キューバのグアグアとエクアドルのグアグアの違いについて

「グアグア」と聞いて何を思うだろうか。アヒルの鳴き声、ホルヘ・グアグア(Jorge Daniel Guagua Tamayo)、おっしゃる通り。でも私が1番最初に頭に浮かぶのは「(公共交通機関である)バス」だ。キューバ国内を移動する際にはトラックを意味するカミオン(camion)と共に必須ワードである。「グアグア(guagua)」、響きが気に入っている。だから他国でも、スペイン語の授業であっても可能な限りそれを使うこととしている。

ちなみにキューバではラクダを意味する「カメージョ(camello)」と呼ばれる巨大なバスもあるが、ハバナ・メトロバス(Metrobús de La Habana)と言った交通システムの通称としても使われいるようだ。なお、この見たこともないほどの大きさのバスはソ連時代のバス2台を18輪トラックのトレーラーに連結している。もう少しこのバスについて見ていこう。1960年代までのキューバでは、1日平均1万回のバスが運行されていた。しかしソビエト連邦の崩壊や燃料不足でその姿を大きく変えることとなる。1960年代後半になると支援国喪失に伴うエネルギー不足等は深刻となり、自動車の保有台数が50%減少した。すると首都ハバナでは輸送問題が発生し、課題解決策が必要となった。ここで登場してきたのが輸送人数300人のカメージョと言うわけだ。

 

カメージョ登場の前にはソ連のGAZ-51トラック、チェコスロバキアやハンガリーのイカロス260が輸送網に組み込まれるも、品質も非常に悪く、キューバ人の要望を叶えるには至らなかった。1980年代には、キューバ製の車体に日野エンジンを搭載したいわゆるジロンXXも登場している。なお、輸送手段の不足したキューバではこの頃、自転車タクシーなど代替手段も登場することとなる。

カメージョが開発された当初、182頭のラクダが、ハバナに投入された。M1からM7までの7つの路線をそれがカバーし、路線毎に異なる色(ピンク、青、黄、緑、オレンジ、カルメラ、赤)が塗布された。グレー色のものはバスが不足している路線や人の流入が多い路線の補強的役割を果たした。

ハバナで過去頻繁に見かけたこのユニークなバスも米国による対玖禁輸措置で数を減らすこととなる。メンテナンスに必要な機器、交換部品の不足がバスサービスの品質を低下させたのだ。なおプラスチック製の椅子58席のみしかカメージョにはなく、衝撃吸収のための装置が備わっていなかったから、その乗り心地はいまいちで、大量の人の輸送とともにピックポケットなどの犯罪者をも乗せて運んだ。経験の意味もありそれに乗り込んだこともあったが、東京における朝のラッシュが日常の私には「苦痛すぎる」と言うほどのものでなかったと記憶している。

上述の通りバスの品質が低下してきたこと、2000年の政府による都市交通再開発プロジェクトは、キューバ名物のカメージョを風景から消した。連接式のユートンバス(フレキシブルなシステムで結ばれた2車体のバス)600台は次々にラクダと入れ替わり、多くのカメージョは地方にまわされた。カメージョが最後にハバナを走ったのはWikipediaによると2008年4月19日(日)とされている。

 

テンアメリカ、カリブにおける公共交通としてのバスの呼び名は様々だ。下記が呼び名のリストとなる。

Argentina:   colectivo, ómnibus, micro, bondi (jerga)
Bolivia:  flota, autoca, colectivo, góndola, micro
Chile:   Micro, bus, liebre
Colombia: autobús, microbús, buseta, colectivo, bus, guagua
Costa Rica:  bus, autobús, buseta, chivilla, cazadora, lata
Cuba:   guagua, ómnibus
Ecuador:   bus, autobús
El Salvador: microbús, bus
España:  autobús, bus, autocar, guagua (Islas Canarias), camioneta (Huelva),
       villavesa(Pamplona), trole, urbano, tusa
Guatemala:  camioneta, bus, autobús, extraurbano
México:  camión, chato, guajolotero
Panamá:   bus, chiva, diablo rojo
Perú:   ómnibus, bus, microbús, combi
Paraguay: colectivo, ómnibus
Puerto Rico:guagua, bus
República    Dominicana:guagua, bus
Uruguay:  ómnibus, bondi (jerga)
Venezuela:  autobús, bus, buseta, camionetica por puesto

 

 

ここ最近まで知らなかったが「グアグア」はもう一つの意味を持つ。コロンビアやエクアドル、さらにチリにおけるそれは幼児や子供を意味する。子供たちの鳴き声「グァー、グァー」の擬音語から来ていると言う。キチュアの人も昔から使っていたようだ。

このことを私が知ったのは、エクアドルにグアグア・デ・パン(guagua de pan)と言うものがあると耳にしたことによる。初めバスの形をしたパンのことかと思っていたが、調べてみるとどうやら人の形をしたパンということがわかった。メキシコでいう死者のパン)にあたるもので、11月2日の死者の日に食される。メキシコにも人のようなフォルムをしたパンが、典型的なものは頭蓋骨を表す小さな球体と、骨を表すカニヤと呼ばれる4本の腕で装飾されている。オアハカのメルカドでは顔がついたパンも見かけられる。

 

エクアドルの死者のパンは、砂糖などで可愛らしくペイントされることも多いという。とうもろこしからできた飲み物「コラダ・モラーダ(colada morada)」とともに食される伝統料理は家庭で作って、親戚や友人と交換したり、名付け子に贈ったりするのが習慣だ。農村部の墓地やトゥングラウア(Tungurahua)州などの先住民族のコミュニティでは、先祖との再会の儀式の一環として供物としても使われていると言う。

なお脱線するとコラダ・モラーダはインカ時代に「死者を運ぶ月(Aya Marcay Quilla)」の儀式において生まれた。先住民たちは収穫と種まきを生と死の同義語として捉え、雨季を祝い、亡くなった親族を崇拝し捧げられた。紫トウモロコシ、アンデスのブルーベリー(モルティーニョ)、その他の穀物、根菜、果物で作られた濃厚な深紫色の飲み物のレシピは先祖代々受け継がれている。植民地時代の影響で、サトウキビ(パネラ)の甘みが加わ割ったり、時にはコーンスターチでとろみをつけられることもある。紫色は喪に服していることを意味している。

人形のパンの習慣はコラダ・モラーダとともに昔からあったものだと考えらえれる。植民地化以前キト周辺に住んでいた古代部族キトゥ・カラ(Quitu-Cara)族は、「死者を運ぶ月」のためにトウモロコシをベースにした生地で小さな人間のようなものを作っていた。ただ、いわゆる小麦粉を使った「パン」とは少し異なっていた。その背景に植民地時代までアンデ地方には小麦粉が無かったことによる。パンの中身はさまざまでグアバペースト、ブラックベリージャム、イチジク、チョコレート、ドゥルセ・デ・レチェ(dulce de leche)などを使ったデザートパンのようなものから、チーズやカボチャのピューレなどを使った惣菜系まで幅広い。そして最後にカラフルに飾る。

エクアドルの死者の日生命を祝う土着的な行事として始まったとされている。なぜなら、死を迎えた人間はより良い存在へと変容するだけであり、その旅には友人、家族、食べ物、精神が伴うべきだとされているからだ。

 

参考資料:

1. Colada Morada and Guaguas de Pan: The Past, Present, and Future of Ecuador’s Day of the Dead
2. Ecuador: La colada morada, el cachuelo del comercio
3. Guaguas de pan: su historia y los sitios dónde comprarlas
4. ¿Cómo preparar una guagua de pan en casa?
5. Guaguas de Pan: Una tradición ecuatoriana

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