ロシア:ロシア外務省、ルラ・ダ・シルバ主導の和平提案を検討

(Photo by @JanjaLula/Twitter

南米大国のメディアが報じたところによると、ロシアのミハイル・ガルージン(Mikhail Galuzin)外務副大臣は、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領が打ち出したウクライナ紛争の和平提案をクレムリンが「検討している」とし、ブラジリアの紛争における「バランスのとれた政策」を賞賛した。

ブラジルのニュースポータルg1が報じたところによると、ガルージンは「我々は、ウクライナでのエスカレーションを回避し、多国間主義に基づき、すべての関係者の利益を考慮した国際安全保障の分野で誤算を修正するための政治的方法を見つけるために、調停の可能性に関する問題についてのブラジル大統領の発言に留意している」とロシア通信TASSにおけるインタビューで語ったと言う。「我々は、主にブラジルのバランスの取れた政策の観点から、そしてもちろん、現地の状況を考慮しながら、イニシアティブを検討している」とも述べた。

 

1月下旬、ルラはウクライナ紛争の和平合意を仲介するグループの創設に賛成することを表明し、フランスのマクロン(Emmanuel Macron)首相に電話で、ブラジリアを訪れたドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相に直接提案した。ルラは「ブラジルは、間接的であれ、いかなる参加も望んでいない。なぜなら、世界のこの瞬間、我々はロシアとウクライナの間に平和を見出すのに誰が役立つかを探すべきだと思うからだ」と、ショルツとの記者会見で自らの立場を明確にするとともに述べ、中国、インド、インドネシアをメンバーとする「ウクライナ戦争のためのG20」の設立を擁護した。

2月10日に訪れたワシントンでもルラはジョー・バイデン(Joe Biden)にその活動を説明している。バイデンは「両当事者が理解し、この戦争を終わらせることができるネゴシアドールグループを構築する能力のある社会人」を見つけることの必要性を説いている。

ブラジルが提案に入ることの意義は大きい。南米諸国はロシアにとって「戦略的パートナー」であり、モスクワはBRICS、G20、国連、国連安保理(非常任理事国)において「建設的」交流を行っているからだ。

国連(UN)は23日、ウクライナでの戦争の終結を求める決議案を承認した。総会の採決では賛成141票、反対7票、棄権33票で、ブラジルも賛成票を投じている。この投票は昨年までボルソナロ政権がとっていた立場「棄権」とは異なるものである。棄権した33カ国には、BRICSのメンバーである中国、インド、南アフリカも含まれている。しかしガルージンは、米国からの圧力にもかかわらず、ブラジルがウクライナに弾薬を供給していないことを評価している。彼は「ロシアが現在の国際情勢におけるブラジルのバランスのとれた立場を評価していることを強調したい。ブラジルは、米国とその周辺諸国が我が国に対してとった一方的な強制措置を拒否し、キエフ政権への武器、軍事機器、弾薬の供給を拒否している」と述べた。ルラは1月にもブラジルはどちらの側にもつかないこと、ウクライナでの和平を支援するため他国と協力することを表明していた。

 

「equidistance」と表現されるブラジルの伝統的な外交方法に中立的な立場と言うものがある。「ブラジルの外交政策は、普遍主義的なビジョンによって導かれて」おり、それは「全世界と良好な関係を維持し、紛争の調停役となりうる存在と位置づけることだ」とサンパウロのゲトゥリオ・ヴァルガス財団(Fundação Getulio Vargas)のギリェルメ・カサロエス(Guilherme Casaroes)は語った。ルラがロシアのプーチン大統領の侵略戦争を「あからさまな間違い」と評する一方、ドイツのオラフ・ショルツ首相によるウクライナ向けのレオパルド戦車への弾薬供給の要請を拒否したことはこの理論に基づくとされている。ブラジルは「平和の国」であり、19世紀にパラグアイと最後の戦争をした国であるとカサロエスは続けた。もちろんこの背景には経済的な配慮もある。ブラジルの農業は、ロシアやベラルーシからの肥料に大きく依存している。

ブラジルの外交官はここ数日、国際的な相手にこの計画を売り込む努力を強めており、先週ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議では、少なくとも21カ国とこのアイデアについて会談を行っている。

ブラジルのマウロ・ヴィエイラ(Mauro Vieira)外相は、ミュンヘンでの会談中にツイッターを通じ「首相たちは、戦争の現状、紛争に対するブラジルの立場、国連総会で初めて敵対行為の停止を求める決議案が採決された際のブラジルの貢献について話し合った」と発表している。

国連における決議文は、ロシア軍の即時撤退を要求し、「悲惨な人道的結果」を非難し、地域の平和を促進することを約束するものである。ロシアのヴァシリ・ネベンジア(Vasily Nebenzya)国連大使は、この動きは偏ったものだと批判し、NATO(西側諸国の軍事同盟)が第二次世界大戦と比較して紛争を煽ったと非難している。国連による決議文には拘束力がない。だからロシアの侵略も終わらないし、米国による経済封鎖も終わらない(詳細はこちら)。そもそも常任理事国である両国が国連における決議を尊重していない状況だ。そのような状況の中、ブラジルをはじめとした各国は両国間の紛争停止のための呼びかけを行なっている。

匿名のブラジル外交官二人は、とはいえ現時点においてブラジルは提案書なるものをロシアに提示していないだろうことを語っている。

 

参考資料:

1. Brazil’s Lula Intensifies Diplomatic Push for Peace in Ukraine
2. Lula has high hopes for Brazil’s international role
3. Biden-Lula meeting: War in Ukraine high on the agenda
4. Moscow analyzes Brazil’s peace initiatives on Ukraine — Foreign Ministry
5. ONU aprova resolução para o fim da guerra na Ucrânia; Brasil vota a favor e China se abstém

2 Comments

  • miyachan 02/26/2023 at 23:37

    ブラジルは、何よりもまず平和を望んでいる。中立国として、また独立国として尊敬できる外交をしている。日本のマスコミも不確かな戦況や西欧や米国の動きだけでなく、もっとブラジルの毅然たる外交姿勢を報じるべきだと思う。今回のブログは貴重な情報発信ですね。

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    • MARINA 02/27/2023 at 20:15

      協調も必要ではありますが、それは友好関係を築く国の言いなりになることとは違うと考えます。ブラジルをはじめ他国は自らの立ち位置を明確にし、国際平和に向けた自らの貢献、存在を「真剣に」模索しているのではないかと思います。

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