インド:南インド料理「ミールス」を西荻窪で食べてみる

「ミールス」と言うものをご存知だろうか。南インドを代表するプレート料理だ。日替わり定食と説明した方がわかりやすいかもしれないそれは、米を中心に幾つかのカレーと副菜がついたセットのことを言う。大まかな構成要素は決まっていつつも、毎日食べるものであることもあり、飽きないように付け合わせとなるものにアレンジが加わる。その点から言っても、南インド版「日替わり定食」と言うのがだとなのかもしれない。

インドやネパールのカレーに親しみを持っている人もいようかと思う。私もその一人であり、1週間に1度は食べていると言っても過言でない。むしろ一時インドのカレーが好きすぎて、インドへのカレー留学を検討したほどだ。出稼ぎ労働者が多いこともあり、日本のみならず大都市圏では必ずインド料理屋なるものが存在する、そう言って間違いではないだろう。そして、それらの多くは、北インドを基点とした料理であることが多い。

インドは世界で7番目に大きな面積を保有する国だ。その大きさは3,287,263平方キロメートルで日本の国土面積の約 8.7 倍に相当する。これが何を意味するか。もちろん文化の多様性である。北インドと南インドでは歴史も違えば文化も違う。ヒマラヤ山脈をのぞむ北に対し、海に囲まれた南は熱帯、西に行くほどに砂漠地帯が広がる。

 

南インドとはどこか。地理的な観点から言えばサトプラ山脈・ナルマダー川・ヴィンディヤ山脈以南を指すようである。綿花の大産地 として重要なデカン高原をも含む。言語・文化的観点から言えばアーンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州、ゴア州、カルナータカ州、ケーララ州、タミル・ナードゥ州、ラクシャドヴィーパ連合区、パーンディッチェーリ連合区、アンダマン・ニコバル諸島連合区が南インドと言うことになる。そしてそこに多く住むのは伝統的に言ってドラヴィダ人である。インダス文明の担い手とも言われるドラヴィダ人は大陸を移動してきたアーリア人以前にこの土地に根を張ったとされている。他民族の影響もあり、徐々にインドの南方へと追いやられるもチョーラ朝(846年頃 – 1279年)時代に繁茂し、イスラム教勢力の侵入を食い止めた人々としても知られる。

上述の通りインドは広い。そして有名観光地は概ね北に存在する。だからインドに行ったことのあるひとでも、南インドを訪れたことのない人も珍しくはないのではないかと思う。私のそのうちの一人だ。一方、我が親族のうちの一人は南インドが好きすぎて、数ヶ月そこに滞在していたと記憶している。同人物は、そこの魅力についてゆっくりと時が進むし、何より人が親切と繰り返し言っていた。

 

北インドは何度か行ったことがあるものの、なかなか南インドとの接点を持つことができなかった。私の南インドに対する持てるイメージは親族の言葉や写真を通じ形成されたものだった。そして今回ミールスを通じ形成される南インド料理へのイメージ。それはなんとも楽しそうである、というものだった。実験のような、そして図工の時間のような経験を、料理を通じ経験できる、そんな印象だ。

ミールスは上述の通り日替わり定食である。カオカオと呼ばれる香りの弱いインディカ米を主食とする。豆で出来た薄焼き煎餅パパドやマンゴーピクルスも欠かせない。なぜならあっさりとした味のカレーや副菜の味の調整役としてこれらが存在するからだ。パパドは油分を、ピクルスで塩味を補うそんなイメージだ。スパイスは確かに使われている。しかしそれは「辛さ」を演出するものではない、それは南インド料理が教えてくれることでもある。

 

東京といえども南インド料理屋の数は北インド料理屋と比べれば格段に少ない。そんな中、見つけたのが西荻窪のとら屋食堂。大森にあるミールス専門店「ケララの風Ⅱ」を目標に作ったお店だ。ケララの風店主沼尻さんの作る南インド料理に感銘を受け、店をオープンさせたことによる。つまり、とら屋食堂の店員もまた、南インド料理をこよなく愛する人々なのである。なおケララの風自体は、その人気故すでに営業を終了しており、別業態で南インドのドーナツ(ワダ)などを提供する店へと姿を変えている。

とら屋食堂で提供されるミールスは野菜中心だ。魚等食べたい人はオプションで付けることも可能だ。皿というパレットで米と副菜を混ぜ合わせ自分好みの味付けで食べられるそれは、足りないピース(副菜)があれば、おかわり自由だ。是非一度食べてみてほしい。

 

ミールス専門店 とら屋食堂(西荻窪)

 住所
  東京都杉並区西荻北3-18-6 常盤ビル1階 (1F, 3-18-6, Nishiogi-Kita, Suginami-ku, Tokyo)
 電話
  090-6420-5837
 価格帯
  
 営業時間
  月、土日、その他不定期
  ランチ 11:30~14:30 L.O.
  ディナー  18:30~21:00 L.O. ディナーはリクエスト制で、予約がなければ開店しない。
ホームページ
  https://toraya.club/

 

東京で食べられる各国の料理情報は「東京で世界飯」から。

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