エクアドル:「Runa Jazz」がもたらすジャズと先住民音楽の融合

先住民伝来の音楽と聞くと、日常的に聞くものと言うよりはちょっと旅行気分を味わったり、気分をリフレッシュするために聴くと言う人も多いかもしれない。もしかしたら少し敷居の高い別世界のものと感じる人もいるだろう。

音楽は万一その歌詞が理解できなくても心に訴えかけてくるし、民族文化を学ぼにも良いきっかけと思うことから、日常遣いのしやすい彼らの音楽を紹介してみることとする。自らの文化と異なるそれを知る事はいたって興味深いことである。

ジャズの好きな人はいるだろうか。今日はルナ・ジャズ(Runa Jazz)を紹介しようと思う。ジャズは良い、色々なシーンで活躍する。

2017年、新しい音楽の領域を探求することを願ったエクアドルの先住民、アフロ、メスチティソたちがグループを結成、グループ名をRuna Jazzと名付けた。このプロジェクトに参加したのはルイジ・ボラーニョス(Luigi Bolaños、ドラムス)、ニコラス・クルス(Nicolás Cruz 、ピアノ)、フアン・ビジャレアル(Juan Villarreal、ギター)、カルロス・キルンバ(Carlos Quilumba、サックス)、ネイリ・カチムエル(Nayri Cachimuel、トロンボーン)、アレックス・パサ(Álex Paza、バンドリン)、フアン・タピアス(Juan Tapias、ベース)、マウリシオ・オチョア(Mauricio Ochoa、パーカッション)、クリ・カチムエル(Curi Cachimuel、アンデスの風(笛))。彼らが目指すのはアンデスの文化的多様性とラテンアメリカの伝統的なリズム、そしてジャズを織り交ぜることだ。民族楽器とメロディーを使って、無数のリズムを探求する。

Runa Jazzのリーダーであるクリは、9人の兄弟と2人の姉妹からなる大家族の出身で、子供の頃から音楽とダンスに打ち込んできた。オタバロ郊外のモンセラット(Monserrat)コミュニティのリーダーであった父ホセ・マヌエル(José Manuel)と母ロサ・エレナ・アマグアナ(Rosa Elena Amaguaña)のサポートは、この音楽家一家を形成する上で必要不可欠であった。

また、彼が音楽の道に進もうと思ったのは兄弟たちの影響にもよる。兄たちもまた音楽に精通し30年程前にグループYawar Waukiを結成、ラテンアメリカ、北米、ヨーロッパにツアーに出ていた。なお、グループ名はキチュア語で血の兄弟を意味する。世界で活躍する兄たちのところに行きたいという思いから、クリ自身も17歳のに兄弟とともに米国へ移住した。フェスティバル、フェア、コンサート、そしてストリートで演奏するようになって行った。Yawar Waukiは後に「思い出」を意味するバンド名Yarinaに変えるが、それは他国の人から発音がしづらかったことによる。

キチュワ語で「黄金の太陽」を意味するCuri Intiは17年間、独学でさまざまな楽器の経験を積んだ。7歳でダンスを始め、9歳で最初の楽器、バンドリンを手にした。チャランゴ、ザンポーニャ、ケーナを習得し、その後アカデミックな世界に身を転じた。その理由をクリは「自分が作っている音楽を他者と共有する必要があり、そのためには他のミュージシャンと同じ言葉で話さなければならないからだ」と語った。

Runa Jazzプロジェクトが誕生したのは、クリがキト・サンフランシスコ大学(USFQ)で音楽の勉強を始めたことによる。音楽大学の教授や学生に呼びかけ、アンデスの文化的多様性とラテンアメリカの伝統的なリズムやジャズを織り交ぜた自作曲を演奏しようと考えたのだ。

大学では、Runa Jazzを形成するミュージシャンとの出会いがあった。パーカッショニストのオチョアが最初に賛同し、その他の7人が次々と加わった。2018年にファーストアルバム「アフロ・キチュア(Afro Kichwa)」をリリースした。そこで表現されるのは北と南の先住民族音楽の伝統的なリズム、アフロ・エクアドル、コロンビア、ペルー、キューバのリズムを持つブラックミュージック、西洋の現代的なハーモニーを持つメスチソミュージックの融合だ。なおクリ自身はコタカチ(Cotacachi)の音楽教育機関であるルイス・ウルピアーノ・デ・ラ・トーレ(Luis Ulpiano de la Torre School)でギター、横笛、サックスに親しみ、音楽のトレーニングも受けている。

 
彼らの音楽体系は世界中の音楽の伝統が混ざり合っていることから1つとして同じものはない。それでも必ず曲に取り込まれている3つの要素が存在する。1つ目はアンデス音楽で、ケナ、バンドリナ、皮製の太鼓、チャチャなどの楽器や掛け声、2つ目にはアフロ音楽との関係で、アフロ・エスメラルデナやアフロ・コテーニャのメロディーが彼らの作曲のリズムの基礎となっていること。そして3つ目には現代音楽性だ。それについてメンバーは「ジャズは即興の自由を与え、音楽の枠組みを壊し、楽器や声を使って探求することがでる」と説明している。

 

彼のバンドは、自らの土地の音楽意外にもスペイン起源のダンスファンダンゴ(fandango)やサンフアン(sanjuan)などからもインスピレーションを受けていてRuna Jazzは2017年にエクアドルのシーンに登場した。このグループはまた、Yarina、Awak Taki、Los Nin、Grecia Albán、Alex Alvearなど多くのミュージシャンとのコラボレーションなどを経て新しい要素を学び、獲得している。

 

先住民族のコスモビジョンやアフロの文化では、音楽は生活に欠かせないものだ。誕生日、記念日、結婚式、そして集団闘争など、人生のあらゆる瞬間を共にしている。音楽は先住民にとって日々の感情表現なのだ、そうクリは自らの文化と音楽との関係を説明した。それ故、Runa Jazzが音楽も日々の生活、家族との共有、人間関係、祖父や祖母の話などから生まれる。なお「Waranka Kanchik(We are thousands)」という先住民の抵抗の過程を歌ったもの、「Shunku Tushuy, Arando en la memoria ancestral」のように伝統的な音楽を取り戻すことをメッセージアウトしたものや、「Pacha Mama」のように自然の豊かさに目を向けさせてくれる曲も発表している。

 

彼らの音楽のバリエーションは限りがない。「Guallupe」はチョタの伝統的なボンバだし、ボサ・ノヴァとサンフアニートが融合した曲「Yarihuangui」は、スペイン語とポルトガル語で解釈された愛のテーマだ。

 

2019年に開催されたJazz Festivalに登場したRuna Jazzのパフォーマンスは下記参照のこと。

 

参考資料:

1.  ¿Qué es el “Afro Kichwa” de Runa Jazz y por qué debemos mantenerlo en el radar?
2. Runa Jazz trabaja en la creación de su segundo álbum
3. Runa Jazz presenta: ‘Arando en la memoria ancestral’
4. Música andina y contemporánea en Runa Jazz

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