エクアドル:生物多様性保護に韓国国際協⼒団が900万ドルの支援

2月22日(火)午後、ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)大統領は韓国の支援を受け、国立遺伝資源センター(Centro Nacional de Recursos Genéticos)の設立を発表した。センターの目的は、国の重要な生物多様性の保護・保全を目指すこととともに、バイオ産業の成長を後押しするための計画も含まれており、医薬品、化粧品、建築材料、バイオプラスチックなどの特許取得も可能となる。本取組は韓国国際協⼒団(Korea International Cooperation Agency:KOICA)からの資金援助を受けることで実行される。KOIKAは韓国の政府開発援助(ODA)の実施機関で、本センター設立にあたり900万ドルを返還不要で出資する。

 

本イニシアティブを通じ全国に7つのバイオセンターが作られ、教育機関や研究センターとともに遺伝資源の管理・取扱いのためのネットワークが形成される予定で、国立生物多様性研究所(Instituto Nacional de Biodiversidad :INABIO)が運営する。本イニシアティブには少なくとも2,000人の研究者と3,000人の学生が参加するとされている。期間は6年間でアンデス地方のインバブラ(Imbabura)県、ロハ(Loja)県、ピチンチャ(Pichincha)県、海岸地域のサンタエレナ(Santa Elena)県、アマゾン地域のナポ(Napo)県、そして島部ガラパゴス(Galápagos)県でプロジェクトが展開される。期間は6年間。

この提案は、KOICAエクアドルによる国内公募で選ばれた。2021年に評価委員会を通過し、11月には韓国の専門家と綿密な調査が行われこの度の協定締結に至った。

国家遺伝資源バンクとしても知られるこのセンターは将来の世代が研究、分析、保存、改良ができるようにと国家遺伝物質の保管場所となる。遺伝的多様性の保全、生物多様性の持続可能な利用、その利用から得られる利益の公正かつ公平な配分に貢献するため、生態学的、文化的、環境的、技術的、経済的に可能性のある種を優先してエクアドルの貴重な資源の複製を行いそこに収容する予定だ。またバイオテクノロジー分野の活性化のために人工飼育のコレクションも保存し、利用できるようにする。

なお現在INABIOに収容されている古生物、無脊椎動物、脊椎動物、解剖されたもの、地質的なもの、魚類、鳥類、爬虫類、昆虫、水生大型無脊椎動物などの幅広い科学コレクションは、その使用目的が研究、科学、学術目的に限定されている。

ギジェルモ・ラッソはKOICAとの協力協定調印式で「これは生物多様性の問題に関して同国で行われている最も野心的な知識と技術の移転の取り組み」であり「命を守るための政策、行動、合意、努力は、常に政府の優先事項です。だからこそ、今回のような協定はエクアドルにとって非常に重要だ」と述べている。

 

KOICAのディレクターであるハン・クンシク(Keunsik Han)は、このプロジェクトが生物保全のための技術移転や研究所の設備提供も促進すると説明した。2028年まで続くこのプロジェクトにより、エクアドル領土の動植物に関する遺伝情報の収集がデジタル化され、高遺伝学センターのシステムに保存されることになる。

駐エクアドル韓国大使のコ・ボンウ(Bongwoo Ko)は、エクアドル政府による持続可能な開発計画をリードするこの取り組みに参加できることを嬉しく思うと述べるとともに、「韓国とエクアドルの協力友好関係がWin-Winとなるとともに、より強固になることを願う」と語った。

エクアドルの環境大臣グスタボ・マンリケ(Gustavo Manrique)は式典の中で、「このプロジェクトは、国内の動植物や微生物の遺伝物質保護において、画期的な出来事となる」し、「遺伝子の遺産を守ることは、地球上で最もメガダイバースの多い国の一つである我々の遺産とアイデンティティを大切にすること」につながると述べた。また彼は、このプロジェクトを「21世紀のノアの箱舟(arca de Noé del Siglo XXI)」に例え、エクアドルが生物資源の保護におけるパイオニアになることを可能にするものだとも述べている。

ラッソはこの機会に韓国との広範な貿易・投資協定に関する交渉開始への関心を表明した。なお2022年はエクアドルと韓国の二国間関係が60周年を迎える年だ。「国家間の友好の絆を育むより多くの協力プロジェクトを通じて、これを祝うのにふさわしい方法だ」と昨年のINABIO視察の際にも語っている。

 

エクアドルは韓国のみならず、米国とも協力関係を強化しようとしている。麻薬取引との闘いにおける協力関係的意味合いも強いが、ギジェルモ・ラッソと米国下院外交委員会のロバート・メネデス(Robert Bob Menéndez)委員長はリモート会談を行い、2月7日に米国上院に提出された「米国・エクアドルパートナーシップ法2022」について話し合っている。これは包括的な経済成長、民主的なガバナンスの確保、貿易障壁の削減による両国間の協力関係の改善、環境の保護などがその目的だが、大統領にとって、このプロジェクトは「安全保障と国際組織犯罪との戦いにおいて特別な重要性」があると考えている。この点についてはメネデスも触れており。麻薬取引、人身売買、違法漁業などの違法行為に立ち向かうための安全保障分野での協力を拡大するものであると述べている。昨今のエクアドル南部における治安悪化の大きな要因は、この国を介して行われる欧米向けの麻薬密売にあることが大きい。また中国船籍がガラパゴス地域に近い地域に侵入したり、生物も危険に晒されている。そのためラッソはエクアドルの民主主義を強化するためにも、経済成長、環境保全、そして何よりも「汚職と組織犯罪に対抗する能力の拡大」といった具体的な行動を提示していることを歓迎している。メネデスもまた国家の安全保障と組織犯罪との闘いの問題が「相互利益」の問題であることに同意している。上院議員によると「米国議会が国家間の関連性に焦点を当てた規制を承認するのは初めてのこと」で「私の提出した法案は、エクアドルの包括的な経済発展の促進を支援するための包括的な外交戦略の策定を要求するものだ」。法案が通れば麻薬や暴力からの脅威のみならず、環境に対する安全保障の面においても連邦政府機関が後方支援と情報提供に貢献できるようになると言う。なお両国間の貿易においてメネデスは現在エクアドルには適用されていない関税上の優遇措置である一般特恵関税制度(Generalized System of Preferences:GSP)を復活させる可能性を示唆した。

 

 

参考資料:

1. Gobierno suscribe convenio para proteger la biodiversidad del Ecuador
2. Ecuador creará un centro de recursos genéticos con el apoyo de Corea del Sur
3. COREA DEL SUR ESTÁ INTERESADA EN CREAR CENTRO DE INNOVACIÓN JUNTO A LA EPN
4. Autoridades coreanas y ecuatorianas conocen más de la propuesta del Banco Nacional de Recursos Genéticos del INABIO
5. El Senado de EE. UU. busca estrechar la cooperación con Ecuador en la lucha contra el narcotráfico
6. El senador Bob Menéndez habló con Guillermo Lasso

 

 

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