キューバ:COVID-19ワクチン ソベラナシリーズまたも医学誌に

医学雑誌「Vaccine」はこの度、キューバ産COVID-19ワクチン「Soberana 01」と「Soberana Plus」の安全性と効き目について掲載した。そこには「ワクチン候補は安全で免疫原性があり、SARS-CoV-2に対する生ウイルス中和抗体を誘導した。 外膜小胞をアジュバントとして使用した場合に最高値が得られた」と結論が書いてある。

ハバナの国立毒性学センター(Centro Nacional de Toxicología :CENATOX)で行った二重盲検無作為化比較試験では、キューバ人ボランティアをランダムに以下3つのグループ(各20人の被験者)に分け、第I相臨床試験を行った。対象は19〜59歳の60人だ。

グループ1: FINLAY-FR-1(50 µgのd-RBDと髄膜炎菌の外膜小胞)
グループ2: FINLAY-FR-1A-50(50 µg d-RBD、3回投与)
グループ3: FINLAY-FR-1A-25(25 µg d-RDB、3回投与)

 

FINLAY-FR-1グループは、同じワクチン候補の3回目の投与(同種スケジュール)またはFINLAY-FR-1A-50(異種スケジュール)を受けるためにランダムに分けられている。本試験の主な目的は安全性と反応原生の評価だった。反応原性とはいわゆる副作用のことで、ワクチン注射部位での局所的な痛み、発赤、腫れと共に、全身や注射部位以外の場所での症状(発熱、筋肉痛、頭痛など)のことだ。次に注目をしていたのは免疫原性(抗原などの異物が、ヒトや他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能力があるか)だった。

あらわれた有害事象の多くは、軽度(63.5%)、誘発(58.8%)、局所(61.8%)であり、ワクチン接種との因果関係は69.4%であった。重篤な有害事象は認められなかった。

フィンレイワクチン研究所(Instituto Finlay de Vacunas:IFV)は、この発表を受け「我々は科学を続けている」と述べている。

 

キューバで開発されたワクチンが医学誌に掲示されたのは初めてではない。2021年9月にも権威ある国際誌「The Lancet Regional Health-Americas」にSoberana Plusに関する記事が掲載されている。この論文の主執筆者であるフィンレイワクチン研究所の研究者兼教授ロランド・オチョア・アッセ(Rolando Ochoa Azze)博士は「このインパクトのある査読付き雑誌での発表は、Soberana Plusの試験結果、特に回復期の患者がSARS-CoV-2の新型(デルタ株など)に再感染するのを予防する役割を持つ」と述べている。本発表はすでにCOVID-19に罹患し、再度感染の可能性がある人を対象にしたワクチンの有用性を調べるために特別にデザインされた初めての臨床試験だった。著者らはSARS-CoV-2に対する既に免疫力を持つ人たちにとって、このワクチンの1回投与が防御ブースターとなり得るという仮説を立て評価した。試験では重篤な有害事象は報告されず、ほとんどが軽度なものだったと言う。最も多かったのは局所的な痛みで、被験者の10%程度が報告されている。最も重要なことは、COVID-19のような新しい病気から回復した人たちへのワクチン接種が安全であることが示されたことだ」とIFVは昨年語っている。

なお非盲検の第I相臨床試験には、COVID-19の回復期で軽症、無症状または不顕性であると診断された22歳から57歳の男女30名が参加した。これらの人物はSARS-CoV-2感染から平均8ヵ月後に本調査に協力をしている。最初の研究では中等症および重症例は除外されているが、代償性慢性疾患の症例は含まれている。

IFVによるとSoberana Plus開発における戦略は、そのワクチンをSoberana 02など異種ワクチンと混合接種した時同様、既に罹患している人に対しても免疫を高めるよう作用させることである。オチョア博士は結果を受け「COVID-19で回復した患者に存在する記憶細胞が、ワクチンの投与で迅速に反応を起こすことが観察できた。また、このワクチンは回復者の免疫力を高めるだけでなく、他のワクチンを免疫した人のブースターとしても有効であることが予見される」と述べている。

 

Soberana Plusが医療雑誌に査読付きで取り上げらたのはこれが初めてだ。また、その専門誌で評価された仮説に関する研究も過去ないことから価値がある。「科学の世界では、査読付き雑誌に掲載されていない研究は有効とは認められない」と述べているのはSoberana Plus第Ⅰ相臨床試験の主任研究者で、本論文の著者の一人であるアルトゥロ・チャン・モンテアグド(Arturo Chan Monteagudo)博士だ。

2月9日現在、キューバでは国産ワクチンSoberana 02、Soberana Plus、Abdalaが34,653,8477回投与されている。10,587,170人がいずれかを少なくとも1回接種しており、そのうち9,358,859人が2回目、9,033,002人が3回目の接種を既に受けている。

キューバでは2021年7月9日、遺伝子工学・バイオテクノロジーセンター(Center for Genetic Engineering and Biotechnology:CIGB)のアブダラ50μgワクチンが医薬品・設備・医療機器国家管理センター(Centro para el Control Estatal de Medicamentos, Equipos y Dispositivos Médicos:Cecmed)より緊急使用承認(EUA)を受けており、その後、8月20日にIFVのSovereign 02とSovereign Plusも緊急使用承認を受け、臨床試験含め急ピッチでワクチン赤書を進めている。

ブースター投与戦略が始まると候補ワクチン(Soberana 01とMambisa)の臨床試験が承認され、医療従事者とリスクの高いグループから始まる4回目のワクチン接種もとっくに始まっている。

 

フランス国会議員26人は1月26日水曜日、フランス政府に対し、特に要求のあった海外領土におけるキューバ製ワクチンの使用を許可するよう要請した。国会議員たちはキューバの保険やメッセンジャー RNA とは異なる旧来からのテクノロジーを用いたAbdalaとSoberana 02 は、対象国の人たちを技術面からも安心させることができるだろう考えている。フランス領グアドループとマルティニークでは前世紀末の約20年間、バナナ農園で殺虫剤クロルデコンが使用されてきており、それが人体や環境に致命的な影響を及ぼしていた。その結果新技術やワクチンへの不信感は根強く残り、予防接種率が低いままだ。フランスではパンデミック対策として可能な限り幅広いワクチン接種戦略をとろうという考えを共有しており、世界保健機関(WHO)が認証中のAbdalaとSoberana 02 にアクセスできれば、これらの国民のワクチン接種率も高まるだろうと強調している。

Pedro Kourí熱帯医学研究所(IPK)がSoberanaとAbdalaのワクチン接種者を対象に行った予備調査では、オミクロン株に対しても高い確率で血清転換が確認されている。つまり、これらのワクチンには、この新しいウイルスの変種に対する抗体を作る能力がある。AbdalaとSoberana 02 の接種者では、90%以上に高い中和抗体が見られることがある。Soberana 01とAbdalaでブースト接種した場合は100%で中和抗体が作られた。

 

ワクチン関連の記事はこちらから。

 

参考資料:

1. Revista Vaccine publica resultados de las vacunas cubanas Soberana 01 y Soberana Plus
2. A randomized, double-blind phase I clinical trial of two recombinant dimeric RBD COVID-19 vaccine candidates: Safety, reactogenicity and immunogenicity
3. 
Soberana Plus en prestigiosa revista The Lancet Regional Health-Americas: “Hay ciencia verdadera e irrefutable en esta vacuna”
4. A single dose of SARS-CoV-2 FINLAY-FR-1A vaccine enhances neutralization response in COVID-19 convalescents, with a very good safety profile: An open-label phase 1 clinical trial
5. Cuba: Más del 88 por ciento de la población ha recibido el esquema de vacunación anticovid completo
6. Diputados franceses instan a su Gobierno a autorizar vacunas cubanas contra la covid-19
7. Las vacunas cubanas generan anticuerpos ante ómicron: Ese éxito no puede llevarnos a la confianza

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