Ojalá Que Llueva Caféとラテンアメリカのコーヒー事情

目の前には真っ青な海、真っ白な砂浜が広がり、椰子の葉っぱが風に揺れている という光景に今年もなかなか出会えそうにない。

都心の茹だるような暑さを吹き飛ばしてくれるもの、それはクーラーでもなんでもなく、ジリジリと照らす太陽とラテンミュージックだった。

ジャズを聞くことも多いが、バチャータ、メレンゲなども大好きだ。フアン・ルイス・ゲラJuan Luis Guerra)の曲は、真夏にもよく合う。彼の高く透き通った声が風に乗ってやってくる。涼しさすら感じるほどだ。スムージーを手に取り、その歌声に合わせて踊ってみる。それだけで、暑さを吹っ飛ばしてくれる気がした。

ラテン・アメリカ情勢と引っ掛けて、ここではフアン・ルイス・ゲラの曲を紹介することとしよう。

「Ojalá Que Llueva Café(コーヒーの雨が降ったらな)」は彼の鉄板中の鉄板とも言える歌で、コンサートで一体感を出すためにも使われる曲だ。他のアーティストからも多くカバーされている。私もフアン・ルイス・ゲラのライブで大声で歌ったことを記憶している。スペイン語のテキストにも載っているらしいし、ラテンアメリカを渡り歩くには知っておいて損はない歌とも言えよう。

 

 

Ojalá Que Llueva Café

Ojalá que llueva café en el campo
Que caiga un aguacero de yuca y té
Del cielo una jarina de queso blanco
Y al sur una montaña de berro y miel
Oh, oh, oh-oh-oh, ojalá que llueva café

Ojalá que llueva café en el campo
Peinar un alto cerro de trigo y mapuey
Bajar por la colina de arroz graneado
Y continuar el arado con tu querer

Ojalá el otoño en vez de hojas secas
Vista mi cosecha e pitisalé
Sembrar una llanura de batata y fresas
Ojalá que llueva café

Para que en el conuco no se sufra tanto, ay hombre
Ojalá que llueva café en el campo
Pa que en villa vásquez oigan este canto
Ojalá que llueva café en el campo
Ojalá que llueva, ojalá que llueva, ay hombre
Ojalá que llueva café en el campo
Ojalá que llueva café

Ojalá que llueva café en el campo
Sembrar un alto cerro e trigo y mapuey
Bajar por la colina de arroz graneado
Y continuar el arado con tu querer

Ojalá el otoño en vez de hojas secas
Vista mi cosecha e pitisalé
Sembrar una llanura de batata y fresas
Ojalá que llueva café

Pa que en el conuco no se sufra tanto, oye
Ojalá que llueva café en el campo
Pa que en los montones oigan este canto
Ojalá que llueva café en el campo
Ojalá que llueva, ojalá que llueva, ay hombre
Ojalá que llueva café en el campo
Ojalá que llueva café

Pa que todos los niños canten en el campo
Ojalá que llueva café en el campo
Pa que en la romana oigan este canto
Ojalá que llueva café en el campo
Ay, ojalá que llueva, ojalá que llueva, ay hombre
Ojalá que llueva café en el campo
Ojalá que llueva café

 

この歌は純粋に、田舎にコーヒーの雨が降ったら嬉しいなとか、コップをかざせばいくらでもコーヒーが飲めるなということを伝えたいのではない。彼はこの歌を通じ社会における不平等、それへの解決策としての雨を提示しているようだ。

フアン・ルイス・ゲラはそもそも自身の作品を通じラテンアメリカ諸国が直面している劣悪な環境に抗議し、アメリカの「発見」を祝うことや、グローバル資本主義が人々に与える影響、第一世界の国々のダブルスタンダードについて疑問を投げかけるようなことを何度もしてきている。

雨は田舎の人々に恵みをもたらす。それが降らなければ農作物は育たないし、それがなければ生活必需品でエアルユカ(キャッサバ)と紅茶、チーズにクレソン、蜂蜜も手に入らない。だから神にその恵みを期待するのである。貴重であるコーヒーという恵みが降ってくれば、彼らの生活環境はより良いものになり、より良いシステム、より良い教育が導入され、健康も改善されることだろう。だからこそ神に願うのは祝福であり、神と共にすることで得られる新しい生活なのである。田舎にはおおよそ経済的に貧しい人が住んでいる。神の祝福で、飢えや争い、悲しみから自らが解放されることを期待している。

農村部における貧困層の問題は、食料の不足、医療・教育システムの欠乏だ。都市部のそれは、職がないことや十分な報酬が得らレナいことだ。Ojalá que llueva Caféのメッセージはラテンアメリカの人々のニーズであり2億4千万人の貧困状態で生活している人々の言葉なのである。ラテンアメリカの最貧国では、生まれたばかりの子どもの10%以上が、生後1年以内に死亡していている。

 

この歌で出てくる単語についても見ておこう。

yuca:
ユカ。ユカにはデンプンが豊富に含まれていてタイノ族は「Casabe」と呼ばれるパンを食していた。

Jarina:
小雨。小麦粉(harina)をふるいにかけて振ると小麦粉の霧雨ができる。この比喩から小雨を表すようになった。

Mapuey:
サンコチョ(牛肉、鶏肉、魚などの煮込み料理)の材料となる塊茎。

Pitisalé (petit-salé):
豚(山羊も)のベーコンの一種で、塩漬けにして天日で乾燥させたもの。様々な料理の調味料として使用される。

patata:
サツマイモ

Conuco:
(タイノ族の言葉)自給自足の農業を目的とした小さな土地

 

ラテンアメリカ、カリブ地域におけるコーヒー生産についても見てみよう。

中南米は高い山々と湿度の高い熱帯雨林が混在しているため、コーヒー豆の栽培に最適な気候条件が揃っている。大規模な農園だけでなく、小規模な農園でも栽培可能で、最大の輸出品として多くの人々の生活向上に大きな役割を果たしてきた。(とはいえ、フェアトレードがこの地域でもある意味も考えていただきたい。)

コーヒーの歴史は15世紀にさかのぼる。アフリカに起源を持つそれは世界各地に広まり、18世紀にカリブの国に持ち込まれる。19世紀半ばには、ブラジルが唯一のコーヒー生産国として最も重要な地位を占めるようになった。初期のコーヒー農家は、熱帯林を伐採したり、焼き払ったりして焼いたりしてコーヒー農園を作っていた。その後、何世紀にもわたって蓄積された腐葉土や化学肥料、農薬がコーヒー生産量の増加を導いた。

1989年の国際コーヒー協定の崩壊とそれに続く新自由主義的な改革で、ラテンアメリカのコーヒー産業は経済的にも環境的にも壊滅的な影響を受けた。その後ラテンアメリカにおけるコーヒー生産は、新自由主義改革の最悪の影響を軽減することを目的とした一連の地域的、世界的な貿易協定によって支えられている。

ラテンアメリカ、カリブ地域のコーヒー産業はブラジルとコロンビアが引っ張ってきた。この地域ではアラビカ種とロブスタ種の豆が生産されている。アラビカ種は、標高1200〜1800mの温暖湿潤な気候で育ち、素晴らしい風味と香りを持っている。一方のロブスタ豆は気候の変化に強く、海抜757mまでの高地でよく育つ。ロブスタ種はインスタントコーヒーの原料として最適だ。世界のコーヒーの約60%がアラビカ種で、残りがロブスタ種で構成されている。

最新のStatista 2021によるとブラジルにおける2015/16から2018/19の年間平均生産量は60キログラム袋を5,000万袋、2018/2019年のクロップイヤーには6,300万袋の生産実績を収め、その年の世界のコーヒー生産量の3分の1以上を占めた。その年コロンビアは約1,400万袋を生産し、同地域で2位を記録した。(統計詳細はこちら)ちなみに、フアン・ルイス・ゲラの出身地ドミニカ共和国のそれは、43万袋となっている(同地域12位)。

 

産地における豆の特徴や飲み方は以下の通りだ。

ブラジル:
ほろ苦いチョコレートのような香りと、ナッツのような甘み、そして酸味が少ない。多くのブラジル人はカフェジーニョと呼ばれる強くてとても甘いコーヒーを好み、食事の有無にかかわらず、小さなカップで飲まれる。

コロンビア:
中程度の酸味を持ち、キャラメルのような豊かな甘みがある。甘いコーヒーが好きな人にお勧め。今でこそコーヒー文化はコロンビア人のアイデンティティに結びついているが、それを嗜むようになったのは最近のこと。それはコロンビアの最高級豆は輸出され、国内では余った豆しか手に入らなかったことによる。「ティント(tinto)」と呼ばれる砂糖をたっぷりのブラックコーヒーが飲まれている。

ベネズエラ:
※コロンビアに匹敵するコーヒーの一大生産地でだったが、石油産業の登場で生産量は縮小した。
酸味が少なく、繊細でマイルドな香りが特徴。味が穏やかなこともあり、ストレートのエスプレッソに最適。最も有名なコーヒーは「マラカイボス」と呼ばれるもので、東部の山間部で栽培されるコーヒーはカラカスと呼ばれている。色々な方法で提供される。「カフェ・セレロ(Café Cerrero)」は非常に凝縮されたコーヒー。無糖で飲む。多めの豆を淹れて放置することでカフェイン濃度が高まる。エネルギー不足、眠気を覚ますため、さらには二日酔いの時に飲む。エンベナド(Envenenado)やカラヒージョ(carajillo)は、ブラックコーヒーにブランデーやラム酒を加えたもの。カフェではあまり見かけず、人が集まったときに飲まれる。いわゆるブラックコーヒーは、「ネグリート(Negrito)」、それにお湯を足しライトにしたものは「グアヨヨ(Guayoyo)」という。ミルクコーヒーは高濃度順に「マロン・オスクーロ(Marrón oscuro)」7:3→「マロン(Marrón)」5:5→「マロン・クラロ(Marrón claro)」3:7となる。

グアテマラ:
コーヒーはアンティグアの名でよく知られるものの地元ではあまり飲まない。その優れた品質と複雑な味は世界中にファンも多い。多くの農園で伝統的な方法でコーヒー豆を収穫している。

メキシコ:
ラテンアメリカでのコーヒー生産量4位のメキシコでは、コーヒーにシナモンと砂糖が加わることが多い。材料はコーヒーを淹れた後に加えるのではなく、コーヒーを淹れる過程に組み込まれている。その結果、甘さと辛さが同居したコーヒーができる。

コスタ・リカ:
生産地により味の特徴が異なる。ゆえに希少である。生産されるコーヒーは、フルーティー、チョコレート、甘いなどがある。

ペルー:
マイルドな酸味と非常に軽いボディで、バニラ・ナッツのようなほのかな甘みがある。入手が難しく、ほとんどが栽培地域でしか手に入らないとされている。低品質のコーヒーは市場に溢れている。

エクアドル:国内で消費されることが多い。通常は薄いか中程度のボディとシャープな酸味を持っている。低品位のコーヒーはブレンド用に使用されている。

キューバ:
豆の生産はほぼない。カフェシト(Cafe Cubano)で親しまれてるこれはエスプレッソコーヒーの一種。コーヒーを抽出する際にデメララシュガーで甘みが加わる。(結構甘い)小さいカップで飲む。

 

中南米はコーヒー豆の一大生産地ではあるものの、生活の一部に組み込まれているとはなかなか言い難い。彼らが飲むとしても主にインスタントコーヒーだ。ただ最近ではスペシャルティ・コーヒーの愛好家が増えていて、より高品質なコーヒーが親しまれるようにもなってきた。コーヒー愛好者の行動変容はコーヒー・サプライチェーンにさらなる価値を与えるようになってきた。ペルー・リマにあるル・コルドン・ブルーのような地元の組織はPromPeru(政府)と協力し、スペシャルティコーヒーを提供する店に「スペシャルティ」の証明を与えている。スペシャルティ業界は、より高品質なコーヒーの生産と提供に焦点を当てていることから、それを生産できれば農家がより多くの報酬を得られるようになるというわけだ。

ゲラが歌うように雨、そしてコーヒーがこの土地に恵みをもたらす日が1日も早くくることを望もう。そして彼らの努力と文化を知るためにも、現地で是非スペシャリティコーヒーを手に取って欲しい。時期によってはコーヒー農園に行き、お手伝い なんていうのも面白いかもしれない。

 

Ojalá Que Llueva Caféの作成秘話は以下参照。

 

参考資料:

1. Coffee Trends in Latin America: Analysing PDG Español Data
2. LATIN AMERICA COFFEE HISTORY (EXPLAINED FOR BEGINNERS)
3. Coffee Is Steeped In Tradition Across Latin America, Here Is How Each Country Brews The Perfect Cup
4. COFFEE TERROIR – WHERE IS COFFEE GROWN IN LATIN AMERICA?
5. Mini guía para pedir café a lo venezolano

 

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