エクアドル国会解散:大統領だった2年間を自ら振り返る(経済・産業編)

(Photo:Presidencia de la República del Ecuador/Flickr)

ギジェルモ・ラッソ共和国大統領は就任からの2年間を評価した。本報告はエクアドルにおいて最も重要な日とされる一つ、「ピチンチャの戦い」における勝利式典で行われた。祝日となる5月24日、大統領は経済運営における模範として、自身の政権の実績を強調した。

ラッソは「この2年間で、我々は多くの進歩を遂げた。そして、これからの数カ月もそうしていくだろう」と述べた大統領はマクロ経済数値等を用いて説明している。例えば「財政赤字を75億米ドルから20億米ドル未満に減らした。これはほぼ60億円の削減であり、GDPの6%に相当する」ものであり、また、2022年12月時点における「エクアドルのインフレ率は3.7%であり、これは域内で2番目に低い(数字だ)」とも強調している。国際通貨基金(IMF)によると、2023年にはエクアドルのインフレ率は1.4%となり、最も低く抑えられる(1位)。一方の成長率はIMFによると今年3%となる予定で、地域平均の1.7%のほぼ倍となる。

公的債務残高は2023年末に55%へと減少し、67%にまで達していた3年前より12%削減できる。2022年の国の累積売上高は2260億ドルに達し、GDPの2倍以上、2021年よりも13%増加し、110万人のエクアドル人が貧困から脱却し、約50万人の雇用が創出されたことを明らかにしている。徴税額は2022年に170億ドル以上となり、2021年より約30億ドル増加した。これは「脱税者の厳しい取り締まり」「手続きの簡素化」「電子請求書の強化」によるものだ。

エクアドルには観光資源が豊富だ。その一方COVID-19パンデミックは、観光需要を完膚なきまでに破壊した。観光は約60万人のエクアドル人の雇用を創出する上で非常に重要な産業だ。そのため大統領は観光を後押しすることを目的とし、複数手段を講じていると説明した。例えば本需要の喚起に向けてはVATを8%に引き下げる予定だ。外国人向け宿泊施設の付加価値税、外国航空会社の外貨流出課税の撤廃、そして今年6月からはエコデルタ税も引き下げられ、航空券の価格も下がる予定だ。エコデルタ税は今まで50米ドルであった。パンデミックの拡大を防ぐために運休していた航空便の数も回復してきた。2022年12月時点で「25路線292便の国際接続性を85%回復し、これは訪問者の数字にも反映されている」と指摘した。さらに、パンデミックからの回復を見せだした2022年、観光客の消費額は4億8200万ドルとなり、2015年以降で最も高い数字となった。

国際ビジネスはラッソの本来得意とするところだ。エクアドルを世界に開放するという目標は達成されたと述べるラッソはこの2年で10カ国ほどと取り組んだ貿易協定について言及した。例えばコスタリカや、「14億人の潜在的な消費者がいる市場」であるアジアの巨人中国との間で条約を締結したことを語っている。中国との協定は「2030年までに30~40億ドルの追加輸出の増加を意味する可能性がある」。また、韓国との協定は今後数カ月で締結される予定だとした。この文脈でラッソは、「海外からの売上が増えるということは、それだけ生産量を増やさなければならないということであり、生産量が増えれば、販売量も増え、価格も向上し、家計の収入も増える」と述べている。また農業部門の強化にも言及しており、全国農業登録簿が設置されたことで、10の農村地域の生産形態とニーズを知ることができるようになるとのことだ。

公約に掲げていた労働者と雇用についてはどうだろうか。「この政権では、毎日が雇用の創出に焦点を当ててきた」と語るラッソは現在450ドルの基本給を毎年25ドルずつ引き上げるという目標も達成されたと説明した。これらの措置で「2023年4月までに失業率が6.3%から3.2%に減少した」とし、2023年4月までに、およそ50万人の雇用が創出されたことを語っている。

2022年の全国スト期間に先住民団体等との対話を通じ取り決めた債務のモラトリアムについても国立エクアドル銀行(BanEcuador)が「最大3,000米ドルの債務を帳消しにした」とし、この額は26,000世帯のために6,000万ドルを支援することを意味すると述べている。またBanEcuadorを通じて、5月16日までに9億5900万ドルの融資が行われ、そのうち2億4900万ドルは1×30クレジットに相当し、合計24万1262人の受益者に提供された。また、国家金融公社を通じては3億ドルの融資が零細企業、中小企業に提供され、生産量の増加や雇用の創出が図られました。そして人類史上最大の債務と保全の交換、つまり198,000平方キロメートルに及ぶガラパゴス海洋保護区とエルマンダ保護区の保護と引き換えに16億ドルの債務交換を行い、少なくとも2,500種の海洋種の保全を保証したことも語っている(詳細はこちら)。

エネルギーサービスや鉱業に関する報告においてラッソは、2022年末までにエクアドルのカバー率(エネルギーサービス)は97.3%になり、地域平均の95.9%を上回るったとしている。鉱業では銅鉱山ミラドル(Mirador)と金鉱山フルタ・デル・ノルテ(Fruta del Norte)の2つしか稼働してないため、2022年の輸出額は27億7500万米ドルで、2021年の同時期に比べ32%増となったことを報告した。「第4位の輸出部門」となった鉱業は2023年第1四半期の輸出額は8億USDに上る予定だ。「汚職や脱税、さらには暴力の元となる違法採掘とは常に戦っていく」、その一方政府による「正式な」採掘支援を進めたいラッソは、その正当性を「地域経済を活性化させ、多くの雇用を生み出すから」と説明している。提供された数字によると、2023年3月時点で「鉱業の直接・間接雇用は16万8,000人」であるという。しかしその実態は検証が必要である。なお、ラッソによると正式な採掘の直接的な効果は税収であることを強調しており、「2022年、この部門は2021年よりも92%多い6億7000万円の税金を納めました」と報告した。この言説もまた、鉱業が行われる付近の住人が果たしてどれだけの恩恵を受けられているのかとは、別の話である。そもそも鉱業に反対しているものも多い。土地に住む人間への相談なし、もしくはその交渉内容が疑わしい状態で「公式」な鉱業が行われているという実態もある。

今月か来月6月に施行できるようと新たな税制改革を意図した政令法をラッソは憲法裁判所に提示しており、発行の許可を待っている。ラッソによると審議待ちの「家族経済強化法」は所得税納税者の99%、つまりほぼ全員を占める34万人の中流家庭の懐を潤すことになる」ことを併せて語った(詳細はこちら)。

参考資料:

1. Informe a la Nación: con estas cifras Guillermo Lasso evalúa sus dos años de gobierno
2. Guillermo Lasso presenta su segundo Informe a la Nación y fue inédito

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