ブラジル:ソニア・グァジャジャラ、新政権における先住民族省大臣に

(Photo: Paladinum2

ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)新大統領の就任に伴い新設される先住民族省(Ministério dos Povos Indígenas)の大臣にソニア・グァジャジャラ(Sônia Bone de Souza Silva Santos/Sônia Bone Guajajara)の就任が噂されている。先住民族が大臣職に就けばブラジル国政史上初のこととなる。正式なる発表はいまだなされていないものの全国紙Folha de São Pauloデジタルなどがこぞってその可能性を伝えている。ルラの選挙公約には先住民族省の新設と、同省の大臣は先住民族コミュニティによって選ばれるべきというものがあった。ルラの当選とともに、先住民族団体では誰が良いのかということについて、話がなされてきたという。

先住民族リーダーのグァジャジャラは10月、ボルソナロ(Jair Messias Bolsonaro)大統領と元大統領ルラが激戦を交わした大統領選挙と同時に行われた連邦議会議員選で下院議員で当選を果たしていた。同議員選においては先住民族女性による立候補が続いた。国会下院のいても5人が名乗りを上げていた。

 

社会主義・自由党(Partido Socialismo y Libertad:PSOL)から出馬したソニア・グァジャジャラ(48歳)は、マラニョン(Maranhão)州のアラリボイア(Arariboia)先住民の土地で生まれ、幼いころにインペラトリッツ(Imperatriz)に移り住んだ。選挙では出身地であるマラニョンではなく、サンパウロで争った。サンパウロにおいては選挙人団の規模も大きく、出身地からの出馬よりもサンパウロの方が当選の可能性が高いかったことによる。

グァジャジャラは国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサミットでも発言するなど、先住民運動の主要なリーダーの一人として知られる。ブラジル全国の先住民族団体の連合組織(Articulação dos Povos Indígenas do Brasil:APIB)の代表も務めている。今年TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選出されている。またサメラ・サテレ・マウェ(Samela Sateré Mawé)とともに先住民族によるデータ主権の大切さ、データを活用した違法採掘者との戦いを訴えている。

グァジャジャラはApib(Articulation of Indigenous Peoples of Brazil)から大臣候補としてリスト化された3人のうちの1人ではある。彼女以外の候補はジョエニア・ワピチャナ(Joênia Wapichana)、ルラ大統領出馬政党労働者党(Partido dos Trabalhadores:PT)のウェイベ・タペバ(Weibe Tapeba)などがいる。

グァジャジャラが大臣に選ばれれば議員職は休職することとなる。この場合、先住民族代表として下院議員に残るのはミナスジェライス州選出のセリア・シャクリアバ(PSOL)のみとなる。なお現副代表のジョエニア・ワピチャナ(Rede-RR)は下院議員として再選は叶わなかった。敵を作らない人柄としても知られる彼を大臣にと期待する声もあったようだが、現在出てきている情報としてはソニア・グァジャジャラを大臣に、ということのみとなる。

なお、先住民族省についてはそれが何を意味するのかについても議論が必要とされている。結果ルラは移行期間中、省庁の代わりに特別な事務局を作る可能性さえ示唆している。関係者によると、この省は国立先住民族基金(Fundação Nacional do Índio:FUNAI)を母体に、当初はその予算で運営することも可能だという。

 

先住民族に関する事象は多岐にわたる。例えば先住民政策で最大の予算を持つ機関の一つである先住民健康事務局(Secretaria de Saúde Indígena:SESAI)は、保健省に存続させるべきかもしれないし、FUNAIの責任である土地の区画整理は、法律上、裁判所を通さないと批准されない。つまり先住民族に関わる管轄省庁やそのオペレーションが大幅に変更されれば、重要な分野の運用に支障が出る可能性がある。なお現在法務省の下部組織であるFUNAIは新政権発足後先住民族省のもとに移管される予定だ。

先住民族は1988年になるまで「自己決定の能力を持たない人たち」とされてきた。これは先住民族以外のブラジル国民と同等の権利を持っていなかったことを意味する。

 

「先住民はブラジル政府の優先事項ではない」ソニア・グァジャジャラはメディアに語っている。特に先住民族が解決したい優先事項は領土の画定に関するものである。右派・左派政権にとって財界と対立したくないから難儀、話題自体を回避してきた。しかしことの事態は日に日に深刻さを増している。

ガリンペイロ、違法伐採、違法漁業。国境に近い北部では、孤立した先住民のグループが、国際的な麻薬取引の暴力にさらされながら今も暮らしている。ジャーナリストや先住民族活動家が殺害された事件も記憶に新しい。ブラジルは今や先住民族や環境に対する尊厳を軽視する国に成り下がった。

 

ルモンド紙はジャイル・ボルソナロを非難している。それはアマゾン地域での国家の不在を招き、むしろ犯罪を助長させるような政策を行ったきたことによる。「先住民の敵」を公言するボルソナロは極端だったかもしれない。しかし「先住民族はブラジルのどの政府でも優先されたことがなく、先住民族の権利は、議会や大企業、領土へのアクセスや搾取に関心を持つ多国籍企業によって常に脅かされてきた」とグアジャハラは言う。過去におけるルラの政治もそうだ。財界からくるプレッシャーは政治的不一致をおこした。

「ボルソナロはアグリビジネス、土地収奪の正当な代弁者である。どちらがより多く、どちらがより少ないという意味で、一方と他方を比較することはできない。ボルソナロは権威主義を意味し、新たな独裁の危険性がある。かつてのルラ政権とジルマ・ルセフ(Dilma Vana Rousseff)政権では、戦う自由、要求する自由、参加する自由、社会的統制を行使する自由、公共政策を構築する自由があったものの、今回の政権では、これらのスペースはすべて解体されている」とグアジャジャは語る。ルラ自体は先住民族の問題に対してより注意深く、より理解を示している。だから先住民の指導者にとっては、ジルマ政権時代にあったような、先住民の領土における統治能力を回復させることが必要だ。

 

先住民領土に関する問題以外にもこの土地では森林破壊、さらには先住民指導者の殺害や先住民へのレイプ、病気の蔓延など、彼らの生活様式を完全に変えてしまう違法な搾取や侵略の暴力的プロセスが行われている。そのような暴力を起こさせないためにも区画された先住民族の領土の保護を保証することが必要だと彼女は考えている。

グァジャジャラはかつて新省庁設立自体について「アイデアは歓迎するが、歴史的な問題を解決するには不十分だ」と述べていた。そのメッセージの背景に歴史的問題やボルソナロが4年間で発生させた事象全てを解決するのは、大統領交代でも省でもないと考えることによる。

グアジャハラは火曜日(27日)にブラジリアに到着、ルーラと会談し、正式に就任を要請される予定だ。Folha de S. Pauloの情報によると、すでに電話を通じてポジティブなサインがあったとされる。

大統領就任式は1月1日に行われる。同式典には先住民族代表も招待されている。

 

 

参考資料:

1. Sônia Guajajara será ministra dos Povos Indígenas de Lula
2. Ministra dos Povos Indígenas do governo Lula, Sonia Guajajara vê demarcação de terras como prioridade

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