エクアドル:豪雨による落石で石油パイプライン破損、重油吹き出す

アマゾンのナポ(Napo)県とスクンビオス(Sucumbíos)県の間にあるピエドラ・フィナ(Piedra Fina)地区にある重質原油パイプライン(Oleoducto de Crudos Pesados:OCP)破損とそれに伴う原油流出事故が発生している。

OCPエクアドル(OCP Ecuador S.A.) オペレーションマネージャーのロベルト・グリハルバ(Roberto Grijalva)は声明の中で、「重油パイプラインのチューブに落石したことによる事故は、今年1月28日の午後5時6分にピエドラ・フィナで発生し、石油輸送会社が予見できなかったものである」と声明を出した。事故は現地における大雨が地盤を脆くしたために発生したものと分析されている。今回の破裂は「パイプが直接河川に露出していない場所で発生したため、油の流れは制御されているが、水源に到達する危険性を回避するために集中的に作業を行っている」というが、亀裂部から噴出した原油は周辺の植生を汚染している。なおOCPは全長485km。1日45万バレルの輸送が可能だが、その利用率は43.7%だ。

 

「事故が確認された後、我が社は緊急プロトコルを起動し、環境破壊を避けるために直ちに封じ込め作業を開始し、またインフラへの損傷の程度を評価とともに修理も始めた」とOCPエクアドルは説明し、流出の停止とともに、まだ水源には到達していないことを発表した。なおあわせて本ラインが停止している一方で、他のラインは止めていないことから原油の輸送は停止していないことを述べている。

エクアドル最大の原油パイプラインであるOCPは、民間および外国の生産者とのコンソーシアムによって運営されている。国営石油公社ペトロエクアドル(PetroEcuador)によると、このパイプラインは2021年に平均152,260b/dを汲み上げていた。一方昨年12月、アマゾン地域のキホス(Quijos)川とピエドラ・フィナ川の合流地点において河床浸食とそれゆえのパイプライン損傷への予防措置を講じるため2021年12月8日から31日にかけて原油の輸送を停止し、パイプラインを空にしていた。またペトロエクアドルはエクアドル横断石油パイプラインシステム(Sistema de Oleoducto Transecuatoriano:SOTE)による石油輸送と、シュシュフィンディ(Shushufindi)〜キト(Quito)間パイプラインによる燃料の輸送も停止している。

OCPバイパス工事完了からわずか28日後に本事故は発生した。

石油は本当にこの国に利益をもたらしているのかと問いかけざるを得ない。

https://twitter.com/ddhh_alianza/status/1487226758222987264?s=21

 

なお水源に到達しないようにと言っていたもののエクアドル・アマゾン先住民連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonia Ecuatoriana:CONFENIAE)は「キチュワ族のコミュニティにおける原油流出の影響を示す最初の画像」をTwitterを通じて公開した。そこに映るのはスクンビオス県パンドゥヤク(Panduyaku)という集落周辺には既に川への流出の痕跡があると言うものだ。

https://twitter.com/confeniae1/status/1487526964747550720

 

2020年4月にも同セクターで発生した陥没穴(川底の浸食が原因)がSOTEとOCPのパイプラインを破裂し、数百万ドルの損失を国は被っている。そればかりでなく、105以上の先住民族コミュニティに影響を与える石油流出事故となっている。4月7日突然、ナポ川とコカ川が油と燃料で真っ黒になった。3本のパイプラインが破裂し、過去15年間で最悪の社会環境災害を生み出し、15,000ガロン(約57,000リットル)以上が流出し、12万人以上が間接的に、3万5000人(うち2州にまたがる105コミュニティの先住民キチュワ)が直接影響を受けた。「油が流れてくるのが見える。何が起きているか報告するのを手伝ってくれ。早朝に漁に出た若者が戻ってきたら、体が油だらけになっていた。緊急に助けてほしい」と、油流出事故後、スクンビオス県パンドヤク(Panduyaku)のキチュワ族コミュニティのオルガー・ガロ(Olger Gallo)は助けを求めたという。後方浸食や陥没の原因はサン・ラファエル(San Rafael)滝から9kmのところにあるエクアドル最大の水力発電所コカ・コド・シンクレール(Coca Codo Sinclair)が関与している可能性がある。事故発生当時国はこの事象を認識すらできておらず、何が起きたのかを公式に発表するまでに数時間かかったと言う。一方の先住民たちはコミュニティ・メディアを通じて情報を共有、その結果国内メディアに急速にこの事故が広まったと言う。2010年にダム建設が発表されたとき、環境保護団体はコカ川の流量が減り、滝の水がなくなることを懸念して反対した。そしてこのような防ぐことのできる事故についても警鐘を鳴らしていたと言う。2020年2月2日に発生した滝の崩壊による逆流侵食の加速を前に、予防原則を遵守しなかったSOTEとOCPのパイプラインオペレーターの不作為によって引き起こされたこの侵食被害を、当局は水力発電所が原因ではなく自然現象によるものだと強く主張し続けている。同件については2021年5月21日、憲法裁判所がキチュワ・コミュニティなどが起こした保護のための臨時訴訟を審査すると発表したものの、未だ調査に進捗がない。なお、先住民のコミュニティは流出を警戒せず、漁に出かけて川の水を利用していたため、皮膚疾患や胃腸障害などの影響を受けた。

 

2022年1月の事故を受け、CONFENIAEは「とんでもない。何千人ものキチュワが被った2020年4月の流出事故が解明もされない中、今度は国と企業OCPとペトロエキュアドルの非操作性により新たな流出に直面している」と述べ、再度本件に関しても「正義と賠償」憲法裁判所の判事たちに求めた。

 

https://twitter.com/AcEcologica/status/1487850182901477376

 

[UPDATE] 1月30日 13:08 

原油がナポ川を流れ続けていることをAcción EcológicaはTwitterで報告。OCPは流出を管理できていない。周囲の人間はこの皮の水の魚を食し、水浴びなどもする。もちろん動植物もだ。

 

 

環境庁は石油流出事故当初からこの土地で必要とされる環境修復と除去作業を実施するためのサポートを実施し、監視を行ってきたことを発表している。

[UPDATE] 2月5日 18:00

「家庭がきれいな水を使えるよう供給する。22日から国家危機管理局の技術基準を満たした食料キットの配送も始めた。最初に受け取ったのはナポ川漁師協会のメンバーだった。この支援は、事件が完全に克服されるまで続ける」。事故を起こした同社は声明と共にOCPエクアドルは、29のコミュニティーに86,123リットルの水を届けた。

「キットや水を届けるだけでは足りない。結果を伴う是正を直ちに行う必要がある」と述べるのはエクアドル・アマゾン先住民連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas de la Amazonía Ecuatoriana CONFENIAE)の地域リーダーであるナンキ・ワンパンキット(Nanki Wampankit)だ。コミュニティでは汚染の本当の影響を分析するために、独立した技術チームを立ち上げることを検討している。この調査に基づき民間企業や国に補償を求めることができるからだ。「汚染はなかった、(自らに)責任はないと隠蔽し、自然由来の事故だと結論するべきではない」とワンパンキットは言う。

そもそもそのような補償は数カ月も続かず、一方で生態系への汚染の影響は何年も続く。202047日に発生した原油流出事故でもそうだった。

CONFENIAETwitterを通じ「コカ川とナポ川の河岸にある105以上のコミュニティが、水、食料、物資の支援を必要としている」と原油流出事故被害者への連帯を呼びかけている。食べ物やマスク、お酒など多くを受け入れているようで、回収場所はキトのエクアドル先住民族連合本部(Confederación de Nacionalidades Indígenas del EcuadorCONAIE)、プヨ(Puyo)のConfeniae本部、コカ(Coca)国立アマゾン先住民連盟(Federación de Comunas Unión de Nativos de la Amazonia EcuatorianaFCUNAE)の本部だ。

OCPエクアドルのホルヘ・ブグデリジャ(Jorge Vugdelija)社長は、「今回の事故は遺憾であるが、企業としてこの緊急事態に対処するために効果的に行動しており、コミュニティへの対応と環境の修復に努力を惜しまない」と文書で述べている。同社は、修復作業を支援するために3社と契約し、より多くの人員を周辺コミュニティに送り水、食料、医療を提供していると語った。

OCPエクアドルは、流出した油の84%以上を回収したと推定していて、不可抗力によって生態系に放出された残りの油の浄化に取り組んでいると述べている。

 

[UPDATE] 2月8日 12:00

直接の原因かどうかはわかっていないが、石油で汚染された地域にあるナポ川でアナコンダの死体が発見された。石油が生態系に被害を与えていることは間違いない事実である。

 

参考資料:

1. Caída de roca rompe el oleoducto OCP, en el sector de Piedra Fina
2. Derrame de petróleo en el sector de Piedra Fina, en Napo, se produjo por rotura de tubería del OCP
3. Esto sabemos del nuevo derrame de petróleo en la Amazonía
4. El derrame de petróleo y la triple pandemia que azota la Amazonia ecuatoriana
5. OCP entregó agua y kits de alimentos como compensación a comunidades

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください