イプソス・ペルー(IPSOS Perú)による8月の世論調査によると大統領ペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)の支持率が5ポイント上昇した。昨年10月以来、毎月支持率を落とし、4月には支持率19%(不支持率76%)になっていたが、今月の支持率アップで今年2月の水準に戻ったこととなる。本調査は8月11日、12日に行われた。対象は全国の都市農村部にいる18歳以上、1247人である。リマに関する質問は同市で行われ、標本は500件である。全国レベルでの誤差は+-2.8%、リマでは+-4.5%だ。
ペドロ・カスティージョについては汚職や犯罪組織との関与を疑われており、現在6件の捜査が行われている。大統領選出身母体のペルー・リブレ(Perú Libre)とも袂をわかち、共和国議会と常に対立している。内閣改造もこの1年で何度も行われており、8月5日にも6人の閣僚が交代となった。カスティージョ政権下で外相は4人、経済財務相は3人が着任している。またアニバル・トレス(Aníbal Torres Vásquez)も内閣を去った。
それでも支持率が上がった。調査結果を地域別で見てみるとペドロ・カスティージョの支持率は7月と比較しても東部地方でほとんど変化が見られない(26%→25%)。一方リマと内陸部では、カスティージョの支持率が5ポイント上昇した。リマでは7月の9%から8月には14%に、内陸部では26%から今月は31%に上昇している。ただし、世論調査の結果54%の人は彼が犯罪捜査に協力的ではないことを指摘している。プエンテタラタIII(Puente Tarata III)事件(詳細はこちら)の容疑者ブルノ・パチェコ(Bruno Pacheco)もカスティージョの犯罪関与を告白している。また、ベデル・カマチョ(Beder Camacho)事務次官の助けを借りてパチェコの逃亡をコーディネートした疑惑もある。元共和国大統領府秘書官であるパチェコは4ヶ月の逃亡の末、最近司法制度に出頭し、さまざまなことを最近語っている。プエンテタラタIII事件とはアマゾン熱帯雨林に橋を建設する公共工事をめぐり、入札条件を満たしていないコンソーシアムによる受注があったと言うもの。カスティージョが入札に際して便宜を図った疑いが持たれている。
世論調査では「カスティージョがウゴ・チャベス・アレバロ(Hugo Chávez Arévalo)のペトロ・ペルー(Petroperú)社社長着任にあたって金銭を授受したかと思うか」という質問もしている。これに対しては52%が「本当だ」と答え、33%が「嘘だ」と考えている。チャベス・アレバロは2021年10月8日に就任していたものの、2022年3月21日に退任しているが、ペトロペルー社社長就任以前は、共和国議会経済委員会顧問室長を務め、「ペトロペルー社強化・近代化法」(28840法)の承認を実現した人物である。国立サンマルコス大学(Universidad Nacional Mayor de San Marcos)経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程、同大学院経済学研究科博士課程(世界経済管理専攻)を修了し国営企業のトップを務めた彼は辞職にあたって、経済・財務大臣オスカル・グラハム(Óscar Graham)によるサポートが不足していたことを理由に述べているしかし、バイオディーゼル商社であるヘブン・ペトロリアム(Heaven Petroleum)社との間での黒い取引も現在調査対象となっている。
ヘブン・ペトロリアム事件とは同社代表サミール・アブダエ(Samir Abudayeh)が官邸を訪れた後、ペトロ・ペルーとの間でバイオディーゼル販売契約が好条件のもと締結されたと言うもの。ヘブン・ペトロリアムに有利働くよう政府が動いたとされており、カスティージョも官邸で関係者と会談を持っている。会合からちょうど3日後、ペトロ・ペルーは工場の修復のための燃料購入ののサービス注文を発行している。総額7400万ドルの契約だ。なお、バイオディーゼルに関する契約は現在は破棄されているが、その理由にヘブン・ペトロリアムが納期を遵守していないことによる。約束が守れなかったのは、ロシアのウクライナ侵攻でバイオディーゼル生産に必要なヒマワリ油が入手できなかったからだと同社は説明している。しかし侵攻があったのは、最初に納入の遅れが報告されてから8日後の2月24日であり、ヒマワリ油のみならず原料にもなる大豆油の不足に関する説明も筋が立たない。専門家は「大豆油はコモディティであり、マーケットからの調達が可能で、さらに世界最大の生産国であるブラジルでも、2位の米国でも、中国でも、アルゼンチンでも、パラグアイでも、どの国でも買うことができる。雨が降っても、干ばつでも、畑が火事でも、国際市場で代替品があるから、(納品ができなかったことへの)不可抗力の理由にはならない」と説明している。
カスティージョはプエンテタラタIII事件、ヘブン・ペトロリアム事件のほかに、軍事的地位の上昇と税関税務局(Superintendencia Nacional de Aduanas y de Administración Tributaria:SUNAT)での便宜供与、自身の疑惑調査追求の情報チームが結成されたことを受け内務省のマリアノ・ゴンサレス(Mariano Gonzáles)大臣を解雇したこと(司法妨害の疑惑)、また、自身の修士論文作成不正の疑いで調査されている。
中南米12カ国のオピニオンリーダーのうちカスティージョを支持しているのは15%。ベネズエラのニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro Moros)大統領(5%)やキューバのミゲル・ディアス=カネル(Miguel Mario Díaz-Canel Bermúdez)大統領(14%)に次ぐ指示のなさも先日公表されている(詳細はこちら)。
81% de peruanos desaprueba al Congreso de la República, y 13% lo aprueba. @cuarto_poder @noticiAmerica #IpsosPeru pic.twitter.com/ao6YJVCu9b
— Ipsos Perú (@ipsosperu) August 15, 2022
なお議会に対しても国民は不支持を示している。7月26日に選出された中道で進化のための同盟党(Alianza para el Progreso)レイディ・カモネス・ソリアーノ(Lady Mercedes Camones Soriano)に対する評価も59%の不支持といった状態だ。なお、同日第1副議長には右派人民勢力党(Fuerza Popular)からマルタ・ルペ・モジャーノ・デルガード(Martha Lupe Moyano Delgado)が、第2副議長にできるぞペルー党(Podemos Perú)のディグナ・カジェ・ロバトン(Digna Calle Lobatón)が、第3副議長にわれわれはペルー党(Somos Perú)のウィルマル・エレラ・ガルシア(Wilmar Alberto Elera García)が選出されている。議長の選出は議会規則第12条に基づくもので、2022~2023年会期にて上記メンバーが務める。
イプソスの世論調査ではペドロ・カスティージョの辞任を61%のペルー人が、また、2026年まで任期を続けるべきと考えるペルー人が36%いた。
参考資料:
1. Hugo Chavez Arevalo resigned from Petroperu’s general management
2. Pedro Castillo: company allegedly benefited after meeting with president breaches Biodiesel delivery contract
3. Aprobación de Pedro Castillo sube cinco puntos pese a investigaciones: Ipsos Perú
4. Lady Camones será la nueva presidenta del Congreso de la República
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