映画 “ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方” で見る生態系の重要性

アニマルプラネットの制作者でカメラマンのジョン(John Chester)と料理家モリー(Molly Chester)の物語。

始まりトッドと出会いだった。ジョンはモリーの反対にあいながらもトッドとの生活を諦めることはしなかった。そのおかげもありトッドは他の200匹の犬とともに殺処分される事から免れた。トッドがジョンと出会いその運命が変わったように、ジョンたちもまたトッド故にその生活を大きく変えることとなる。トッドがいなければみんなに馬鹿にされるような計画を実行に移すこともなかったし、モリーが夢に見ていた田舎での伝統的な農業も実現しなかったかもしれない。

大都会ロサンゼルスのアパートで吠え続けたトッドは未来への伝道師となった。運命とは歯車のようで、1つが回り出すと次の歯車も回りだし、より大きな原動力となる。トッドは原動力を生み出す家族だった。

何もないところには価値がない。何もないところからは何も生まれない、果たしてそうだろうか。何もないように見えるところにも生がある。全ての生に価値はある。その弱まった生命力故に自分では元に戻れなず、死んだように見えているのかもしれない。だからそこにきっかけを与えることができれば、何かが動き出す。

伝統農業を実現することがモリーの夢だった。そのために手に入れた土地200エーカー(東京ドーム約17個分)は荒れ地以外の何者でもなかった。土地は乾ききり、木も生気を失っていた。この土地で共生していただろうミツバチは死に絶え、そこに残されたのは死骸だけだった。それはモノカルチャーが生み出した結果でもあった。

モリーとジョンは環境再生型の農業を営むためにこの土地に唯一残されていた灌漑設備を整備、荒れた土地を耕した。それでも生態系は戻ってこなかった。土壌の質が悪すぎたのだ。どんな専門家も改善策なしと見限ったが、バイオダイナミックスの先駆者アラン・ヨーク(Alan York)だけは違った。そこを「生き返らせよう」と協力の意思を見せたのだった。Regenerative Agriculture + Sustainable Food + Rainwater Harvestingによるとアランの教えは以下4つだ。

 

アランの4原則:

1. なるべく養分のみで閉鎖生態系を作るようにする。
2. 敷地内に景観生態系、すなわち生物多様性を創出する(モノカルチャーとは対照的)。
3. バイオダイナミック製剤の使用を使用する。畑への散布は2回、堆肥製剤は6回(堆肥の中に1回、堆肥の外に5回)。
4. ホリスティックシステム、すなわちすべての生き物の内なる作用に焦点をあてること。

 

荒れ果てた土地に生態系を作り出す作業には困難が伴う以外の何者でもなかった。一つ課題を解決すればまた別の問題が発生する。コヨーテはチキンを殺し、鳥はアプリコットを啄むし、カタツムリは大量発生だ。それでも諦めることなく、じっくり観察していくことで解が見つかった。解はエコシステム、そう、本来の地球の姿に頼ることにあった。

人間中心主義が最も簡単に破壊してきた生態系を再生させることは難しい。それは全ては繋がっていることによる。バランスが一度崩れれば、負の連鎖が始まり壊れていく力が加速する。環境や生態系の汚染や破壊の代償は我々が考えるよりもずっとずっと大きい。

我々は自然を自らと切り離し、自然を他人事と捉え、さも自らを地球の支配者かのように振る舞ってしまいがちだ。でも本当はちがう。我々の社会・経済活動は健全な地球システムなしには成り立たないし、自然は生きるために必要ものを見返りを期待することなしに提供してくれている。つまり我々人類は自然なしに生きることはできないのだ。

生態系の素晴らしさ、力強さを是非この作品を通じて感じて欲しい。自然災害対策への解も見えてくるかもしれない。

 

アプリコット・レーン・ファーム(Apricot Lane Farms)はWWOOF(Worldwide Opportunities on Organic Farms)にも参加しているとのこと。機会があれば是非参加してみたいものである。

なお本作品はAmazon Prime Videoでも見られるが、オンラインで開催中(2022年1月28日~2月10日)の「第1回サステナブル未来映画祭」もおすすめ。

 

参考文献:

1. 映画『ビッグ・リトル・ファーム』:不毛の地を生命の楽園に変えた不屈の男、ジョン・チェスター監督に聞く
2. 答えはすべて、自然が教えてくれる。「自然と共生する農場」ができるまで――映画『ビッグ・リトル・ファーム』

 

 

作品情報:

名前:  ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方(原題:The Biggest Little Farm)
監督:  John Chester
脚本:     John Chester
制作国: 米国
製作会社:FarmLore Films
時間:   91minutes
ジャンル:ドキュメンタリー
 ※日本語字幕あり

No Comments

Leave a Comment

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください