エクアドル全国スト2022:18日後のストライキを経て交わされた約束

6月30日(木)18日間続いたエクアドルにおける全国ストは一時中断となった。これはエクアドル先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)の要求に対して一定の回答を政府が提示したことによる。大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)は「私たちは、私たち全員が熱望する最高の価値、すなわち国の平和を達成することができたと述べた。合意内容は10項目にわたる。これは先住民が提示した要求各々へ回答したということを意味する。

エクアドル司教協議会(Comité Empresarial Ecuatoriano:CEE)の仲介で、両者はキトにある同協議会の本部で会談を行った。大統領の代表団には、フランシスコ・ヒメネス(Francisco Jiménez)内務大臣、イバン・コレア(Iván Correa)行政長官、フアン・カルロス・オルギン(Juan Carlos Holguín)外務大臣、ファビアン・ポソ(Fabián Pozo)大統領府法務秘書官が含まれていた。先住民族運動を代表して、CONAIEのレオニダス・イザ(Leonidas Iza)会長、全国農民・先住民・黒人組織連合(FENOCIN:Confederación Nacional de Organizaciones Campesinas, Indígenas y Negras)のガリー・エスピノザ(Gary Espinoza)会長、エクアドル福音主義先住民族・組織協議会(Consejo de Pueblos y Organizaciones Indígenas Evangélicos del Ecuador:FEINE)のエウスタキオ・トゥアラ(Eustaquio Tuala)会長、そして、司教会議議長のルイス・カブレラ(Luis Cabrera)師とカトリック教会の権威者が出席した。合意内容は以下のようなものだ。

 

合意事項

1. ガソリンと軽油、ともに現在の価格から15 セント下げる。これによりガソリンは2.40ドル、軽油は1.75ドルとする。必要な人々への燃料補助金を対象とした政策についても取り組む。

2.石油のフロンティアの拡張に言及した石油政策行政令95号を廃止する。
 本事項については早速7月1日大統領は行動を起こし、法令95を廃止した。本件に関する合意は6月27日(月)にキトのリセオ・マトヴェル(Liceo Matovelle)で行われた交渉の初日に合意されたもの。

 

3.行政令151号は、保護区や考古学的地域、水源保護区での鉱業活動を認めないという意味で改革され、先住民族との自由な事前協議の権利が尊重される。

 

CONAIEが撤廃を要望していた法令には95と法令151がある。全国ストライキでも採掘や石油のフロンティアの拡大中止を求めていた。法令95の廃止で国は炭化水素採掘のフロンティアを拡大することができなくなるが、先住民族の領土が汚染されたり、絶滅したりするのを防ぐことができる。元来より政府は国の経済赤字をアマゾン地帯に眠る石油を用いて補填しようと考えていた。エクアドルの豊かな生物多様性を抱える熱帯雨林やアマゾンには眠る石油価値は数十億ドルと言われており、また、海外からの投資も期待されていた。この政令の廃止は生物多様性保護のみならず、アマゾンの地域や先祖代々の領土の保全を可能とする。先住民運動や活動家たちは、政令第95号がエネルギーや生態系への影響を考えていないことにも懸念を抱いていた。

 

 

4. アマゾン領域循環の組織化に関する法律第66条を改革するための法案を起草する。

5. 政府はCONAIE、FEINE、FENOCINの要請に基づき行政令を作成した。

 452:物価を上昇させる投機的なプロセスを防止するため、知事がオペレーションとコントロールメカニズムを強化することを規定する。

 454:健康上の緊急事態を宣言する。

 456:人間開発バウチャーを55ドルに引き上げる、あるいは異文化間バイリンガル教育の予算を増やすなど、農村部と都市部の補償的な公共政策を提案する。

 462:軽油とエキストラオイル、エコパイスの価格を0.10ドル低き下げる。

 

6. 社会的な平和が戻り次第、いくつかの州で発布されている非常事態を解除する。

7. 90日以内に今回ストライキを通じて求めた10件の要求のうち保留されているものを話し合うため保証人との対話テーブルを持つ。

8. 規定に従い先住民運動は、動員を停止し、領土へ帰還すること。また平和を乱す行為の停止を宣言する。

 

フランシスコ・ヒメネスも述べているように今回の合意はパーフェクトなものではない。そのため最善策を決定していくために引き続き両者の対話が必要だと認識している。

ギジェルモ・ラッソは全国的なストライキの収束を経て国営放送を通じて短いメッセージを発表し、「今こそ、傷を癒し、エクアドル人の間の分裂を乗り越え、エクアドルの再建という一つの目標に向かって団結する時」であると述べた。また、「今日達成した平和を、すべての人のための進歩、幸福、機会に変える」ために働き、「失われた時間を取り戻す」ことを目指すと述べるとともに、田舎や地方が「国家の優先課題」になると言い切った。

 

なお政党パチャクティックが全国スト時にCONAIE代表を狙った銃撃があったことを明かしている。

2022年のエクアドル全国ストに関する他の記事はこちらから。

 

 

参考資料:

1. Estos son los compromisos del Gobierno y del movimiento indígena para terminar el paro nacional que vivió el país durante 18 días
2. Guillermo Lasso: “Hemos alcanzado el valor supremo al que todos aspiramos: paz en nuestro país”

 

 

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