10月2日に行われた大統領選挙第一回投票では過半数の票を獲得できたものはいなかった。そのため得票率の多かった二人、つまり政権復帰を目指すルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)と現職のジャイル・ボルソナロ(Jair Messias Bolsonaro)が決選投票へと回った。ブラジルの著名な政治学者・歴史家によると本大統領選決選投票は、1985年の軍事独裁政権の終焉以来、同国で最も重要な選挙であるという。ラテンアメリカ最大の国で、「まだ確立しきっていない脆弱な民主主義システム」が危機に瀕しているからである。ブラジル文学アカデミーとブラジル科学アカデミーのメンバーであるジョゼ・ムリーロ・デ・カルバーリョ(José Murilo de Carvalho)はそう主張した。現職大統領への批判としては、COVID-19の流行への対応の誤りやアマゾンの森林破壊の防止に失敗したことにある。また、2期目になると、彼の権威主義的な傾向が強まると考えられる。ただし、ボルソナロに対する支持も根強く、対立する2人の候補者の間で二極化が進み、緊迫した状況となっている。
17時過ぎに全国の投票所が閉鎖され始め、その数分後に選挙管理委員会が再集計を開始した。
18時35分、61.06%の投票所が集計された時点で、ジャイル・ボルソナロは50.10%、36,148,921票に相当する票を積み上げた。一方、ルーラ・ダ・シルバは49.90%(36,008,584票)に相当する票を獲得している。63%の票を集計した結果、ボルソナロの得票率は50.08%で、ルーラの49.92%となり両者の差は縮まった。
En Brasil, a un día de la segunda vuelta de las elecciones presidenciales, la diputada bolsonarista Carla Zambelli amenaza con un arma de fuego a un simpatizante de Lulapic.twitter.com/AeUs8Z9QRH
— Juan Becerra Acosta (@juanbaaq) October 29, 2022
選挙前日ボルソナリスタ副党首のカルラ・ザンベリ(Carla Zambelli Salgado de Oliveira)がルラ支持者を銃器で脅したり、機関銃をぶっ放すという事件もあった。
18時48分、73.45%の表が集計されている。PT党首の得票率は50.13%、43,617,271に相当する。極右指導者はリードを失い、43,388,178票に相当する49.87%を積み上げている。
第1ラウンドでもボルソナロが最初に優位に立ったが、後にルーラが挽回した。その傾向は決選投票でも一緒のようだ(前回記事はこちらから)。その後のルラ優勢状況はスクリーンショットとともにお伝えする。
92.77%の投票所が集計され、ルーラ・ダ・シルバが50.60%(55,742,822票)でジャイル・ボルソナロより有利である。ジャイル・ボルソナロ氏は49.40%、54,419,807票に相当する票を獲得している。
元軍人のボルソナロは、超保守的な右翼の価値観に訴えて大統領再選を目指しているが、ライバルの元労働組合員のルーラは、ラテンアメリカにおける偉大な左翼の代表の一人である。2003年から2011年まで大統領を務め、汚職で有罪判決を受けたが、後に覆されたため、政権復帰を目指している。
ブラジルには133年の歴史がある。そして民衆が選挙に参加したのは1945年のことであった。1950年の第2回投票では、元民間人で独裁者だったゲトゥリオ・バルガスと、1945年に彼の退陣を助けた空軍准将が、軍人、エリート、中流階級の代表として争った。当時、ペロンと比較されていたゲトゥリオは、強力な労働計画を採用し、労働者の支持を獲得していた。1954年には、軍部と民間人の強い反対にあって辞任に追い込まれるとともに自殺している。冷戦によって激化した労働党やナショナリズムとの闘いは、1964年のクーデターと軍事独裁政権(1964年〜1985年)につながった。
今回選挙の結果を受けて発生するだろうリスクは、現職大統領(ボルソナロ)が敗北した場合にのみ発生する可能性がある。過去にも述べているように(詳細はこちら)クーデターを企てる実業家がいたり、トランプが米国で行ったようなサーカスショーが行われる可能性は否定できないことによる。一方軍隊は彼を支持せず、アメリカ、欧州連合、ラテンアメリカの主要国で外圧が強くかかることも考えられる、そう語るのはジョゼ・ムリーロ・デ・カルバーリョである。彼によるとルーラは、労働者、貧困層、知識人を支持基盤とする新しいバルガスのような存在である。
#URGENTE: LULA (PT) É ELEITO PRESIDENTE, PROJETA DATAFOLHA. LEIA MAIS EM https://t.co/zUqCw90Yw3 #Eleições2022 pic.twitter.com/JPcA5QBoXL
— Folha de S.Paulo (@folha) October 30, 2022
ただし、国は真っ二つに割れている状態だ。誰が当選しても大きな反対勢力に直面することになる。ルーラの場合、労働者党政権時代に発覚した汚職スキャンダルや最高裁で覆った汚職判決がある。前大統領は犯した過ちに対する自己批判をあまりしないまま、再び大統領になろうとしている。また、汚職があったことを決して認めたくなかった彼の政党、労働者党の傲慢さもある。
With the Lula win in Brazil, leftists now lead all across South America.
A new pink tide has overwhelmed the continent. #Eleicoes2022 #EleccionesBrasil pic.twitter.com/ym6g5ApYld
— Shawn "Red Pope" Reynolds (@ShawnGReynolds) October 30, 2022
https://twitter.com/NairnMcD/status/1586849466287390722
98.22%の票を集計した結果、ジャイル・ボルソナロは49.21%で大統領選に敗れた。ルラは50.79%(59,178,110票相当)を獲得して勝利した。選挙管理委員も結果が確定している旨伝えている。
Democracia. pic.twitter.com/zvnBbnQ3HG
— Lula 13 (@LulaOficial) October 30, 2022
For the climate, for the Amazon, the world wants and needs Lula. On the eve of the Brazilian election, a giant projection placed on the Chrysler building in New York says that the WORLD WANTS LULA. pic.twitter.com/WLkvCQRVIz
— ClimaInfo (@ClimaInfoNews) October 30, 2022
選挙直前ニューヨークのクライスラービルには気候変動回避、アマゾンのためには、世界はルーラを求め必要としていと投影されていた。
参考資料:
1. Elecciones en Brasil EN VIVO: minuto a minuto del balotaje Lula Da Silva vs Jair Bolsonaro
2. Elecciones en Brasil: “Es la elección más importante tras el fin de la dictadura por estar en juego nuestro aún frágil sistema democrático”
3. Así han sido las elecciones en Brasil desde la vuelta de la democracia
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