日本:先住民族アイヌの知恵と「エント茶」とその効用(北海道)

昔から常用されているものに興味を持っている。それは道具もそうだし食べ物もそうである。「科学」と言う言葉が一般化されるずっと前から伝わり、今もまだ良いとされ、残ってきたものには根拠がある(※)。それらの経験は科学と比べられるべきものではなく、ましては、馬鹿にされるものでもない。過去において数えきれない実験と検証、改良がなされ今に至ったものであるからだ。西洋の言う「科学」が一番なんてことはあり得ない。そもそも科学が人間によって利用されている限り客観的などと言ったことはあり得ない。人は科学を都合よく解釈利用し、自らの利益に結びつけていく。この考えは科学自体を否定するものではない。あくまで科学を使う人間が意図を持っている時点で客観性は削がれるというものである。

アイヌが常用していたものにエント茶というものがある。私自身、アイヌに触れるまでは全く認識していなかったお茶である。アイヌ語で「エント」と呼ばれるものは、その他の言語ではシソ科のナギナタコウジュ(長刀香需、または薙刀香葇)と呼ばれているものである。花穂の片側だけに花がつき、それがそり返っている様子がナギナタに似ていること、そして特有の強い香りがあることからこの名がついたとされている。北海道から九州、アジアの温帯に分布するこの植物は秋(9 – 10月)に紫色の花を身に纏う。花が咲く秋に採取し、干して乾燥させ利用した。

 Nonenmac/wikipedia

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アイヌ語辞典によるとアイヌの人々は採ってきた茎葉を火で炙り、炊きたての粥の中にも入れいた。粥に移った清爽な香気で食が進んだというエピソードもあるようだ。また、この植物を山狩りや沖漁に行く時に徳利の栓として用いることで何日たっても水の味が変わらなかったと言う。さらにこの植物の持つ強い香臭は病魔を遠ざけるとし、煎じて常用すれば身体を健康に保つことができると信じていた。なお二日酔いにも効いたとの証言もある。野生のセタエントは強い生命力を持つ一方、栽培が難しく手に入りにくいともされている。しかしアイヌはその栽培をもしていたとの記録もある。

薬効として知られるのは、利尿、血行をよくする、発汗作用などであり、また風邪のひきはじめや水腫、吐き気、下痢、脚気にも効用がある。アイヌは数百種類もの薬草を使いこなし生きてきた。その知恵は風邪を引いたらすぐに薬局の薬に頼ると言った我々のそれの何倍もの価値がある。

※近代化という強制の中で、残るべきもの知識や経験が受け継がれなくなったものもある。

#ainu

参考資料:

1. 日本語名:ナギナタコウジュ
2. 《図鑑の小窓20》エンド(ナギナタコウジュ)のつっぺ
3. 《アイヌの有用植物を食べる 9》ナギナタコウジュ
4. 先住民族が滅びる民というなら、先に滅びるのはきっと私たち

私が愛用するのは白老宏友会 ポプリのエント茶だ。

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