日本：上野動物園生まれのシャンシャンの中国出発とパンダの住む環境

1匹のパンダが2017年6月12日11時52分、上野動物園で生まれた。当時の体重は178.9g、体長は16.4cmだった。メスのジャイアントパンダはシャンシャン（香香）と名付けられた。花開く明るいイメージから「香」という名になったと言う。父親はリーリー（力力）、母親はシンシン（真真）、ともに臥龍保護センターで生まれた。

ジャイアントパンダ保護研究センターといえば、かわいいパンダの動画で何かと話題になる場所で別名パンダ基地と呼ばれることもある。この研究所では飼育下のパンダを野生に戻すプロジェクトなども積極的に取り組んでいる。人間による森の森林伐採で生息域は狭められ、狩猟もまたパンダを絶滅危惧種に追いやった。森との深い依存関係を持つ生物にとって森は命であり、それなしでは生きられない。パンダだけではない、人間だって、動植物だって全てが微妙なバランスを必要とする生態系の中で生きている。

パンダは中国固有種であるものの日本との関係も深い。中国に最初の唐王朝（西暦618－907年）があった時代、時の皇帝であった唐の太宗の孫は、友好のしるしとして日本に2頭の生きたパンダを送ったとされている。人間の欲望は飽きるところがない。だからパンダがヨーロッパに存在しない生物、さらに、クマとは違うものと確認されるや否や搾取の標的となる。セオドア・ルーズベルトとカーミットの兄弟は1929年4月13日、パンダを外国人初として銃撃した。その後の数年間、米国の博物館はパンダのトロフィーを獲得しようと狩りを行ったことが報告されている。また、パンダの毛皮は高価なハンティング・トロフィー（狩猟戦利品）として、台湾やその他の地域に売却されてきた。

中国が政治的混乱にある時代、合計14頭のパンダが、外国人によって国外に持ち出された（1936年〜1946年までの頭数）。その後中国はパンダを親善大使に昇格させることで外交の道具として利用した。1957年から1983年までに合計24頭がロシア、米国、メキシコ、ベルリンなどにつがいで贈られた。一方の日本には唐の時代以降、1972年になるまで日本にパンダがやって来ることはなかった。1984年になると中国政府はジャイアントパンダを金のなる木に見立て、レンタルという商売を始めた。貸先は動物園やスポーツ・イベントで、年間100万ドルに上る料金で貸与を始めた。

1972年、事実上日本に初めて（唐時代の話は定かではない）オスのカンカン（康康）とメスのランラン（蘭蘭）が上野動物園にやってくることとなる。日本と中国の国交正常化をきっかけとし、友好の証として贈られたパンダは無償提供されたものだった。そして2022年10月28日、パンダ来日50周年を迎えることとなった。なお、パンダの無償提供は既に禁止されている。それは中国のワシントン条約への加盟によるもので、レンタル料はオスとメスのパンダ2頭で1年につき約1億円となっている。

 

ジャイアントパンダは単独行動を好む。大人になると各々明確な縄張りを持つ。そのため大人のパンダが一緒に戯れてというという状況には遭遇しない。ただしオスの縄張りの中には数頭のメスの縄張りを含むこともある。WWFは1974-75年および1985-88年にかけて行われた地理情報システム（Geographic Information System：GIS）を分析し、パンダの生息域が29,500平方キロから13,000平方キロまで減少してしまったことを報告している。これはパンダを愛する一方、彼らにとって生きづらい自然環境を我々人間のエゴが作り出していることに他ならず、また、他の生命の存続をも脅かしている。人間は自然を支配できる存在でもコントロールできる存在でもない。科学や高度技術があるから開発をしても問題ないという言説があるのであるならば、過去を振り返り、その言説が正しく働いてきたかを検証すべきである。

 

シャンシャンは５歳になり繁殖適齢期を迎えたことから中国に戻っていった。

出発当日のシャンシャンは6時15分ごろ起床し、飼育員の誘導で檻の中に落ち着いた様子で入ったという。最初の旅路空港には阪急阪神エクスプレスを貸し切って優雅に向かった。

 

8時半無事に成田空港に到着したシャンシャンはVIP御用達の貨物ビルに移動。

 

 

私が空港のVIPルームでそうするかのように、シャンシャンもまた出国を前に大好きな食べ物を与えられご満悦状態。新たな訪問地に向け心はワクワク感でいっぱいなことでしょう。

なお、パンダ好きな友人の中には昨夜は不安でいっぱいで眠れなかったに違いないというものもいたが、私はそのいつものようにマイペースで素敵な格好で寝ていたのではないかと想像している。何故なら、最後の最後でみんな（私含む）が別れを惜しみに行った時もそうだったからである。

 

赤いジャケットを着たSPに守られながら搭乗口へ。シードベルトでぐるぐるになったシャンシャンはシャンシャン専用（順豊航空）かもしれない飛行機に搭乗、午後12時45分、定刻通り日本を出発した。

 

シャンシャンは午後6時15分ごろで中国・四川省の成都双流国際空港無事空港に到着した。次の故郷まではあとちょっと（とは言え少し遠い）。

 

 

シャンシャンが新しい家についた。長い旅路で疲れたことだろう。休めてたから時差ぼけなどはないのかもだが、いずれにしてもゆっくり休んで早く環境に慣れて欲しいものである。なお現地の気温は8度。東京よりは5度程度暖かそうだ。

シャンシャンは今日から1ヶ月我々がCOVID-19パンデミック中の渡航後そうであったように1ヶ月ほど隔離期間にはいる。

 

シャンシャンは大熊猫研究中心雅安碧峰峡基地（行き方は下に記載）にいる。パンダの街としても知られる雅安にはパンダのオブジェが溢れている。絶景にあふれた土地にある施設は一般見学エリアは大きくなく中央に全長１km程度の道があるだけだ。現時点においてシャンシャンがどこの家に住むかは決まっていない。しかし旅でできた友だちがそうであるように、お互いに生きていれば会える機会はある。さらにもしかしたらパンダボランティアでより近くでシャンシャンを感じることができることになるかもしれない。なおボランティアでは家を掃除したり、食事の準備（竹割）ができる。

ちなみに観光地として有名な成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地は四川省が管理する非営利施設だ。アドベンチャーワールド（和歌山県）は、同センターの日本支部という位置づけにある。

 

生息地の保全活動が進んだこともあり国際自然保護連合（International Union for Conservation of Nature：IUCN）は2016年ジャイアントパンダの危機の度合いを絶滅危惧種（Endangered）から危急種（Vulnerable）に引き下げた。これについては時期尚早とし中国の一部の研究者は抗議した。しかしこの講義は受け入れられることはなかった。

森林を伐採しパンダの生息地、さらに頭数を激減させたのは中国である。しかしながら、自然環境の破壊や劣化を招はグローバル経済も深く関与しているからだ。この点において全ての人に責任があると言える。また、自然が破壊されても人ごととしか捉えられないという無関心さも、理由となる。「かわいい」と感じるだけでパンダを守ることはできない。気候温暖化を嘆いたり、他者に頼っているだけでは生態系の破壊は防げない。

「思いはあるけどどうしたらわからない」「自分一人では変わらない」
残念ながら・・・・
それは言い訳でしかない。

 

◆大熊猫研究中心雅安碧峰峡基地◆

住所：　　四川省雅安市雨城区 邮政编码: 625000　

行き方：　
[バス]
成都 新南門客運中心（地下鉄３号線駅）から雅安碧峰峡行きバスに乗り終点「雅安旅游客運站」で下車。不明な場合は「熊猫基地（ションマオジーティ）｣かを確認すればOK。1時間に1本程度運行、所要時間2時間。
その後ミニバスに乗り換え碧峰峡風景区入口で下車。所要時間30分。

[高速鉄道]
成都西站（地下鉄４号線駅）から鉄道に乗り、雅安長途客運站下車。所要時間70分。
その後バスターミナル「雅安客運站」から、「碧峰峡/上里」行きバスに乗り、碧峰峡風景区入口で下車する。所要時間50分。

 

 

シャンシャン130日齢に関してはこちらから。なお、上野松坂屋ではシャンシャンの中国行きを記念してシャンシャンの写真を組み合わせることで作った垂れ幕を掲示している。

 

参考資料：

1. パンダの生態と、迫る危機について
2. 上野公園のジャイアントパンダ情報サイト
3. パンダ、脱「絶滅危惧」　個体数倍増でもぬぐえぬ不安

ENVIRONMENTPANDA
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