映画:”ラテン・アメリカの旅” でディスニーキャラクターと意図ある旅しよう

COVID-19 のパンデミックで旅ができないともやもやとした日々を過ごしている人も多いと思う。私もその1人だが、ここはひとつ、その期間を他国への想いをチャージする日々、自文化の違いを予習する期間と考えたらどうだろう。人気のディズニーキャラクターたちとラテンアメリカを旅するのも悪くない。きっと次の渡航先が見つかるはずだから。

1942年ウォルトディズニーはラテンアメリカを舞台に実写アニメーションパッケージを作成する。米国務省によって作成を依頼されたものだが、これは同国の「善隣政策」「汎アメリカ主義」によるものだった。時の米国大統領フランクリン・ルーズベルトはラテンアメリカへの内政干渉を行わないとする一方で、貿易協定を通じその土地における米国の存在感を植え付けていきたいと言う思いがあった。というのも、第二次大戦直前のこの頃、中南米においてはナチスドイツと密な関係を持っている国があり、米国政府はその関係を断ち切ろうとしていたことによる。なおこれ以前は、米国は自国の利益や経済界の商業的利益を守るためにラテンアメリカ諸国に軍事介入を行っていた。この頃もまた米国は天然資源へのアクセスが阻害されたり、国民のビジネスが脅かされていると感じた折には、武力を用いて各国政府にプレッシャーを与えていた。

その外交政策を成功させるために大使として選ばれたのがウォルトディズニーで、彼の生み出すアイドルは、中南米でもまた人気があった。映画作成のためのツアーは、米州問題調整官(Office of the Coordinator of Inter-American Affairs:OCIAA)に就任したばかりのネルソン・ロックフェラー(Nelson Aldrich Rockefeller)が主導し、ブラジルやアルゼンチンを中心に、チリやペルーなどの南米を訪れた。ディズニー、作曲家、芸術家、技術者など総勢20名の旅団となった。OCIAAには映画部門というものがあり、ジョン・ヘイ・ホイットニー(John Hay Whitney)が率いていた。ここでのミッションはアメリカ社会に蔓延していたラテンアメリカ人に対するステレオタイプを廃止するというものだった。米国においては歴史的、ラテンアメリカ人は、怠け者で、後ろ向きで、疑り深いというイメージがあった。そのイメージの払拭のためにもホイットニーは、映画会社にラテンアメリカ人を雇い入れ、ラテンアメリカを好意的にとらえることのできる映画作品を作らせた。

「良き隣人政策」の時代は、1945年の冷戦の激化とともに終わりを告げ、これ以降今まで停止してきたラテンアメリカに対する不介入の原則は失われ、米国は頻繁かつ積極的に介入をしていくこととなる。この土地におけるソ連の影響力を縮小化にも躍起で、社会主義または共産主義の運動が行われる国々を直接的または間接的に攻撃していった。1954年はグアテマラのハコボ・アルベンツ大統領がCIAによって転覆させられ、1961年にはキューバのピッグス湾に侵攻した(失敗)。1964年のブラジルのクーデターでは民主的に選出されたジョアン・グラート(João Goulart)大統領の退陣を先導し、1965年のドミニカ共和国をも占領した。1970年から73年にかけてはチリのサルバドール・アジェンデ(Salvador Guillermo Allende Gossens)政権に対する執拗なる破壊工作を行い、「チャーリー作戦(中米)」、「コンドル作戦(南米※)」を計画・支援した。1981年から1990年においてはニカラグアのサンディニスタ政権に対するCIAの破壊工作も行ってきた。

ウォルトディズニーによる実写とアニメーションを融合は十一の物語を生む。そしてそれらは2つの作品となって発表されることとなる。一つが「Saludos amigos」、もう一つが「三人の騎士(The Three Caballeros)」だ。

前者は以下の要素からなる。ボリビアとペルーにまたがるチチカカ湖に飛んだスタッフのスケッチから生まれたアニメーション「チチカカ湖(Lago Titicaca)」。インカの末裔達の文化に触れている。「小さな郵便飛行機ペドロ(Pedro, el avioncito)」はチリへと飛んだスタッフのスケッチから生まれ、郵便飛行機のペドロが、初めてアンデスを越え郵便を運ぼうとする姿を描く。「グーフィーのガウチョ(El gaucho Goofy)」はテキサス州のカウボーイ、グーフィーが南米版カウボーイであるガウチョに変身する姿を描き、「ブラジルの水彩画(Aquarela do Brasil)」ではブラジルの自然や文化、サンバの夕べを耳にする。後者はドナルドダックにラテンアメリカの友人から届いた3つの誕生日プレゼントに端を発する物語となっている。

後者の三人の騎士は7つのエピソードからなる。寒さが嫌いなペンギンの物語である「さむがりやのペンギン パブロ (El pingüino de sangre fría)」、ウルグアイを語る「空飛ぶロバ (El gauchito volador)」、ドナルドが陽気なサンバステップを見せる「バイーア (Bahía)」、メキシコのピニャータとクリスマスのエピソードが出てくる「ラス・ポサーダス (Las Posadas)」。ピニャータスから出てきた空飛ぶ絨毯を使って各地を巡る「メキシコ〜パツクアロ、ベラクルス、アカプルコ (Mexico: Pátzcuaro, Veracruz and Acapulco)」「ユー・ビロング・トゥ・マイ・ハート (You Belong To My Heart)」「ドナルドの白昼夢 (La alucinación de Donald)」。

この偉大なる作品集は新たな人気キャラクターも生み出すこととなる。「小さな郵便飛行機ペドロ」はチリの漫画家レネ・ロドルフォ・リオス・ボエティガー(通称「ペポ」)を刺激し、ラテンアメリカ生における普遍的なアイドル「コンドリート」を生み出した。ディズニーが作り出した国鳥の形をしたキャラクター(コンドル)のペドロ(小さな飛行機)がチリ人を軽視しているように彼の目に映ったことによる。

「ラテン・アメリカの旅」は9月3日から9月10日までの間金曜レイトショー(こちら)で無料配信される。同プログラムは単に映画を見るためのプラットフォームを提供するのみならず、1回目の配信時に視聴者によるリアルタイムにチャットも可能とする。

シネマトゥデイが厳選した名作映画は毎週金曜日の深夜(23:00前後)から無料で配信される。

※コンドル作戦についてはこちらも参照のこと。

 

作品情報:

名前:  Saludos Amigos
監督:  Norman Ferguson, Wilfred Jackson, Jack Kinney, Hamilton Luske, Bill Roberts
脚本:     Homer Brightman, William Cottrell, Richard Huemer, Joe Grant, Harold Reeves, Ted Sears, Webb Smith, Roy Williams, Ralph Wright
制作国: United States
製作会社:Walt Disney
時間:   42minutes
ジャンル: Animation
 ※日本語翻訳あり

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