(2017-2021年)のもとで2017年に帰国するまで、リマに避難していた。ビジャビセンシオは、ラファエル・コレア前大統領(2007-2017年)の最強の反対者の一人で、彼が関与した汚職事件に疑問を呈し、前大統領に対する260件の捜査にも注目していた。

ペルーに拠点を置く自由協会(Sociedad de la Libertad)はビジャビセンシオ暗殺事件への拒絶を声明で表明するとともに、デモを受け「共産主義マフィア」と呼ぶものを直接非難し、この悲劇的な出来事に関与しているとしてコレア主義者たちの存在を指摘している。同協会の会長であるロサ・マリア・アパザ(Rosa María Apaza)弁護士は「我々は、調査報道ジャーナリストであり大統領候補であったフェルナンド・ビジャビセンシオを殺害した犯人を絶対的に否認することを表明する。エクアドル政府に対し、迅速かつ断固とした対応を求める。我々は、犯罪組織「ロス・チョネロ(Los Choneros)」とコレイスタ・マフィアの責任を追及する。なぜなら、ビジャビセンシオが主導した調査によって、ラファエル・コレアと他の共産主義指導者たちに判決が下されたからである。このため、彼は迫害され、脅迫され、ついには殺害されたのです」と語った。また、「ペルーより、フェルナンド・ビジャビセンシオのご遺族に心より哀悼の意を表する。エクアドルの人々は、共産主義が殺人を犯し、人生のプロジェクトを侵害し、政治権力を手に入れるために詐欺を働き、狡猾に嘘をつき、そこから自由社会を破壊し、市民を平気で攻撃することを知らなければならない。容赦なく、恐れることなく、ラテンアメリカに共産主義を葬り去ろう」と付け加えている。自由協会によれば、この悲劇的な出来事は、共産主義が放つ暴力と脅威を反映している。Sociedad de la Libertad自体は何がなんでも共産主義とコレア、そしてその支持者、犯罪を結びつけたがっているようではあるが、いずれにしても彼らは今回事象を共産主義のコレア主義者たちにあると結論づけている。

ok diario Internationalを通じジャーナリストのホルへ・メストレ(Jorge Mestreは抗議活動を受け、不運な右派指導者(ビジャビセンシオのこと)の支持者が市民革命に代表される社会主義左派から受けた脅迫に加え、政治的利害で計画された犯罪と見なされるものに対して抗議するために街頭に出ることを少しもためらわないと述べている。なおビジャビセンシオは、大統領選出馬表明後の5月、Agencia Efeとのインタビューで、当初は穏健左派を自認しているが、ビジャビセンシオの意思とは違うことが語られている。

 

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ラファエル・コレア前大統領の政党「市民革命」はコレアがビジャビセンシオの死に関わっているとする偽情報や「フェイクニュース」を流布しているとして「市民革命運動はフェルナンドの思い出を尊重し、捜査の妨げにもなる陰謀や偽情報をまき散らす偽の音声やビデオメッセージを作成するのをやめるよう要求する」とConstruye運動を糾弾した。彼らの言うデマとは、例えば、ビジャビセンシオの未亡人ベロニカ・サラウス(Veronica Sarauz)が夫の死について、保護の欠如とコレア政権を非難したことがあげられる。ベロニカは、「私の夫が死んだのはこの政府のせいであり、説明しなければならないのは彼らなのです」と、防弾チョッキとヘルメットを着用し「何が起こったのか、国は多くの答えを出さなければならない」と述べ夫に対する保護措置の欠如を非難した。またコレイスム主義者に対する申し立ての証拠は示さなかったものの「コレアの支持者たちに伝えたいのは、直接的であれ間接的であれ、私の夫の死は彼ら全員に責任があるということだ」と述べた。

 

エクアドルの元大統領候補フェルナンド・ビジャビセンシオが殺害された事件は、同国のみならず南米全体に衝撃を与えた。ジャーナリストのマメラ・フィアロ(Mamela Fiallo)は、ビジャビセンシオに対する致命的な攻撃の背後には、彼を選挙レースから排除しようとする政治家たちがいたと断言している。フィアロによるとビジャビセンシオは汚職との戦いに生涯を捧げ、そのために多くの敵を作った。「ビジャビセンシオは、警察や軍隊の中でも汚職と戦ったため、多くの敵がいた。逮捕された6人の容疑者はコロンビア国籍で、エクアドルの政治家3人と携帯電話で連絡を取り合っているが、彼らが誰なのかはまだわかっていない」とフィアロはWillax.peに語っている。フィアロはエクアドルの3人の政治家の名前は挙げなかったものの、ラファエル・コレア党に属する現大統領候補ルイサ・ゴンザレス (Luisa González) がフェルナンド・ビジャビセンシオ殺害の背後にいる可能性を示唆した。しかし現在世論調査では最も大統領職に近いとされる市民革命( Citizen Revolution)ルイサ・ゴンザレスにとってこのような事件は不都合であり、彼女の利益にはならない」と語っている。

ビジャビセンシオはギジェルモ・ラッソの政権を批判していた。しかし時に彼を擁護することもあり、ライバルの中には彼を与党の覆面候補とビジャビセンシオを見なす者もいた。ビジャビセンシオ自身はそれを否定していた。エクアドルの真ん中、チンボラソ県にあるアンデスの自治体アルシ出身のビジャビセンシオは、旧『Vanguardia』誌などのメディアでも働き、2009年から2017年にかけては元パチャクティック先住民運動(Movimiento de Unidad Plurinacional Pachakutik:MUPP-18)議員クレベル・ヒメネスの政治顧問を務めていた。

世論調査によると8月20日に実施される大統領選挙は決選投票に進むのか、それとも一回で決まるのかの瀬戸際にある。市民革命以外は決選投票を目指し活動を行っている。決選投票に進めば第1回投票で1位と2位候補にそれなりの票差があったとしても逆転できる可能性があるからだ。実際、前回選挙においても3位となったヤク・ペレスと僅差で決選投票へ駒を進めたギジェルモ・ラッソがコレア主義への強い抵抗を後ろざさえに、市民革命のアンドレ・アラウスを破理大統領になっている。

大統領選に立候補している候補者でさえ、誰もが安全ではない土地になったエクアドル。ここ数年で急激に治安が悪化した。同国がドル経済であるということもあり犯罪グループにとって非常に魅力的にも映る。つまり汚い金に対する資金洗浄が容易であるのだ。COVID-19パンデミックは国や国民に壊滅的な打撃を与え貧困や飢餓が蔓延した。これらの状況の中、組織犯罪のための大量の犯罪者、暴力が生み出されていった。ジャーナリストのマヌエラ・ロペス(Manuela López Restrepo)によるとこの危機は大統領による重大な政治的失策の積み重ねでもある。2010年代にはラファエル・コレア大統領の誕生と、彼と警察との衝突やアメリカ麻薬取締局(Drug Enforcement Administration:DEA)を国から追放したことがエクアドルの麻薬密売を監視する能力を制限したと述べている。エクアドル国民の多くは自国の国家機関から見捨てられたと感じている。

弁護士で元議員のリカルド・バネガス(Ricardo Vanegas)は、フェルナンド・ビジャビセンシオ殺害の犯人は検察庁で殺された「彼らは彼を黙らせようとしていた」と主張した。しかし、検察庁によれば、殺し屋はキトのフラグランシー・ユニットで重傷を負って到着し、そのために死亡したとのことである。

なお直近においては銃撃戦で死んだとされる容疑者とコレアが共に写っている写真もまた共有されだした。

 

Muerte cruzadaや国民議会、大統領選挙に関する別記事はこちらから。

参考資料:

1. Ecuador: Sociedad de la Libertad acusa a «mafia comunista» y a «correístas» del asesinato de Fernando Villavicencio
2. Fernando Villavicencio: ¿quién sería el autor intelectual del asesinato del excandidato a la Presidencia de Ecuador?
3. How Ecuador reached the shocking point of a political assassination
4. Rafael Correa y las frases mortales contra el asesinado candidato Fernado Villavicencio: “Pronto se te acabará la fiesta” y “nuestra venganza personal será contundente”
5. El pueblo indígena ecuatoriano que ampara a tres sentenciados por injuriar a Correa
6. Los seguidores de Villavicencio se echan a la calle al grito de «¡Correa, asesino!»
7. La esposa de Villavicencio acusa al Estado ecuatoriano y al correísmo del asesinato

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