コロンビア:ELN司令官、3月13日の選挙に向けた停戦を発表

(Photo by Pueblos Revista de Información y Debate

 

国民解放軍(Ejército de Liberación Nacional :ELN)の司令官エリント・チャモロ・アコスタ(Eliécer Herlinto Chamorro Acosta、通称アントニオ・ガルシア(Antonio García))は3月4日、翌週3月13日に行われる立法府選挙を前に停戦を行うと発表した。ELNは声明の中で、「これはコロンビアに対するジェスチャーであり、政治的解決と変革に対する我々のコミットメントを再確認するものだ」と述べ、「平和と大多数の利益をもたらす変革の選択肢を常に拒否してきた」イバン・ドゥケ政府に対するジェスチャーではないと語っている。

ゲリラが本日発表した声明によると、停戦は3月10日の0時に始まり、「同月15日の午前0時に」終了する。4年前の立法府と大統領選挙の際にもELNは停戦を宣言しており、その時はこの国における近年の歴史の中で最も平穏な時期であったとされている。ゲリラは自らが自主的に決定した一方的な停戦であり「もし我々の部隊が攻撃されたり、彼ら(政府)が停戦を利用しようとしたりすれば、我々は自衛する権利を留保する」と付け加えている。

この発表を受けて、ディエゴ・モラノ(Diego Andrés Molano Aponte)国防相はELNによる本決定は「彼らが選挙に影響を与え、偽りの和平交渉を開始したり、社会的な恩赦を得たいがために、政治的なアピールとして実施しているもの」であると述べた。

ELNによるこの発表は、彼らが3日間にわたり行った「武装ストライキ」の1週間後に行われた。国内何箇所かで実施されたストライキの期間中、脅迫や爆発物を用いたインフラへの攻撃があった。交通や商業の麻痺が発生し、12人が負傷している。

国防相はまた、ELNによる「武装攻撃」は「コロンビア人の移動と平和に影響を与え」ており、「これらテロリストのような人間による声明は、政治的な目的を持ったものあり、我々は公権力とともに、今日もこれからも、治安を保証することに専念する」と語った。行政府は選挙に向け、治安の維持のために21万人の治安部隊を自由に使えるようにする。

立法府の選挙では、下院と上院の改選とともに、5月末に実施される大統領選挙での勝利を目指す主要ブロックの予備選挙も行われる。インバメール(Invamer)社の世論調査によると、大統領候補である歴史同盟(Pacto Histórico)のグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)上院議員などを含む左派連合は、この予備選で38%の得票率を得、トップを占有するとされている。コロンビアのためのチーム(Equipo por Colombia)は19.1%、中道左派連立の希望センター(Centro Esperanza)の得票率は14.5%だ。どこに投票するか現時点で「わからない/答えない」、「どの協議にも参加しない」と答えた人の割合が28.4%と著しく高い。これはコロンビアの政治シナリオにおいて革新的であるこの種の複数政党・複数候補者連合に対する無関心、あるいは市民の知識不足の表れと言えるかもしれない。なおドゥケ(Iván Duque)大統領の政権に対する不支持率は70.7%に上り、国民の悲観論が強まっている。

大統領予備選挙に関して言えばインバメールによって行われた世論調査によると第1回選挙、第2回選挙とすべてのシナリオにおいてペトロが勝利するとされている。ペトロは左翼運動の同盟の内部協議を席巻している。大統領選の第1ラウンドでライバルの3倍、4倍を記録し、第2ラウンドでもライバルを大きく上回っている。グスタボ・ペトロが指名を確保したように見えるが、昨年11月に実施された世論調査と比較すると、わずかに劣勢となっている。その時の投票意向は82.4%で、調査を実施した2022年2月分では78.6%に下がっている。それでも、歴史同盟の他の候補との差は歴然だ。2位はフランシア・マルケス(Francia Márquez)で13.5%(3ヶ月前は7.5%)、以下、カミロ・ロメロ(Camilo Romero)5.9%(前回4.5%)、アレリス・ウリアナ(Arelis Uriana )1.7%(前回2.8%)、アルフレド・サード(Alfredo Saade)0.3%(前回無得点)の順となっている。

コロンビア国民は3月13日に投票に行き、上院と下院の全議席と下院で武力紛争の犠牲となり空席となった16議席を選出する。また5月25日に実施されるコロンビア大統領選挙に向け同日大統領選候補者選出投票が行われる。その結果を受け各派が候補者を絞り込む。

ペトロの勝利については調査会社セントロ・ナシオナル・デ・コンスルトリア(Centro Nacional de Consultoría)の世論調査結果においても示されている。「明日大統領選挙だったら、誰に投票するか」という問いにおいても27%が急進左派で元ボゴタ市長への投票意思を示している。

ちなみに大統領選挙にはイングリッド・ベタンクール(Íngrid Betancourt Pulecio)も候補として参加すると表明した。グスタボ・ロハス・ピニージャ(Gustavo Rojas Pinilla)軍政下で教育相を務めた父ガブリエル・ベタンクール(Gabriel Betancourt)、元ボゴタ選出の下院議員でミス・コロンビアだった母ヨランダ・プレシオ(Yolanda Pulecio)の元に生まれた彼女は下院および上院議員として国民の人気も高かった。2002年に出馬した大統領選挙期間中にコロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia:FARC)に誘拐され、2008年に、FARC内に潜伏していた政府軍工作員たちによる作戦で解放されている。解放後の彼女はフランスに亡命していた。中道派連合に属する緑の酸素党(Partido Verde Oxígeno)から出馬する彼女は上述の通り国民的知名度は高い。5月の投票で勝利した場合、汚職と貧困に取り組むと公約している。ただ、富裕などに優位な政策を取るだろうと見られていることもあり、厳しい選挙戦を戦わねばならない。この国では不平等が故の不満は高まっており、2021年にも大規模な全国ストライキが行われている。

Semana.02.02.2022 Intencion… by Semana

 

昨年5月時点の世論調査はこちら

 

参考資料:

1. Eln anuncia cese al fuego por elecciones del 13 de marzo
2. El ELN anuncia un alto el fuego durante elecciones legislativas colombianas
3. Encuesta Invamer: Petro gana en todos los escenarios, en primera y segunda vuelta
4. Ingrid Betancourt: Former Farc captive announces presidential bid
5. Cómo ha cambiado intención de voto de los colombianos para Presidencia

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください