ペルー危機2023:30名のアーティストによる追悼と政権・議会への抗議の歌が発表される

ディナ・ボルアルテ(Dina Boluarte)政権や社会不正義に対し異を唱えた抗議で命を落とした60人を追悼し、30人以上のアーティストが彼らに敬意と政府と議会への拒絶を表明し曲「PRESENTES」を発表した。2023年2月14日のことである。ビデオクリップは、ペルー各地で発生しているデモの様子を撮影したもの。アーティストたちによると、ペルーの現状をひた隠しにする主流メディアに対し、自らが芸術の力を用いて明らかにするというものである。

曲を通じてアーティストたちは現在の「偽りの民主主義」は「終わり」を告げ、今必要なのは「その新しい憲法で」新しい国家を形成することであると述べている。この曲は基本的にスペイン語で作成されているが、途中アシャニンカ語、ケチュア語、シピボ・コニボ語のパートも登場する。

ペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)元大統領が自主クーデターと呼ばれているものを通じて退任した(させられた)後(詳細はこちら)、この国では人権侵害をも伴う混乱が生じている。全国でボルアルテの辞任と総選挙の前倒しを要求するデモが起こり、社会抗議活動に対し武器を伴う弾圧が続いている。なお、ボルアルテはそもそもカスティージョが解任されたら自らも一緒に去るという約束をしていたにもかかわらず、カスティージョの後任としてペルー共和国初女性大統領となった。

死者の多くは、抗議活動が最も激しい南部地域で報告されている。ピウラで抗議活動は過激化しており2月13日、アルト・ピウラの1000人以上のロンデロが参加しピウラ-チュルカナス(Piura-Chulucanas)道路封鎖を行った。抗議行動の一方、救急車や緊急車両の通行は終日許可された。オンブズマン事務所によると、2月13日、全国33ヶ所で封鎖が起きていた。デモ隊と警察との衝突は報告されていない。

https://twitter.com/Cutivalu/status/1625188874510123033

 

オンブズマンの報告(2月10日)によると一連の抗議活動に伴う死亡者のうち48人が衝突による民間人、11人が交通事故や封鎖に関連した出来事で、そして紛争に関連した暴力行為によって警察官1人が命を落としている。一方Minsaが報告した総数1247人の負傷者のうち、854人が2023年1月1日から2月9日までに、393人が2022年12月7日から31日までに負傷している。

政府は対話と抗議する権利の尊重を口にしている。しかし事実はその逆を示している。デモ参加者を「暴徒」「破壊者」と呼ぶ。国立マヨール大学サンマルコス校(Universidad Nacional Mayor de San Marcos)における権力組織の介入は、反響の大きい事例である。警察は戦車で門を突破し、193人を逮捕した。そのほとんどは、抗議する権利を行使するためにやってきており、サンマルコス大学の学生の招きにより大学構内に避難していた人々であった。警察は横柄な態度と過剰な暴力をもって行動し、拘束された人々をあたかも現行犯逮捕された犯罪者のように地面にうつ伏せに寝かせることを強要した。彼らはその後、テロ対策局(Dirección contra el Terrorismo:Dircote)を含む警察署に連行された。

忘れてはならないのは、ペルー国家警察の特殊作戦部門グリーン・スクワッドロン(Escuadrón Verde)の戦術作戦都市情報部隊( Unidad de Inteligencia Táctica Operativa Urbana de la Policía Nacional)であるテルナ・グループ(Grupo Terna)が活動していることである。テルナのメンバーは私服を着ていることと、犯罪地域に紛れ込み、戦術的な作戦情報を使って現場に介入する訓練を受けていることにある。一方ソーシャルネットワークに投稿された動画には、警察や軍隊に守られた私服の人々が公共機関を攻撃し、それがデモ隊の仕業とされるものがある。これが何を意味するかを考えるべきである。

 

上述の通りペルー南部において抗議活動は激しく行われている。リマからは遠く離れたこの地域においては政権や議会がリマのために政治が行われているように見えている。事実リマ中央集権主義の差別的人種主義や、権力を行使・乱用し、紛争を悪化させるだけの極右政権に対する嫌悪感も強い。開発と言う名の下で行われる事業も、周縁の人々の生活の改善につながることも多くはない。また、プーノ(Puno)は、ケチュア族とアイマラ族の強いアイデンティティとプライドが強く、ボリビアと先祖代々のつながりもあり、反中央集権の歴史がある地域でもある。

ボルアルテがこの土地の人々に対し「プーノはペルーではない」と語ったように、偏見も持っている人間も少なくない。スペイン系ペルー人のフジモリスタ下院議員リザルザブル(Lizarzaburu)は、抵抗と先住民のコスモヴィジョンを象徴する紋章であるウィファラ(wiphala)を「チファのテーブルクロス(mantel de chifa)」と呼んで人々を怒らせたが、この挑発的な軽蔑を示す一例である。ウィファラはアイマラ族の旗で虹色から成る。赤 – 大地、橙 – 文化や地域社会など色ごとに異なる意味を持ち、先住民族の団結を示すシンボルとしても利用されている。なお、ボリビアにおいてウィファラは国旗、国歌と同等扱いとされている(憲法第2条第6項)。

多くの人々がペルー政治に対して異論を唱え、抗議活動で弾圧の結果死亡した人々の記憶を辿っている。昨年末Netflix映画「Whitney Houston: I Wanna Dance with Somebody」のプロモーションでスペインのマドリードを訪れたペルー人トランスアーティスト ガド・ヨラ(Gad Yola)もまた「人種差別されたトランス女性として、私は自分の国で起こっている問題を提起したい。今、多くの人々が自分たちの声を聞いてもらうために街で戦っている。そして、それは私が反響したいことでもある。故人が誰なのか、どこから来たのか、どんな背景があるのかを忘れてはいけない」と語っている。

https://twitter.com/somosnativa/status/1605992435598782464

 

PRESENTES  

作曲:Laura Arroyo Gárate
音楽制作:Numen(Santiago Valencia Milla)

 

出演者・ミュージシャン一覧

ピアノ・ボーカル:Laura Arroyo Gárate
パーカッション:Martín Venegas
チェロ、ボーカル:Magali Luque
チャランゴ、アコースティックギター、ボーカル: Jonathan Mendoza
ベース、ボーカル:Oliver Castillo
アンデスハープ、ボーカル:Laurita Pacheco
フルート、アシャニンカ語ボーカル:Naysha
ケチュア語ボーカル:Consuelo Jerí, Rumi Maki, Marino Martínez
シピボ・コニボ語ボーカル:Wihtner Fago
マンドリン:Salvador Sotelo
ボーカル:Nero Lvigi, BDO, Wayra, Zeta Show, Lunandina, Sonandes, Marcústico, Ginno P. Melgar, Leonela Bendezú, Numen, GadYola, Lucho Ramírez, Consuelo Romero, Jorge Millones, Liberato Kani, Petrus Cairo, Francisco Caamaño, Susana Baca, Wendy Sulca, Lobo Gris
女優:Ana Correa, Micaela Távara Arroyo, Hildy Quintanilla (Mashara Teatra – Qinti)

 

ボルアルテ、議会反対にする歌はこちら(#canción_Boluarte)も参考のこと。

参考資料:

1. Artistas por la Memoria – Perú
2. Artistas lanzan canción en homenaje a víctimas en protestas
3. ¿Qué pasa en el Perú? Informe especial de Servindi
4. Rodrigo Montoya “Primera rebelión política en los últimos 200 años de las comunidades quechuas y aymaras en Perú (2022-2023)
5. Inicio » SERVICIO MILITAR » Símbolos Patrios (Wiphala)

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