(Photo by Ministerio Ambiente Ecuador)
シティグループは長年にわたり、アマゾンでの石油開発への融資において中心的な役割を担ってきた。エクアドル、ペルー、コロンビア、ブラジルの国営石油会社に融資を行う最大の外国銀行となっており、彼らによる融資と投資は地球上で最も生物多様性の高い原生林で石油フロンティアを拡大するリスクと結びついている。これらの森林には何百万人もの先住民が住んでおり、彼らの権利は侵害され、地域社会の水路や空気を継続的に汚染され、文化もまた脅かされている。
石油開発の影響を直接受ける先住民族は、エクアドル・アマゾン先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonia Ecuatoriana:CONFENIAE)やアマゾン流域先住民族組織調整団体(Coordinadora de las Organizaciones Indígenas de la Cuenca Amazónica:COICA)とともに、「アマゾン石油・ガス撤退キャンペーン」を展開しており、アマゾン生物圏での石油・ガス融資を排除することを約束するよう銀行に求めている。NGOのアマゾンウォッチ(Amazon Watch)とスタンドアース(Stand.earth)が主導しているこのキャンペーンは「アマゾン・フォー・ライフ」の戦略の一つともなっている熱帯雨林の永久保護を求める先住民主導のイニシアチブ「2025年までに80%保護」にも取り組んでいる。なお、先住民族たちは化石燃料を地中に埋めておくようずっと訴えてきた。
シティグループによる出資は結果として、汚職、公害、森林破壊、先住民の権利侵害に関連しており、気候変動のリーダーとしての評判とはかけ離れたものになっていると、各団体は声明で述べている。気候変動対策はING、クレディ・スイス、ナティクシス、ソシエテ・ジェネラル、BNPパリバ、インテーザなどのヨーロッパの銀行がリーダーシップを発揮しており、2025年までにアマゾンの80%を保護するという国際要請に沿って、エクアドル国内における石油産業や石油取引への融資の終了を約束している。なお、米国の銀行はまだ一行もコミットしていない。シティによるこれらの投資は同グループにおけるサステナビリティへのコミットメントや、同行の最近の気候変動へのコミットメントと矛盾していると言う。
"Indigenous leaders and representatives from the nine countries that share the Amazon basin on Monday met in Quito to call on regional governments and others around the world to guarantee protection for 80 percent of the rainforest by 2025." @coicaorg https://t.co/33u6qXCuEk
— Amazon Watch (@amazonwatch) March 18, 2022
なおシティは2016年から2020年にかけて石油・ガス会社に対し、推定438億ドル相当の融資・投資を行なってきたとされちる。一方アマゾン川流域の国有石油会社には、この間外資系銀行と最大の60億ドル超の金融取引を行ったとされている。国有石油会社とはブラジルのペトロブラス(Petróleo Brasileiro S.A.:Petrobras)、コロンビアのエコペトロール(Ecopetrol. S.A.)、エクアドルのペトロアマソナス(Petroamazonas EP)、ペルーのペルーペトロ(Perupetro S.A.)などを指す。
アマゾン西部での石油採掘は地元住民や先住民コミュニティにとって、土壌、水、大気汚染など大きな被害をもたらしている。パイプラインはアマゾンからアンデス山脈を越え、太平洋岸まで何百キロも原油を運んでいるが、パイプラインの破裂やそれによる原油流出により河川は汚染され、先住民の生活や健康、食料が何度となく脅かされてきた。2022年1月(詳細はこちら)、2020年4月も事故が起きており何万人もの先住民に影響を与えている。なぜならエクアドル・アマゾンの主要な支流であるナポ川とコカ川に住民は原油で汚染された川に依存し生活をしているからだ。また、油井の燃焼は空気を汚染し、呼吸器系の病気の増加につながっている。公害は食糧難を招き、動物も人間も同様に重金属の生物濃縮を引き起こし、癌やその他の慢性疾患の発生率増加の一因にもなっている。先住民の運動は、すべての新規採掘、計画的拡張、新規探査の中止と、汚染された場所の修復が行われるまで現在の石油生産のモラトリアムを要求している。
2021年11月、エクアドルの国営石油会社ペトロエクアドル(Petroecuador EP)と米企業ハリバートン(Halliburton Latin America S.R.L.)は、コカ(Coca)鉱区とパヤミノ(Payamino)鉱区で14の井戸を掘削する35,515,906.77 米ドルの統合サービス契約に署名した。具体的には生産井7本、再圧入井3本、方向指示井4本を掘削・完成させるというものだ。両油田は現在も日量約4,800バレルの原油を生産している。締結された本契約に記載されている契約期間は8ヶ月。掘削装置の出動日からカウントが開始される。12月からCoca Kプラットフォームで採掘活動が開始され、2022年半ばまで1坑当たり日量平均450バレル、増産分3,150バレルを生産する予定だ。エネルギー・非再生可能天然資源省のフアン・カルロス・ベルメオ大臣は、この契約が石油生産を段階的に増加させることを目的としていると話した。ペトロエクアドルのゼネラルマネージャーであるPablo Lunaは、この掘削装置が必要な技術、運用、環境配慮の基準を満たしていること、また、高い能力と経験を持つ技術スタッフがいることを強調している。
エクアドル大統領ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Alberto Santiago Lasso Mendoza)は、就任後数カ月で石油生産の倍増を目指した改革を開始している。これらのプロジェクトの多くは、アマゾンのジャングルで、原生林が広がり、道路もない場所で実施されている。ヤスニ国立公園生物圏保護区などの保護区においてすらその掘削を拡大し、手つかずの森林や自主的に隔離されて暮らす先住民に近い地域で道路を建設している。2022年約750万エーカー、300万ヘクタール(3万平方キロメートル)の熱帯雨林の石油利権が競売にかけられる予定となっている。
The (in)coherence of @LassoGuillermo
Doubling oil production again means beating an ecosystem that is already on its knees. The consequences will always be the same: poverty and devastating environmental impacts for the #Amazon and the people who live there. https://t.co/qjRt2IDB1e— Amazon Watch (@amazonwatch) March 21, 2022
インフラの老朽化、浸食、パイプラインの敷設路(pipeline right-of-way:ROW)の判断の甘さが故にこの地域では原油流出などの事故が発生しており、数十万人の先住民族の生活に大きな影響を与えているにもかかわらずだ。同国では週に平均2件の油流出事故が発生しており 、また、パイプラインが数十の地震断層を横切り、激しい逆流浸食に直面するルートを通ることを考えると、壊滅的な油流出は今後も継続するしてしまうと考えられる。
https://twitter.com/4cuencas/status/1505616562878877701?s=21
シティグループは、エクアドル政府と長年にわたり関係を築いており、2014年から2019年の間に、94億米ドル相当を投資、結果52.9%の株式を保有している。ペトロエクアドルのような国営企業がは事業資金を調達するために債券発行をしている。シティグループによる出資はエクアドル北東部に位置するヤスニ国立公園(Parque Nacional Yasuní)における石油開発にも関与している。同国立公園は世界屈指の生物多様性地域で、ユネスコからも生物圏保護区に指定されている。公園内には同国で2番目に多い石油埋蔵量となる原油生産井イシュピンゴ(Ishpingo)、タンボコチャ(Tambococha)、ティプティニ (Tiputini)があり、その推定資源価値は 846 万バレルとなる。 2016年、ヤスニITT(ブロック43)からの石油生産が23の新井戸で始まり、2017年末には300万バレルから1600万バレル以上へと5倍に増加した。2019年までにITTはPetroEcuador最大の生産ブロックとなり、139の井戸が設置され、2021-2022年には80以上の井戸が計画されている。今回の侵入は、公園の無形文化財区域を保護するために設定された緩衝地帯から1000フィート(約1300メートル)以内で発生し、そこには自発的に孤立して暮らす未接触の先住民族も住んでいる。
米国の銀行は先住民や自然の権利侵害のリスクに大きくさらされている。これについては報告書「Banking on Amazon Destruction」にも記載されている。そのリスクを排除するにあたってNGOや先住民たちはシティグループに対し以下を提案している。
1. アマゾンの石油融資からの出口戦略を、地理的なものも含めて、直ちに作成すること。
2. 世界的に認められたベストプラクティス「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent:FPIC)」の定義を公式に採択し、苦情処理プロセスを構築すること。
3. 環境・社会・ガバナンス(ESG)リスク評価を、銀行のみを守る消極的な評価から、最も影響を受ける人々を守る積極的な環境・社会リスクの軽減に転換すること。
4. 公害や汚職に関する論争の歴史など、企業の事業活動に基づく企業や取引の審査・禁止プロセスを作成・明確化することで、この地域の汚職と銀行の財務的なつながりに対処すること。
参考資料:
1. ONGs ambientalistas: Citigroup financia millones a compañías de gas en Amazonía
2. Citigroup: Análisis de Riesgos al financiamiento del crudo amazónico
3. Petroecuador y Halliburton firman contrato para perforar 14 pozos en dos campos amazónicos
4. Petroecuador adjudica venta de 360.000 barriles de crudo a empresa china Unipec
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