ペルー:災害続き、石油流出の次はマチュピチュが襲われる

1月20日夜に発生したクスコ(Cuzco)における大雨は、翌21日6時5分(現地時間)頃アルカマヨ(Alcamayo)川の流量を大幅に増加させた。この雨で発生した地滑りは大きな土石流となり、ペルー屈指の観光地マチュピチュ(Machu Picchu)村を横切りビルカノタ(Vilcanota)川へと到達した。この両河川の氾濫は繰り返し起こっており、20年前にも同様の災害でマチュピチュ地区全土で1ヶ月以上の断水を経験している。

ペルーの国家緊急事態対応センター(Centro de Operaciones de Emergencia Nacional:COEN)によると、少なくとも負傷者4名、行方不明者1名、被災者5名、家屋倒壊2件、商業施設3件、橋4件、鉄道橋や歩道橋など様々な場所に被害をもたらしている。ただしこの地区では今後も雨が降り続くと予測されており被害の拡大も想定される。川のほとりにあるいくつかの家屋やホテルまでもが倒壊の危険があるからだ。

マチュピチュのダーウィン・バカ(Darwin Baca)市長は、マチュピチュの土砂崩れで行方不明になっていフェリックス・エスカランテ(Félix Escalante)の捜査を第一としている。家族や重機を用いてで探しているものの見つかっていない。想像できる最悪の事態は濁流が死体を持ち去った可能性としている。

マチュピチュの町を囲むアルカマヨ川は、ビルカノタ川の支流で、その川岸にはクスコ市とインカの城塞周辺の町を結ぶ鉄道が敷かれている。鉄道を運行するペルーレイル(Peru Rail)は、マチュピチュ地区の線路と駅の被害状況を調査している間、運行を中止するとの声明を出している。なおこの緊急事態による乗客や作業員の負傷者はおらず、また列車の車両にも被害はなかった。被災前、マチュピチュを5時35分に出発した50号列車の乗客は無事にオリャンタイタンボ(Ollantaytambo)駅に到着している。一方オリャンタイタンボを出発した71号列車(5時5分)、81号列車(6時10分)は安全確保のため、当駅に戻っているという。

フェロカリル・トランサンディーノS.A.(Ferrocarril Transandino S.A.:Fetransa)もマチュピチュ地区の鉄道と駅の工学的評価、および地滑りの影響を受けた部分の清掃と修復を実施する間、運行を停止する。

クスコへの移動の代替手段である道路網も大雨の影響を受け封鎖されている。バスの定期便も運休となっていることから、クスコに戻れず数百人の観光客がこの土地で足止めされている。なおハイキングなどでのインカ遺跡へのアクセスも禁止されている。

地元住民や国内外の観光客の救済にあたってはマチュピチュ駅からオリャンタイタンボ駅までの避難列車2便の運行も計画しており、またイドロエレクトリカ(Hidroeléctrica)社から7台のバスも手配されている。列車は、ヘリポートからインカレイル(観光用車両6両)13:00発、ペルーレイル(観光用車両5両、ローカル車両6両)16:00発となっており、観光客はムルチロサ(Multilosa)に集合し、そこから少人数でヘリポートに移動することとなる。

マチュピチュ歴史地区管理局(Unidad de Gestión del Santuario Histórico de Machu Picchu:UGM)によると、インカの都市ラクタ(Llaqta)およびインカトレイルには影響がないことから、鉄道の運行が回復すれば観光客はそれを利用できるとの見解を示した。

国立民間防衛研究所(Instituto Nacional de Defensa Civil Perú:INDECI)は「この緊急事態の推移を24時間体制で監視しており、地方自治体に対し地域および地方の緊急オペレーションセンターを常時警戒態勢に置くよう促している」と述べ、一方、エネルギー鉱山省の緊急事態対応センター(Comité de Operación Económica del Sistema Interconectado Nacional:COES)は町が一部電力不能状態にありモビスター(MOVISTER)の電話網にも影響がでていると警告している。電力サービスの復旧に向けてはすでに技術者が現地入りしている。

ペルー経済はCOVID-19の影響でパンデミック以降大きく後退した。2020年に11.12%下落し、2021年6月までその影響は続いた。国の基幹産業である観光業からの収入に至っては50.45%減となった。ペルー最大の観光地でありパンデミック前には150万もの人が年間に訪れていたインカの城塞都市マチュピチュも、ウイルスの拡大後は約44万7800人のみの訪問となっていた。観光産業の衰退で国は約14億ドルの収入失ったという。

トンガで15日に発生した海底火山の噴火とその影響で発生した高波はこの国に原油流出という大惨事を引き起こした(詳細はこちら)。リマ近郊の海岸地帯や自然保護区域は汚染され、政府は緊急事態宣言も発している。それから1週間もしないうちでの今回の被災となった。

 

参考資料:

1. Inundaciones destruyen vías férreas e interrumpen el acceso a Machu Picchu, en Perú
2. Informan sobre un desaparecido y daños tras lluvias en Cusco, Perú
3. Desborde de dos ríos en Machu Picchu bloquea vías de tren, inunda viviendas y deja incomunicados a cientos de turistas
4. Machu Picchu: huaico deja hasta el momento cuatro heridos, un desaparecido, cinco damnificados y varias viviendas afectadas | VIDEOS

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