コロンビア:今年既に32名の人権擁護者・指導者が殺害されている

開発平和研究所(Instituto de estudios para el desarrollo y la paz:Indepaz)は、社会的指導者であるテオフィロ・アクニャ(Teófilo Acuña )とホルヘ・タフル(Jorge Alberto Tafur)が殺害されたことを確認した。

アクニャとタフルはコロンビア北部に位置するセサル県(Cesar)サン・マルティン(San Martín)州で武装した男たちに声をかけられ殺害された。目撃者の情報によると、午後9時45分頃、指導者たちは家族と家で過ごしていたところ、突然見知らぬ襲撃者に声をかけられ、数回にわたって発砲された。2人ともマグダレナ・メディオ(Magdalena Medio)地域の社会的指導者であり、この地域の重要な農民コミュニティの一員であった。2日前にこの自治体の農民コミュニティに対する脅迫や嫌がらせを糾弾していた南部ボリバル・中央と南部セサルの相互対話委員会(Comisión de Interlocución del Sur de Bolívar, Centro y Sur del Cesar:CISBCSC)のスポークスパーソンであった。当委員会によると、「この村の農民共同体は警察、サン・マルティン市長、自治体の有名な地主であるウィルメル・ディアス(Wilmer Díaz)という人物から嫌がらせや脅迫を受けていた」。住民議会は、彼らが以前、住居で直接攻撃を受けたこと、そしてテオフィロ・アクニャが司法当局の監視の犠牲となったことを明らかにしている。これらの状況は当局に報告されていたものの、彼らの生活を保護するための策は講じられていなかった。テオフィロ・アクーニャはボリバル南部農民連合会長(Federación Agrominera del Sur de Bolívar)、市民会議(Congreso de los Pueblos)のスポークスパーソンとしても知られている。彼は全国農民コーディネーターにつながる2人の農民指導者とともに、反乱罪などで裁判にかけられていた。一方のホルヘ・タフルはマグダラ南部とサンタンデレスのプロセス代表であり、全国農業委員会のメンバーでもあった。労働組合員としてのキャリアを持ち、全国農民利用者協会(Asociación Nacional de Usuarios Campesinos:Anuc)の闘争に参加、2021年11月には全国農民コーディネーターの全国理事に選出された。

「市民会議」は、さまざまなセクターや社会的アクターが集まる社会運動で、2010年の発足以来、コロンビアで実施された社会動員、特に2013年、2014年、2016年の農業ストライキにおいて重要な役割を担ってきた。CISBCSCも、過去17年間にコロンビアのボリーバル南部地域と中央・南部セザール地域で支持を得てきた社会運動で、各コミュニティと政府との対話を調整してきている。「この2つの国家的犯罪を非難し、社会的組織に対して新しい国の建設のために正当な闘争を続けるよう呼びかける」と、様々な社会的指導組織が声明を発表した。2人が暗殺された後、検事総長はこの重要な人物の殺害捜査のために特別検察官グループを任命したと発表した。一方、国連コロンビア人権事務所は、指導者の殺害を非難し、犯人と首謀者の速やかな解明と処罰を求めた。

この国においては2022年になって既に32名(2月25日現在)の社会活動家が殺害されている。ディルソン・ボルハ・ドミコ(Dilson Borja Domicó)もまた和平協定締結後の先住民の人権擁護などに努めていた。

 

この国では元コロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia:FARC)戦闘員で和平協定締結者も次々と武装集団に殺害されている。

2月24日に殺されたホルヘ・サントフィミオ(Jorge Santofimio)は今年に入って6人目、2016年の和平協定締結後305人目の被害者となる。彼はPNIS Putumayoの協同組合「COMUCON」の会長兼法定代理人であった。なおホルヘと共に署名者も暗殺されている。2月21日にはバジェ・デル・グスマンでファビアン・アレクサンデル・ロドリゲス・スアレス(Fabian Alexander Rodríguez Suárez)が殺された。

https://twitter.com/Indepaz/status/1497034541818593280

 

カルロス・フェルナンド・ラモス・サンチェス(Carlos Fernando Ramos Sánchez)は2月6日にペルーとブラジルに隣接するアマソナス県レティシアで殺害された。レティシアの公道でバイクに乗っていたところ雇われた暗殺者に襲われ、複数銃弾を受けた。開発平和研究所によると、戦時中はニルソンと呼ばれていたこの元FARC(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia)戦闘員は、カケタ(Caquetá)県ミラバジェ(Miravalle)にある「訓練と再組織のための領域空間(Espacios Territoriales de Capacitación y Reincorporación :ETCR)オスカル・モンドラゴン(Óscar Mondragón)」で市民生活への適応にむけた訓練と早期再組織化活動を行っていた。

https://twitter.com/Indepaz/status/1495937715900190733

 

1月30日に反乱軍ではフベナル・バレン・ゴメスとして知られたマリオ・アレハンドロ・エスラバ(Mario Alejandro Eslava)がアラウカ(Juvenal Ballén Gómez)県サラベナ(Saravena)の町で暗殺された。Coorporación Multiactiva Esperanzas de Paz COERPAZのメンバーであった。同日にはレオナルド・マルティネス・ムニョス(Leonardo Martínez Muñoz)もカケタ県サン・ホセ・デル・フラグア(San José del Fragua)のエル・セントロ地区で殺害された。公共施設「Dejavu disco taberna」にいたところを銃で撃たれた。もう一人も負傷している。前日の1月29日、ジョン・ハリオ・ビジャル・バルガス(John Jairo Villar Vargas)はマグダレナ県で殺された。カカグァリート地区とサンタマルタを結ぶマトギロ村で、雇われた暗殺者に襲われたのだ。彼は市民社会適合に向けた手続きを行っていた。

2月12日には午後8時20分頃、ジョン・セバスチアン・リバス・ナルバエ(John Sebastián Rivas Narváez)とレオナルド・アグデロ・ムリジョ(Leonardo Agudelo Murillo)が、令状もなく言葉もなくサン・ビセンテ・デル・カグアン(San Vicente del Caguán)の国家警察のメンバーによって攻撃された。

 

2022年1月28日、キューバとノルウェーはイバン・ドゥケ(Iván Duque Márquez)大統領率いる国家政府に対し、和平署名者への「驚くべき数の殺人」を阻止するための効果的な措置を取るよう求めている。「キューバとノルウェーの保証人は、元戦闘員のための安全保障の構成要素の遵守と実施の低レベルによる違憲状態を宣言した憲法裁判所正法廷の1月27日の判決を知っている」と両国はは述べている。国際的な要求や憲法裁判所の判決にもかかわらず、コロンビアにおける平和条約締結者の殺害は絶え間なく続いている。

2016年8月24日は歓喜極まる日だった。1964年以来続いてきたコロンビア政府と左翼ゲリラコロンビア革命軍(Fuerzas Armadas Revolucionarias de ColombiaFARC)とが和平合意をした日だからだ。当時の大統領フアン・マヌエル・サントス(Juan Manuel Santos Calderón)は政府軍に対しFARCへの攻撃停止を命じ「新しい歴史が始まった。銃撃音は止んだ。FARCとの戦いは終わった」と述べた。ハバナで開かれた和平合意のための式典では政府を代表するウンベルト・デ・ラ・カレ(Humberto de la Calle Lombana)と、FARCの主席交渉人のイバン・マルケス(Iván Márquez)が合意文書に署名した。デ・ラ・カレは「ゴールに到達した」と述べ、「戦争は終わった、新しい時代の始まりでもある。今回の合意はより包容力のある社会への道を開く」と期待を示した。チモチェンコ(Timochenko)、チモレオン・ヒメネス(Timoleón Jiménez)ことFARC最高司令官ロンドニョ(Rodrigo Londoño Echeverri)もハバナで、政府軍への攻撃停止の発令ととも「戦争がもたらした痛みを今あらためて遺憾に思う。今日から新しいコロンビアを建国するために政府と共に尽力していく。政府軍が二度と人民に銃口を向けないように」と語気を強めた。両者の停戦は6月23日当時書記長を務めていたキューバ ラウル・カストロ同席の元、ハバナで行われた。また、民族解放軍(Ejército de Liberación Nacional:ELN)と政府の和平交渉はベネスエラのニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro Moros)大統領が仲介していた。

コロンビアの内戦では推計で22万人が殺害された。700万人以上が戦争の犠牲者となり、500万人以上が家を追われた。和平合意をしたゲリラたちは武装解除し、経済的自立と市民社会に入れるような訓練をしている。カケタのミラバジェに住む元FARC戦闘員たちはコミュニティのメンバーとともにラフティングガイドになるための訓練を受け、オーストラリアで開催されるラフティング世界選手権に参加するなどしている。

 

開発平和研究所はコロンビアで暴力が激化していることを考えると、2016年11月に政府と締結した「和平合意を履行することが解決策」であり「国を軍事化しないこと」が必要だと述べている。アラウカ県では、年初から民族解放軍のゲリラとFARCの反体制派による領土支配戦争が激化し、サラベナで40人以上の死者が出ている。この暴力の波に立ち向かうため、政府はアラウカでの軍事的プレゼンスを強化したが、この地域ではほぼ毎日殺人が起きている。

2020年における活動家(環境活動家)における暴力についてはこちらの記事を参照とのこと。

 

参考資料:

1. Teófilo Acuña y Jorge Tafur, los líderes sociales asesinados en el Cesar
2. ¿Quiénes eran Teófilo Acuña y Jorge Tafur?, líderes sociales asesinados en Cesar
3. Construyendo paz desde la educación en zonas rurales y de reincorporación
4. Excombatientes de las FARC recuperan un predio en Guaviare por intervención de la Procuraduría
5. Sicarios matan en el Amazonas colombiano a otro firmante del acuerdo de paz
6. Denuncian asesinato de los líderes sociales Teófilo Acuña y Jorge Tafur
7. Excombatientes de las FARC recuperan un predio en Guaviare por intervención de la Procuraduría
8. Espacios Territoriales de Capacitación y Reincorporación (ETCR)

 

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