エクアドルにおけるCOVID-19とワクチン接種計画まとめ(〜2021/11)

(Photo by UNICEF Ecuador

2020年、2021年、世界はCOVID-19と言う新種のウイルスに翻弄された。2021年12月10日現在、世界中でコスタリカの人口同等5,279,202人が同ウイルスへの感染によって命を落としている。世界中の死者、重症者、新規感染者数、そして各国の悲惨な状態が報じられるのが日常となった。2020年4月、久しぶりに日本のニュースで取り上げられたエクアドルだったが、それはグアヤキルの街中に死体が大量に放置されているというもので、皆それを見ては戦々恐々とした。人口1700万人を抱えるエクアドルのこの時の新規感染者はわかっているだけでも1日に3,000〜6,000人だったが、見えない敵に怯え、皆パニックになっていた。遺体が収容できる場所もなく、火葬も埋葬もできず、そんな状態に市民がソーシャルネットワークを通じて世界に救いを求めた。これが報道のきっかけとなった。ネガティブな側面が報じられたエクアドルだが、2021年5月をピークに新規陽性者数、死者数が激減し今や1日の新規陽性者数は300名程度となった。ウイルスとの付き合い方がわかってきたこともあろうが、先進国を凌ぐ勢いで国民にワクチンを摂取できた結果だとも言われている。COVID-19へいかに対峙していくかは政策を決定する上でも重要なファクターとなっているが、ある意味どん底にいたエクアドルが、ここまで回復できた軌跡をワクチン接種計画の観点から見ていくこととする。

 

COVID-19発生と2020年の国内の状況

ブラジル、メキシコに次ぐラテンアメリカ3番目のウイルス検出国となったエクアドルにおいて初の新規感染者が確認されたのは2020年2月28日のことだった。2月14日にスペインからグアヤキルに到着していた持病のある71歳のエクアドル女性はロス・リオス県のババオヨ(Babahoyo)に住む家族に会うためこの土地にやってきた。レニン・モレノ(Lenín Boltaire Moreno Garcés)大統領(当時)は国内で感染者が見つかったことを受け2月29日から3月16日まで全土で非常事態を宣言するも、その後もヨーロッパと関係した者の陽性確認が相次ぐも確かな感染ルートは見つからず、また市中でも感染が広がった。国内第一の都市グアヤキルでは市内の病院や霊安室のスペースが飽和状態になり、また、一時死者の火葬や埋葬も追いつかず、遺体が路上に放置された。なおこの時医療従事者の50%程度がウイルスに感染したとも報じられており、そのためプライマリーケアにまで手が行き届かず、医療体制も崩壊するという悪循環だった。街中における遺体の放置対策に政府は警察と兵士から成る部隊を設置した。同部隊を率いたホルヘ・ワテ(Jorge Wated Reshuan)がツイッターを通じ4月12日に発表した情報によると過去3週間で住宅から771、病院から631の遺体をその部隊が回収している。パンデミックが始まってから1ヶ月半で人口440万人のグアヤス州では2019年の同時期よりも13,000人多い16,000人が死亡した。270万人の人口を抱える港町グアヤキルは商業の街としても知られ、常に人流があるのも、感染が急速に広まった理由と考えられている。その後感染拡大は首都キトを含むピチンチャ県へと広がっていく。

レニン・モレノは数度にわたる厳しいロックダウンや入店人数制限、対面授業の停止、曜日別で自家用車の利用制限をするなど様々な策を講じた。なお夜間外出禁止令に背けば、罰金(1回目100ドル、2回目は400ドル)が課され、違反も3回目となると逮捕されるなどと言ったことも行われていたが、それでも劇的なる状況の改善は見込めず、幾度となく感染の波を迎えた。

 

ワクチンの登場

2021年、ワクチンの登場で世の中は少しずつ転機を迎えるようになる。エクアドルにも3月17日に初めてアストラ・ゼネカ製ワクチン84,000回分が到着した。COVAXを通じて入手したものだった。しかし接種は思うように進まず、それどころか保健相の幾人かは家族や関係者、レニン・モレノ夫人や側近らにワクチンを優先的に割り当て接種させるなどと言っ事案も発生していた。不平等に対する国民の非難は強く、また検察当局による保健省への家宅捜索などもあり、大臣の職を辞するものは1人や2人には止まらなかった。パンデミック以来モレノ政権下で公衆衛生大臣を務めたものは6人と目まぐるしく人事が動いた。なおモレノ政権終了時点(5月23日)のワクチン接種率は国民のたった3%でしかなく、ラテンアメリカの中でも最低水準だった。

 

ワクチン接種計画 9/100(Plan de Vacunación 9/100)

ギジェルモ・ラッソ(Guillermo Alberto Santiago Lasso Mendoza)新政権が5月24日に発足すると、公約に掲げていたワクチン接種計画が開始された。それは大統領就任100日後までに900万人(人口の約50%)の接種を完了させると言うものだった。フェーズは4つに分け5月31日からハイリスクグループから接種を開始し、9月1日には目標を達成した。この時のエクアドルは人口100人あたりの1日の接種者数が世界で最も多い国の1つであった。ラッソが一部の予想に反して約束を守りワクチン計画を遂行したのには、ワクチン接種が単に市民の健康を守るためのものではなく、重要な経済プログラムと位置付けていたことによる。事実計画の推進にあたり幾度となく彼はそう述べている。エクアドルでは財政赤字が膨らんでおり、その再建には国民の力が必要となるからだ。なお、混乱なく計画実施するために彼らは既存インフラの活用と、民官学、国際機関の協業に基づいたワクチン流通基盤を構築した。既存の選挙インフラの流用とは例えば大統領選のために整備された選挙名簿をワクチン接種対象者名簿とし、大統領選の投票所だった場所をワクチン接種会場にすることであり、また、ワクチン接種のためのWebサイトとモバイルアプリケーションは全国選挙管理委員会(Consejo Nacional Electoral)が選挙時に作ったもののノウハウを採用した。国民は自らのIDを入力すれば、どこでいつワクチンを受けられるかが確認できるが、選挙時の知識を使えば高いセキュリティレベル下でサービスを提供できるのもそのメリットだった。

 

先住民に広がるワクチンへの恐怖と打開策

この国においてワクチン接種がどれほど進むかは先住民やモントゥビオに依るところも多い。多民族国家エクアドルには先住民族を自認するものは1,018,176人(2010年国勢調査)で、同年の国の人口が1501万人の6.7%を占めていることによる。また一般的に先住民たちは新種のウイルスへの免疫も少なくまた密着して生活しているから、一度誰かが感染すれば甚大なるリスクにさらされることとなる。そのためワクチン接種の推進は彼らを守るためにも必須であった。彼らのワクチン接種を阻害するものにそれへの誤った情報や恐怖心があった。不妊になるなどといったものは日本でも出た噂だが、例えばワクチン接種で (1)死ぬ、(2)モンスターになる、(3)豚が食べられなくなり液体も飲めなくなる、(4)スピリチュアリティが弱くなり病気になる などがあり、先住民には効かないというものもあったし、先住民の民間療法で十分対応できるという認識もあった。ワクチンへの正しい知識と恐怖心払拭のためパンアメリカンヘルス機関(Organización Panamericana de la Salud)や世界保健機構(Organización Mundial de la Salud)、国際連合児童基金(United Nations Children’s Fund:UNICEF)は例えばアマゾン先住民の代表たちと「知識の対話(Diálogos de saberes)」を持ち、その重要性や知識を説き、彼らの持つ疑問への回答など丁寧に行なっていった。エクアドル先住民連盟(Confederation of Indigenous Nationalities of Ecuador:CONAIE)などのバックアップの下ワクチン接種のためのパンフレットや周知のための動画を作成した。ワクチンは常設、週末用センターで提供され、それらへのアクセスが困難な者には、移動式接種会場や医療従事者の派遣で対応をしている。

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2021年11月末の状況と今後

エクアドルで主に使用されているワクチンはシノバックとカンシノで、その次がファイザーだ。12月3日現在国民の76.4%がワクチン接種計画に参加し、66%が必要回数の接種を完了している。その結果、現在の新規感染者は全土で1日に300名程となっている。政府は安全なる授業の再開に向け子供(5歳〜11歳)を対象とした集団予防接種も開始した。ワクチン接種計画 9/100は達成されるも、昨今は接種スピードが鈍化し、また、予防接種が困難であるアマゾン地域での患者が増加している。これらを踏まえ伝統的に活用されているミンガを使い摂取を促進している。高齢の患者や免疫不全症の患者、医療スタッフに対しブースター摂取も開始された。1月からはワクチン接種計画と同様の展開で一般人へのブースター摂取も行われる予定だ。

上述の通りエクアドルにおいては財政赤字の解消のためにも経済の早期立て直しが必要である。また、教育分野などもこの2年間でむらが発生したと考えられる。教育もまた経済成長ときっても切り離せない。また、格差も広がってしまった。ワクチンの接種が全てということではないが、最悪の状況から立て直しを図ってきた政府が一層の経済対策を打てるようにするためにも、新規陽性者数を押さえ込み、国一丸となってよりよい生活を目指していってほしい、そう思う。

なお、12月23日エクアドルではワクチン接種を義務化した。詳細はこちら

 

参考資料:

1. Coronavirus en Ecuador | “Sáquenme de aquí”: la conmovedora historia del periodista que murió de covid-19 y escribió su último relato desde un hospital de Guayaquil
2. Ecuador to administer COVID-19 booster shots to general population in 2022
3. El presidente Lasso lideró el inicio del Plan de Vacunación 9/100
4. Mitos y dudas por la vacunación contra covid-19, en los poblados indígenas
5. Por qué Ecuador vacuna más rápido a su población que el resto del mundo
6. Visiones sobre la vacunación contra la COVID-19 en la Amazonía ecuatoriana

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