コロンビア大統領選挙2022:裁判所大統領選討論会開催を指示

6月19日次期大統領の決選投票を前にして討論会開催の判決が出た。コロンビアでは大統領選を前にして緊張感が高まっている。その一つに討論会の開催問題があった。

両候補とも第一回投票前からいくつかの討論会を欠席していた。決選投票キャンペーン時においても両者による直接討論の機会はなかった。討論会に関する論争の発端は、ロドルフォ・エルナンデス(Rodolfo Hernández)候補にある。彼は討論会に参加しないことを表明し、6月1日以降、ブカラマンガ(Bucaramanga)の自宅からほとんど出ず、ソーシャルネットワークにフォーカスした選挙活動を展開している。ヘルナンデスは「私は討論会には参加しない。なぜなら、このような偏向的で憎悪に満ちた力学には参加したくないからだ」と述べている。

両者による討論会が開催されないことを受け市民社会は誓願書を全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral:CNE)に提出した。これについてCNEは要請を棄却している。それは候補による討論会は必須ではないことによる。CNEは「この規範は、候補者に選挙討論会の開催義務を課すものではなく、むしろ、メディアシステムにそれぞれの共同要請を提出し、前述の要件を満たすことによって、候補者が討論会を開催できるようにするものである」と述べていた。

 

CNEへの申し立てと同時並行的に行われたボゴタ高等裁判所への市民によるトゥテラ(tutela※)に対してボゴタ高等裁判所は、大統領候補に対し討論会の開催を命じた。「第2ラウンドの前に大統領討論会の開催を求めることは、市民、国民として誰もが持っている権利」であり、また、「選ぶ権利、選ばれる権利は、立候補を表明することにとどまらず、それを超えて、私たちが選ぶときには十分な情報と責任ある決断をするために必要な情報と判断基準を持っている必要がある」と原告の一人、カタリナ・サンチェス・ダニエルズ(Catalina Sanchez Daniel)は語った。裁判所によると討論会が開催されなければ候補者たちは政治的憲法第40条に定められた基本的権利を侵害することになる。それは国民は大統領選の討論会などを通じて、政治権力の形成に参加する権利を有することによる。また、裁判所は新政府の計画は候補者のウェブサイト上で市民に公開されているものの「インターネットにアクセスする可能性がない、あるいは文書で提示された付言事項を理解できない」人もいることからこのコミュニケーションの仕組みだけでは、適切または十分とは考えられないと述べている。そのため「候補者が全国ネットのテレビまたはラジオチャンネルに出演し、討論会を企画・運営する」よう裁判所に求めた原告側に同意した。

この判決を受けグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)は「司法は候補者間の大統領討論会を命じた」と述べるとともにその処分を受け入れた。一方のエルナンデス氏は「討論会への出席は、共和国大統領候補の義務ではない」と引き続き述べている。

 

最新の世論調査では2名の候補者への支持は拮抗しており、対面での討論は大きな期待を生む。討論会は両陣営が合同で行われる必要があり公共メディアであるRadio Televisión Nacional de Colombia(RTVC)がこれを放送しなければならないと判決が下されている。

なおグスタボ・ペトロの娘ソフィア(20歳)の発言が物議を醸している。自分たちが勝たなければ、2021年よりもひどい社会的爆発が起こるだろうと述べたことによる。この発言は、ソーシャルネットワーク上で批判を浴びるとともに、多くのコロンビア人を脅威に陥れた。これに対してエルナンデスは「ペトロの娘は、もし自分たちが勝たなければ、暴力的な行動を取ると脅している」と述べている。ソフィアは保守政権しか知らない国で、元M-19ゲリラの左翼指導者の娘として生まれた。これは彼女が厳しい状況の中で生活していたことを意味する。生まれて以来父親であるペトロは左派の政治家であったし、そのために家族は膨大なセキュリティの下で生活せざるをえなかったのだ。彼女はこれまで付き添いなしに家を出ることすらできなかった。だから3年前に高校を卒業しフランスに留学することになったとき、初めて自由を感じたと言う。今、彼女は大学のプロジェクトの一環として、父の大統領選挙キャンペーンに同行するために戻ってきている。

決選投票まであと3日。どのような未来が待っているのだろうか。

 

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※トゥテラ(tutela):コロンビアでは憲法上の基本的権利(生命、健康、教育、人格の自由な発展、意見、宗教の自由など)が、公的機関や特定の私人の作為・不作為によって侵害されたり、脅かされたりした場合に、その権利を直ちに保護するために司法当局に提訴することができる。

 

参考資料:

1. Campaña de Petro ya hizo solicitud para debate con Rodolfo Hernández
2. Rodolfo Hernández y Gustavo Petro no están obligados a ir a debates: CNE
3. Un tribunal ordena a Gustavo Petro y a Rodolfo Hernández asistir a un debate presidencial
4. Juzgado ordena a Gustavo Petro y Rodolfo Hernández asistir a debate presidencial antes de la segunda vuelta presidencial
5. Sofía Petro: “Considero a mi papá un hombre en deconstrucción y eso es una gran victoria para el feminismo”

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