9月30日、エクアドルとペルーの先住民組織はアマゾンに暮らす人々やその生態系を健康に保ち、幸福を確保することを目的とした独自の代替開発計画「聖なる流域のバイオリージョナル・プラン2030(Plan Biorregional de Cuencas Sagradas 2030)」を提出した。ここでは環境を悪化させたり、汚染したりする活動なしの発展を前提とした提案が、両国政府に向けに行われている。この手の国を横断した提案は過去の前例がない。
La iniciativa @CuencasSagradas presenta el Plan Biorregional 2030 como una propuesta bioeconómica para la región que determina la urgencia de recuperar 9 millones de hectáreas la selva amazónica a través d un acuerdo que involucre a los pueblos indígenas como principales actores pic.twitter.com/vLUAOSFpFL
— CONFENIAE (@confeniae1) August 27, 2021
提案の一つに先住民組織、市民社会、政府、民間企業が共同で管理する「聖なる流域のための基金(Fondo para las Cuencas Sagradas)」の創設がある。この提案はペルー熱帯雨林開発民族連合(Aidesep)とエクアドル・アマゾン先住民族連合(CONFENAIE)という両国の主要なアマゾン先住民族連合が推進し、アマゾン流域先住民組織調整機構(COICA)や、ワンピス族自治領政府(Gobierno Territorial Autónomo de la Nación Wampís:GTANW)、両国の国境に住む民族グループのアチュアル(achuar)族など、「聖なる盆地」に住むさまざまな民族組織からの支援も受けている。先住民にとって、この取り組みは地球温暖化対策の基本となるとも考えている。
両国はドイツとほぼ同じ面積である約3,500万ヘクタールのアマゾン熱帯雨林を持つ。この土地には60万人以上の人々が住み、世界でも最も生物多様性の高い生態系を擁す一方で、酸素を生産し地球全体の気候調整を行う人類にとっても、惑星にとってもかけがえのない場所である。一方で、天然資源をベースにした開発を進めようとする人間にとっても魅力的な場所である。というのもこの地域には、化石燃料や鉱物が地中に眠っているからだ。
3,500万ヘクタールのうち22.2%はエクアドルとペルーの環境当局によってすでに自然保護区として指定されている。しかし残りの2,050万ヘクタールは未着手のままで、むしろ資源を求めるもの達の違法な侵入、森林破壊と森林劣化など日々様々なリスクに脅かされている。ペルーの先住民族コミュニティは自らの主張する900万ヘクタール以上の土地について、現在コロンブス以前からこの土地に住む人間への土地所有を認めさせるための煩雑で退屈な行政・法的手続きを実施している。
持続的な発展には天然資源に依存した経済や生活から脱し、再生可能エネルギーへの利用へと転じ、果物を化粧品用途として販売するなど、今までとは異なるアプローチが必要となる。「私たちは、私たち全員の長期的かつ永続的な幸福のために、自然を大切にするという原則を取り戻さなければならない。これらの森林は、石油掘削活動や違法伐採、違法採掘などによって大きな脅威にさらされており、生活の質を低下させ、全世界の食料安全保障を脅かしている」と述べるのはAidesepの会長であるウイトト(huitoto)族のホルヘ・バルガス(Jorge Vargas)だ。CONFENAIEの会長アチュアル族のマルロン・バルガス(Marlon Vargas)は、エクアドル政府との「交渉」に応じると述べている。
先住民にとってのアマゾンは単に多くの木が生え動物が住んでいる場所ではない。それは彼らの寺院であり、市場であり、薬局でもあり、彼らの生活の全てはそこにある。
この提案書は9月30日にリマのLugar de la Memoria (LUM)で開かれたイベントでペルーのペドロ・フランケ(Pedro Francke)経済・財務大臣に手渡された。文書を受け取ったフランケ大臣は、この計画が「大きな問題であると同時に、大きなチャンスでもある」と述べた。
なお本構想自体は構想は、エクアドルのギジェルモ・ラッソ大統領が大統領候補だった昨年3月に提示されていたもので、資金調達に際しては「債務スワップ」メカニズムや、従来の採算方式に代わる「生命のための経済」が提案されている。元銀行家のラッソにとって、資金調達などは得意分野ということもあるのかもしれないが、本バイオリージョナル・プランの提案を新大統領は就任後1ヶ月ちょっと経った6月1日には熱心に受け止めていたことがわかっている。このプランには、例えば、地域におけるインテリジェント・シティの開発、河川システムの管理、電力の相互接続、通信の接続などが含まれている。
参考資料:
1. Indígenas de Ecuador y Perú plantean proteger un área del tamaño de Alemania
2. 環境問題/バイオリージョナルなライフスタイルを–環境共生の新世紀に向けて、いま決断すべきこと(木暮 啓)
3. バイオリージョン経済(1) : エコロジー経済学の「 場所」的展開(市原 あかね)
4. Presentan en el LUM “Plan biorregional de las Cuencas Sagradas 2030 en el Perú”
5. Piden a Ecuador y Perú liderar “Plan biorregional” para salvar la Amazonía
エクアドル・アマゾンに住むシュアールを映した作品「カナルタ 螺旋状の夢」に関する記事はこちらから。
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