メキシコ:クアール語話者は世界で2名だけ

スペインなどの西洋諸国による侵略と植民地支配は、アメリカ大陸やカリブ諸国の先住文化を壊滅させた。コンキスタドール(征服者)たちは自らの価値観を押し付け、現在に至るまで続く白人優位の社会構造を作り上げ、メスティーソ、インディオ、黒人といった階層が形成された。先住民文化の消失は、西洋からの影響だけでなく、近代化の波に組み込まれ、生活様式が大きく変わったことも大きな要因であろう。メキシコの公式発表によれば、すでに消滅した言語の中にクアール(Ku’ahl)語が含まれている。

クアールという先住民族の言語は、パ・イパイ(Pa Ipai)、クアパ(Kuapá)、クミアイ(Kumiay)、キリワ(Kiliwa)とともにコチミ・ユマナ(Cochimí-Yumana)語族に属している。この語族は、アメリカ南西部とメキシコ北部のバハ・カリフォルニア(Baja California)州に分布し、話者数は約1,171人とされている。この数はメキシコの他の語族と比べて少ない。これら5つの民族は、かつての先住民族開発委員会(現在の国立先住民族研究所)が絶滅を加速させている14の民族リストに含まれており、ユネスコもこれらの言語が絶滅の危機にあると認識している。

ユマン語は8000年以上の歴史を持つ言語であるのに対し、スペイン語の歴史は約1000年ほどに過ぎない。また、彼らの祖先はバハ・カリフォルニア各地に大陸最古とされる洞窟画を残し、その保存にも努めている。このように、ユマン族は非常に重要な役割を担う民族でもある。

クアール語はパ・イパイ語から派生したと考えられている。パ・イパイ族の人口は約200人とされるが、クアール語の話者はわずか2名しかいない。つまり、クアール語を話す最後の2人が亡くなれば、この言語的遺産は永遠に失われてしまうことになる。

クアール語を話す最後の2人は、自分たちの言葉を守るために博物館を開設した。美術館の運営費をまかなうため、原住民の一人は自ら作った陶器を販売している。ダリアが作るこの器は、新郎新婦の習慣に使われ、結婚生活の幸福を象徴するものだ。小さな「クアール博物館(Museo Ku’ahl)」は、バハ・カリフォルニア州エンセナダ(Ensenada)市のミシオン・デ・サンタ・カタリーナ(Misión de Santa Catarina)コミュニティにある。エンセナダはサンディエゴ(San Diego)から車で約3時間、東へ約50マイルの場所に位置している。

叔母のテレサ(Teresa)と姪のダリア・アルメンダ(Daría Armenda)がクアール語を話す最後の2人である。彼女たちはクアール語を忘れ去られることを拒み、言語の保存に力を注いでいる。言語だけでなく、習慣や文化の歴史的記録も残すことを目的に、この美術館を設立した。展示品の中には、ダリアが自ら収集した矢じりなども含まれている。

こんな物語がある:

昔々、人々は洞窟に住んでいました。

山で眠り、行き来して、すべてのものは彼らのものでした。土地は彼らのものでした。

長い年月が過ぎました。
彼らがそこにいた頃から。
私たちはほんのわずかしか残っていませんが、まだここにいます。
そして話し続けます。
私たちは心を込めて、クアール語を決して忘れません。

ÑechYeych Ñech  Kua’hl
Kur ñuyuy Tipai wuajal ñuay.
Marrtuaiy chimach, na niyiu chaniw
Marrta chamil. ñmatch
Marrtatuam kualeuli. Ajkai
skiukaniwa
ñechi inlichli nip-am ñuay koatlal. Yus piñuayuklauay
Ñechi karkuar nikuchka
Ñechi yeeyum guakum karkuar mayumli trrumak ajka

パ・イパイ語やクアール語は、家庭や公共の場でほとんど使われていない。そのため、これらの言語が失われないように、保護と普及が必要である。オーディオやビデオのコンテンツを制作し、親から子へと伝えていく取り組みが求められている。少しずつではあるが、YouTubeでも関連コンテンツが増えてきている。

メキシコでは多くの言語が消滅してきた。それは、話者たちが自分たちの言語の代わりにスペイン語を使うようになったことが大きな要因である。消滅した言語の中には、ほとんど記録が残っておらず、復元が不可能なものもある。クアール語もまた、完全に消滅する可能性が高いと言われている。そこで、2008年にカリフォルニア州のサンタバーバラ大学でクアール語の文法研究が始まり、言語消滅を防ぐための取り組みがスタートした。この研究では、発音や文法の詳細が調査されている。

バハ・カリフォルニアに住む先住民たちは、メキシコの公式な歴史から意図的に抹消されてきた。彼らは民族として認識されていないだけでなく、その土地が資源採掘プロジェクトによって脅かされるという共通の問題に直面している。カルロス・スリム(Carlos Slim)、ゲルマン・ラレア(Germán Larrea)、リカルド・サリナス・プリエゴ(Ricardo Salinas Pliego)、アルベルト・バイエール(Alberto Baillères)といったこの国の大富豪たちが、この半島全域で鉱山やエネルギーの権益を持っているのは決して偶然ではない。失われた遺物から教訓を学び、同じ過ちが繰り返されないように、そして彼らが今抱えている問題を共有していく必要がある。

パ・イパイのテレサ・カストロの物語は以下から。

#先住民言語

参考資料:

1. Ku’ahl, la lengua indígena mexicana que sólo hablan dos personas
2. Aunque para el Gobierno su lengua está extinta, las dos últimas hablantes de Ku’ahl luchan contra el olvido con su propio museo
3. Una historia inesperada: el museo Ku’ahl
4. Difundirá el Cecut charla sobre la visión del cosmos de dos pueblos originarios de BC
5. Atlas sociolingüístico de pueblos indígenas en América Latina
6. La harina en el cielo. Representaciones, prácticas y saberes astronómicos de las familias pa ipai y koal del municipio de Ensenada, Baja California.
7. Ku’ahl, la lengua indígena con mayor riesgo de extinción
8. Pie de Página cosecha dos Premios Nacionales de Periodismo 2019
9. «Aquí estamos»: yumanos
10. Misiones de las Californias XLV: Misión de Santa Catalina Virgen y Mártir

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